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59章

元魔王様とスライムテイム 6

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 トゥーリが無事にシロルのテイムをする事が出来てラブリートもお目当てのスライムの情報を入手出来た。
渓谷を少し進んだ先にシロルとは対照的な色の黒いスライムがいるらしい。
そのスライムが闇魔法か呪詛魔法に適性があると言う。

「ラブちゃんはどっちの魔法だと嬉しいんだい?」

「うーん、特にどっちとかは無いわね。どちらでも私には無い力だから嬉しいわよ。」

 魔法の適性が光魔法しかないラブリートにとってはどちらも有り難い力だ。

「闇魔法はデバフ、呪詛魔法は呪いと役割りが似ている様で違うからな。」

「どう違うんだい?」

「闇魔法なら殺傷能力よりも弱体化や自分以外への干渉に重き置いた魔法となる。相手の腕力や速度を弱めたり、攻撃や行動に干渉して主導権を奪ったりな。」

 当然闇魔法の中にも攻撃系統の魔法は存在するが比率としてはそう言った魔法の方が多い。
ジルが闇魔法でよく使っているフォースディクラインも相手を弱体化させる魔法である。

「そして呪詛魔法であれば闇魔法よりも殺傷能力の高い魔法が多くなります。解呪が遅れれば命に関わる魔法も多いですね。」

 エトワールの妹のステファニア王女やエルフの里長であるエルティアもジルの万能薬が無ければ命を落としていた。
それだけ呪詛魔法による呪いは殺傷能力に長けている。

「だから敵を弱体化してくれても呪いを与えてくれても、私としては戦いやすくなる事に変わりないから、特にどっちが良いとかの拘りは無いのよね。」

「成る程ね。」

 強敵と戦う際に相手の力量を多少下げてくれるだけでラブリートにとっては随分と戦うのが楽になる。
サポートとなるスライムに求めるのはそれくらいだ。

「そろそろ教えてもらった場所だと思うが。」

「なんか大きいスライムがいない?」

 現場に到着するが黒いスライムでは無く巨大なスライムが蠢いているのが見える。
明らかに目的のスライムとは別だ。

「あれはプレデタースライムです!かなり危険な魔物ですよ!」

 キュールネが巨大なスライムを見て驚きながら言う。
スライム種の中でもかなりの上位種らしい。

「どう言うスライムなんだ?」

「周りにある物をとにかく何でも食べます。トゥーリ様、絶対に近付いてはいけませんよ!」

 トゥーリの前に出て庇う様に後ろに隠す。

「あのスライムの体内にいる色の付いた部分は、もしかして捕食されたスライムか?」

 プレデタースライムの体内に幾つか色が付いている。
段々と小さくなっていくので消化されているのだろう。

「プレデタースライムは周りにいる魔物もどんどん捕食します。それは同種の魔物であっても変わりません。」

「って事はあの黒いのはラブリートのお目当てのスライムか。」

「私のスライムが食べられたって事?許せないわね。」

 まだテイムしていないのだが、目的のスライムを奪われた事にラブリートが怒っている。

「あれをテイムするって選択肢はないのかい?」

「やめておいた方がいいでしょう。仮にテイム出来ても簡単に連れ歩けませんよ。スライム種の中でもかなり危険なので。」

 トゥーリの意見をキュールネが否定する。
従魔にしても連れ歩けないのであればテイムする意味が無い。

「それじゃあ倒すしかないわね。」

「ラブちゃんが倒すのかい?説明を聞いた限りだと近接は危険じゃないかい?」

 拳をバキボキと鳴らしながら前に出るラブリートにトゥーリが言う。
直接触れるのはいかにも危なそうな相手だ。

「消化には多少時間が掛かりますが、それでもプレデタースライムに直接触れるのは危険な行為です。」

「心配いらないわよ。それじゃあちょっといってくるわね。」

 ラブリートが軽い足取りでプレデタースライムへと近付いていく。

「大丈夫かな?」

「ランク的にはラブリート様の方が上ですが厄介なスライムですからね。」

 二人が心配する様にその背中を見守る。

「お前達、ラブリートをなめ過ぎだ。Sランクの冒険者であり国家戦力とまで呼ばれているのだぞ?スライム如きに遅れを取っている者にそんな称号は与えられん。」

 ジルが二人に呆れた様な視線を向けながら言う。
転生前とでは話しにならないが、今の自分に近しい実力を持つラブリートがスライム一匹に苦戦するのは想像も付かない。

「そこの大きいスライム、よくも私がテイム予定の子まで食べてくれたわね。お仕置きしてあげるわ。」

 ラブリートの手に魔力とは違う力が集約されていく。
二つ名の由来ともなった闘気である。
可視化出来る程の凄まじい力にトゥーリとキュールネが驚いている。

「ラブリーパンチ!」

 闘気を纏った拳がプレデタースライムの身体に突き刺さる。
それと同時に巨大な身体を持つプレデタースライムが一瞬で消し飛び、大きな魔石が地面に落ちた。
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