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54章
元魔王様と聖女の魔法訓練 4
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ジル達はグランキエーゼを馬車に乗せてトゥーリの屋敷まで戻った。
「も、もう無理。」
そう呟くグランキエーゼは少しだけぽっこりと膨らんだお腹を押さえて苦しそうにしている。
心なしか教会を出た時よりも表情が悪い。
「戯言を言えるうちはまだまだいける。少しはホッコを見習え。」
「全部の上級神聖魔法を習得出来たの!」
「良くやったぞホッコ。」
両手を上げて喜んでいるホッコをジルが褒める。
屋敷に戻ってから何をしているのかと言うと、グランキエーゼの神聖魔法の訓練である。
ついでにホッコも神聖魔法の適性があるので、使える魔法を増やす為に一緒に訓練中だ。
「短期間で上級を習得出来るって凄まじい才能と適性だわ。と言うかこんな無理矢理なやり方って…うっぷ。」
「文句を言っている暇があるのなら魔法を詠唱しろ。」
そう言ってジルがグランキエーゼの横に魔力回復のポーションを置く。
屋敷に戻ってからやっている事と言うと、ひたすら超級神聖魔法を唱えて感覚を掴む訓練をしているだけだ。
そして魔力が無くなる度にポーションで回復させて続行させている。
グランキエーゼが苦しそうにお腹や口を押さえているのはポーションの飲み過ぎでお腹がタプタプになっているからである。
魔法は発動に失敗しても魔力を消費する。
だが習得するにはとにかく魔法を唱えてイメージを固めていき、感覚を掴むしかない。
なのでポーション頼りで魔力消費を気にせず、永遠に魔法を唱えると言う訓練をしている。
「そもそも何故あの子は魔力切れになっていないのかしら?」
視線が向けられる先には嬉しそうに上級神聖魔法を使用しているホッコがいる。
既に何度もポーションを飲んでいるグランキエーゼだが、ホッコは一度もポーションを飲んでいなかった。
「ホッコは魔力量が多いからな。それでもそろそろ限界だと思うぞ。」
「主様、魔力が無くなっちゃったの。」
タイミング良くホッコがそう言って近付いてきた。
さすがに魔力量の多いホッコでも、あれだけ魔法を使えば魔力が無くなる。
「回復の為のポーションだ。飲むと暫く味覚が死ぬから、身体に振り掛けるといい。」
「了解なの。」
ジルから受け取った容器の中身をパシャパシャ腕に振り掛けていく。
魔力回復の効率は半減するが、ニ本使えば済む話しだ。
「って何であの子は飲まなくていいのに、私は飲まないといけないの!?」
ホッコがポーションを振り掛ける姿を見てグランキエーゼが抗議してくる。
自分はジルに渡されたポーションを飲む事を強制されていたからだ。
「このポーションは我の私物だ。無償で提供してやっているのに回復効率の悪い事をさせる訳が無いだろう?使用した分を買い取りにするのなら別にいいけどな。」
「…飲めばいいんでしょ!」
周りを見ると空になった値段の張るポーションの容器が地面に散乱している。
これを全て買い取るとなると手痛い出費になるので、新しく受け取ったポーションもグランキエーゼは一気に飲み干した。
「うえっ、まっず。」
整った顔を歪めて舌を出して言う。
せっかくの美人が台無しであるが、それだけポーションは酷い味なのだ。
「よくそんな物が飲めるな。」
「貴方が飲めって言って…うっぷ。」
文句を言い返そうにも大きな声を出すと口からポーションが出そうだったので睨むにとどめておく。
「さあ時間は有限だ。あの司祭に頼らなくてもいい様に訓練の続きだ。」
「こうなったら絶対習得してやるわ!」
これだけ辛い思いをしているのだ。
必ず超級神聖魔法を習得してやると意気込んで再び魔法の詠唱をしていく。
「ホッコも頑張るの!」
「いや、上級神聖魔法まで使える様になった事だしホッコは別の事にチャレンジだ。」
「別の事なの?」
グランキエーゼの姿を見て自分も超級神聖魔法の習得を頑張ろうとしていたホッコだったが、ジルとしては別の事をしてもらいたかった。
「今でもホッコの魔力量はそれなりに多い方だが、ディバースフォクスと言う魔物として言えば、まだまだ成長の余地があるのだ。なので魔力量を増やす特訓をする。」
ディバースフォクスは魔法主体の魔物だ。
故に前世のジルには遠く及ばないが魔力量も相当増やす事が出来る。
他の魔物と比較してもトップクラスに高い魔力量を持つので、長所を伸ばさないのは勿体無い。
「了解なの。それで主様、何をすればいいの?」
「とにかく魔力を使いまくれ。魔力は使えば使う程、僅かにだが魔力量が増えていくからな。」
トレンフルにいた頃にルルネットにも詠唱破棄の習得ついでに魔法を多用させて毎日魔力切れギリギリまで追い込んでいたものだ。
そうした甲斐あって毎日魔力量が少量ずつ増えていっていた。
「じゃあ沢山使うの!」
「アイシクルエンチャントが慣れているし周りの被害も無く魔力消費量も多くて効率が良いだろう。武器を大量に出してやるから順番に持って使うを繰り返すといい。」
無限倉庫のスキルを使用して使わない剣をバラバラと出す。
順番に氷結魔法で強化するのを繰り返せば魔力をガンガン使用出来る。
「分かったの!アイシクルエンチャントなの!」
グランキエーゼが苦しそうにしながら超級神聖魔法の練習をしており、ホッコが魔力量増加の為に上級氷結魔法を連続使用していく。
実はホッコに関しては魔力量増加以外にもとある狙いがあった。
出会ってから暫く経つ為、そろそろ頃合いだとジルは思っていた。
「も、もう無理。」
そう呟くグランキエーゼは少しだけぽっこりと膨らんだお腹を押さえて苦しそうにしている。
心なしか教会を出た時よりも表情が悪い。
「戯言を言えるうちはまだまだいける。少しはホッコを見習え。」
「全部の上級神聖魔法を習得出来たの!」
「良くやったぞホッコ。」
両手を上げて喜んでいるホッコをジルが褒める。
屋敷に戻ってから何をしているのかと言うと、グランキエーゼの神聖魔法の訓練である。
ついでにホッコも神聖魔法の適性があるので、使える魔法を増やす為に一緒に訓練中だ。
「短期間で上級を習得出来るって凄まじい才能と適性だわ。と言うかこんな無理矢理なやり方って…うっぷ。」
「文句を言っている暇があるのなら魔法を詠唱しろ。」
そう言ってジルがグランキエーゼの横に魔力回復のポーションを置く。
屋敷に戻ってからやっている事と言うと、ひたすら超級神聖魔法を唱えて感覚を掴む訓練をしているだけだ。
そして魔力が無くなる度にポーションで回復させて続行させている。
グランキエーゼが苦しそうにお腹や口を押さえているのはポーションの飲み過ぎでお腹がタプタプになっているからである。
魔法は発動に失敗しても魔力を消費する。
だが習得するにはとにかく魔法を唱えてイメージを固めていき、感覚を掴むしかない。
なのでポーション頼りで魔力消費を気にせず、永遠に魔法を唱えると言う訓練をしている。
「そもそも何故あの子は魔力切れになっていないのかしら?」
視線が向けられる先には嬉しそうに上級神聖魔法を使用しているホッコがいる。
既に何度もポーションを飲んでいるグランキエーゼだが、ホッコは一度もポーションを飲んでいなかった。
「ホッコは魔力量が多いからな。それでもそろそろ限界だと思うぞ。」
「主様、魔力が無くなっちゃったの。」
タイミング良くホッコがそう言って近付いてきた。
さすがに魔力量の多いホッコでも、あれだけ魔法を使えば魔力が無くなる。
「回復の為のポーションだ。飲むと暫く味覚が死ぬから、身体に振り掛けるといい。」
「了解なの。」
ジルから受け取った容器の中身をパシャパシャ腕に振り掛けていく。
魔力回復の効率は半減するが、ニ本使えば済む話しだ。
「って何であの子は飲まなくていいのに、私は飲まないといけないの!?」
ホッコがポーションを振り掛ける姿を見てグランキエーゼが抗議してくる。
自分はジルに渡されたポーションを飲む事を強制されていたからだ。
「このポーションは我の私物だ。無償で提供してやっているのに回復効率の悪い事をさせる訳が無いだろう?使用した分を買い取りにするのなら別にいいけどな。」
「…飲めばいいんでしょ!」
周りを見ると空になった値段の張るポーションの容器が地面に散乱している。
これを全て買い取るとなると手痛い出費になるので、新しく受け取ったポーションもグランキエーゼは一気に飲み干した。
「うえっ、まっず。」
整った顔を歪めて舌を出して言う。
せっかくの美人が台無しであるが、それだけポーションは酷い味なのだ。
「よくそんな物が飲めるな。」
「貴方が飲めって言って…うっぷ。」
文句を言い返そうにも大きな声を出すと口からポーションが出そうだったので睨むにとどめておく。
「さあ時間は有限だ。あの司祭に頼らなくてもいい様に訓練の続きだ。」
「こうなったら絶対習得してやるわ!」
これだけ辛い思いをしているのだ。
必ず超級神聖魔法を習得してやると意気込んで再び魔法の詠唱をしていく。
「ホッコも頑張るの!」
「いや、上級神聖魔法まで使える様になった事だしホッコは別の事にチャレンジだ。」
「別の事なの?」
グランキエーゼの姿を見て自分も超級神聖魔法の習得を頑張ろうとしていたホッコだったが、ジルとしては別の事をしてもらいたかった。
「今でもホッコの魔力量はそれなりに多い方だが、ディバースフォクスと言う魔物として言えば、まだまだ成長の余地があるのだ。なので魔力量を増やす特訓をする。」
ディバースフォクスは魔法主体の魔物だ。
故に前世のジルには遠く及ばないが魔力量も相当増やす事が出来る。
他の魔物と比較してもトップクラスに高い魔力量を持つので、長所を伸ばさないのは勿体無い。
「了解なの。それで主様、何をすればいいの?」
「とにかく魔力を使いまくれ。魔力は使えば使う程、僅かにだが魔力量が増えていくからな。」
トレンフルにいた頃にルルネットにも詠唱破棄の習得ついでに魔法を多用させて毎日魔力切れギリギリまで追い込んでいたものだ。
そうした甲斐あって毎日魔力量が少量ずつ増えていっていた。
「じゃあ沢山使うの!」
「アイシクルエンチャントが慣れているし周りの被害も無く魔力消費量も多くて効率が良いだろう。武器を大量に出してやるから順番に持って使うを繰り返すといい。」
無限倉庫のスキルを使用して使わない剣をバラバラと出す。
順番に氷結魔法で強化するのを繰り返せば魔力をガンガン使用出来る。
「分かったの!アイシクルエンチャントなの!」
グランキエーゼが苦しそうにしながら超級神聖魔法の練習をしており、ホッコが魔力量増加の為に上級氷結魔法を連続使用していく。
実はホッコに関しては魔力量増加以外にもとある狙いがあった。
出会ってから暫く経つ為、そろそろ頃合いだとジルは思っていた。
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