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52章

元魔王様と王城襲撃 9

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 その後も襲撃の賊についてや黒フード達についての意見交換が行われていった。

「この辺りにしておくか。有意義な話し合いだった。」

 国王の言葉で長時間の話し合いが終了となった。
遅いので城に泊まっていかないかと提案されたが、トゥーリは畏れ多いと丁重に断っていた。
ホッコも一日会えないとなると悲しむと思われるので、ジルとしても帰る事には賛成だ。

「ジル、悪かったな。急な頼みや話しで長い時間拘束してしまって。」

「気にしなくていいぞ。報酬はたっぷり貰ったからな。」

 いつの間にかエトワールが手配してくれていた様で、先程執事が小袋の乗った台車を運んできた。
それを受け取って中を見ると大金貨が10枚近く入っていて思わず顔がにやけてしまった。

 短時間での依頼であったが最愛の妹を助けてもらったエトワールとしては、それくらいの額を出しても当然だと言う事なのだろう。

「ジルちゃん、行くわよ?」

「先に行っててくれ。我は少し話しがある。」

「まだ何かあるのかい?」

 ラブリートとトゥーリが首を傾げている。

「まあ、男同士で少しな。」

「あらあら、それじゃあ私達は退散しましょうか。ステファニア王女も行くわよ。」

「えええ!?私は少しだけジル様とお話しを!」

「何か分からないけどごゆっくり~。外で迎えを呼んで待ってるからね~。」

 ラブリートの大きな手で背中を押されてトゥーリとステファニアは退場させられた。
ジルの言葉を汲み取ってパキファニアとリルファニアも今回の礼を述べて出ていき、付き人達も皆部屋から退散してくれた。

「男同士と言う事はわしはいても構わないのか?」

 ジルとエトワールの他にも国王がまだ残っていた。

「そうだな、別に問題は無いぞ。親として良い気分にはなれない話しだとは思うけどな。」

「ジル、一体何の話しをするつもりなんだ?」

 不穏な言葉を聞いてエトワールが身構える。

「ステファニア王女の事だ。」

「っ!?娘はやらんぞ!」

「ああ、いくらジルでもそれだけは駄目だ。まだ嫁ぐには早過ぎる!」

 何を勘違いしたのか二人が声を荒げて拒絶する意思を示す。
末の子と言う事で随分と家族から愛されている様子だ。

「はぁ、親バカに兄バカめ。勘違いするな、そう言う話しでは無い。」

 ジルは呆れた様な溜め息を吐いて言う。
面倒事を嫌うジルが自分から王族に求婚するなんてあり得ない事だ。

「ではどう言う話しなのだ?」

「呪いの件だ。確認したい事がある。」

 その言葉で二人が息を呑むのが分かる。

「ステフの呪いの件か。今思い出しても忌々しい。」

「ですがジルのおかげでステフは助かりました。父上の気持ちも分かりますが済んだ事です。それで呪いの何を知りたいんだ?アクセサリーなら一片たりともこの世には存在していないぞ。」

 二人共怒りの感情を隠しもしない。
それだけステファニアの命を脅かしたあの一件を憎んでいるのだ。

「別に呪いのアクセサリーや呪いの効果に興味は無い。欲しい情報は出所だ。」

「何故それを知りたがるんだ?」

 ジルは妹の命を救ってくれた恩人ではあるが面倒事を嫌う性格と聞く。
わざわざ王族の敵討ちなんてやりたがるとは思えない。

「知人のエルフが同じ様な状況に陥ってな。同一犯かと思って調べたいのだ。」

「その者の解呪は?」

「同じ様な呪いのアクセサリーではあったが王女程重い呪いでは無い。光魔法で治療済みだ。」

 エルフの里に出向いた事や万能薬を使用した事については伏せておく。
この王族達は信用出来るが、それでもエルフの里の場所を人族に教える訳にはいかない。

 そして万能薬で解呪した事も教える訳にはいかない。
あれはルルネットとの話し合いでトレンフルのダンジョンにある宝箱からドロップした事になっている。
もう一つドロップした事にも出来るが、高価な品故に怪しまれてしまうかもしれない。

「成る程な。アクセサリーについてだがステフの話しでは貴族からの贈り物の中に入っていたと言っていたな。」

「贈り主は?」

 貴族から何か贈られるなら送り主の家名や貴族印がある筈だ。
それを見れば贈り主が誰だか分かる。

「王国を支える公爵家の一つだ。しかしデレムと違って断じてその様な事には手を染めぬ家だ。本人達にも事情を伺ったが当主には自白剤でも魅了魔法でも何でも使ってほしいとまで言われた。」

「ふむ。」

 実際にそれらを使えば確実に何かしらの情報は引き出せる。
それを分かった上で提案してくると言う事は、利用されただけで本当に何も知らない可能性が高い。

「ジルの方は出所を掴んでいないのか?」

「獣人族からの贈り物と言う事だが送り主については信用出来る者と言う点で同じだな。だからこの際送り主は関係無いのだろう。」

 エルティアも長く取り引きを続ける獣人達がそんな事をする筈が無いと言っていた。
なのでこちらも利用された可能性が高い。

 そして王族の命を危険に晒すと言う面では先程の襲撃も呪いと関係性があるのではないかと考えてしまう。
そうなると三つの件を起こした者達を裏で操っていそうな団体が思い浮かぶ。

「と言うと?」

「直接手を下さず裏で企んでいる奴らがいると言う事だ。こんな大立ち回りは中々個人では出来無い。そしてそんな者達について先程我らは話している。」

「…影か。」

 国王の言葉が静かに部屋の中に響いた。
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