407 / 654
48章
元魔王様と強制睡眠 2
しおりを挟む
今日は王都に出発する為に領主の屋敷に集合する様に言われた日だ。
朝早くから起きたジルは瞼を擦りながら向かっている。
「こんなに早くなくてもいいと思うんだがな。そう思わないか?」
「クォン。」
ジルが尋ねると肩に乗るホッコが頷いている。
一昨日仲間達に王都に行く事を話したのだが、案の定シキは浮島での研究や実験に忙しくて残りたいと言ってきた。
なのでシキの従魔であるライムや護衛のナキナ、その従魔である影丸も残る事になった。
そんな中でホッコだけは共に行きたいと言ってきた。
従魔である自分は主であるジルと共に行動したいと王都行きに同行する事になったのだ。
「お、もう揃っているみたいだな。」
遠くに見えてきた領主の屋敷の前にトゥーリやラブリートがいるのを確認する。
「遅いよジル君。」
「ジルちゃん、おはよう。」
「これでも早起きしてきたんだぞ?そもそもこんなに早く出発する必要があるのか?」
ジルが欠伸をしながらトゥーリに尋ねる。
まだ日が登って間もない時間帯であり街も随分と静かだ。
「天候の良い日中が一番距離が稼げるんだから早朝に出発するのは当然だよ。雨が降って地面がぬかるんだり、視界の悪い夜は危険だからあまり進みたくないしね。」
状況を見て進行を中止する日もある。
トゥーリとしては安全第一で向かいたい。
「冒険者なら依頼でもそう言った考えの元で動くから野宿とかも多いんだけど、ジルちゃんには当て嵌まらないみたいね。」
「夜に野外にいる事が少ないからな。依頼は日中で済ませて街中にいる事が殆どだ。」
依頼を受けても必ず門が閉まる前には帰る様にしている。
美味しい食事を満足するまで食べてベッドの上で安眠する為には野宿なんてしている暇は無いのだ。
「さすがジルちゃんね。でも誰もがジルちゃんみたいに素早く依頼を終わらせられる訳じゃ無いのよ?」
イレギュラーな事態や難易度の高い依頼になる程日帰りなんて出来無くなる。
なので依頼を受けた冒険者は野宿前提で動く者が大半だろう。
「だがラブリートなら出来るだろう?」
「当たり前じゃない。お肌に悪いから野宿なんてしたくないわよ。毎日しっかりと屋根のある場所で眠りたいもの。」
ラブリートも夜は街にしっかりと帰ってきている様だ。
理由は違えどそうする事の出来る実力が備わっていると言う事だ。
「はぁ~、非常識な護衛ばかりだと苦労しそうだね。お願いだから、雇い主の言う事は聞いてよ?」
どちらも戦力的に見れば申し分無いのだが、普通の冒険者達とは明らかに違う。
自分に扱えるのかとトゥーリは出発前から不安であった。
「どうかしら、状況次第ね。」
「我は気に食わないと思えば無視するぞ。」
「はぁ~、本当に先行きが不安だよ。」
二人の返答に再度大きな溜め息が出る。
しかしこの二人が揃っている時点で安全は確約された様なものなので、多少の事には目を瞑るべきだろう。
「一先ずメンバーを紹介しようかな。ジル君とラブちゃんについては伝えてるから私が連れていくメンバーをね。」
トゥーリがそう言うと後ろで控えていた二人が前に出て軽く会釈をしてくる。
鎧を身に付けた美人な女性騎士と、メイド服を着た可愛らしい女性メイドだ。
「この二人は今回の旅で御者と世話役として付いてきてくれる二人だよ。」
「セダン伯爵家騎士団所属、騎士のシズルです。今回は御者を務めさせて頂きます。お二方、宜しくお願い致します。」
騎士礼をしながらシズルが自己紹介する。
言葉遣いは固いが優秀そうな印象は伝わってくる。
「トゥーリ様のメイドを務めているキュールネです。皆さんのお世話をさせて頂く予定です。宜しくお願いしますね。」
こちらは接客に慣れていると言った印象だ。
落ち着いた雰囲気が伝わってくる。
「ああ、宜しくな。」
「随分と丁寧な騎士とメイドね。」
ラブリートが二人を興味深そうに見ている。
「君達は冒険者で護衛だけどこちら側から粗相があって今後の関係性の悪化なんてのは御免だからね。教育が行き届いている貴族の子を選抜しておいたのさ。」
トゥーリにとっては王子の生誕祭も重要な事だが、それに続いて二人との関係も重要である。
道中で二人との間に問題が起きるなんて事は絶対に無くしたい。
なので少しでも可能性を排除する為に相手に配慮出来る人選をしてきた。
貴族や冒険者と言った身分に縛られず、柔軟な対応が出来る者こそ今回の同行者に相応しいとトゥーリは思った。
「我々は確かに貴族ですが、お二方が気にする必要はありません。我々はどちらも男爵家の出であり、家督は継げませんから。」
「なのでどうか気軽に接して下さい。」
家督を継げない貴族出身の者は家の為に政略結婚する以外にも、上位の貴族の元で騎士や側仕えとなる者も多い。
仕える相手次第では元の暮らしよりも良い環境になる可能性もある。
トゥーリの下なら二人も良い暮らしが出来ているだろう。
「さて、長話ししてたら早起きの意味が無い。早速出発しよう。」
立ち話しを切り上げてトゥーリが合図すると四人が豪華な馬車に乗り込み、シズルが御者台に乗って馬を走らせて出発した。
朝早くから起きたジルは瞼を擦りながら向かっている。
「こんなに早くなくてもいいと思うんだがな。そう思わないか?」
「クォン。」
ジルが尋ねると肩に乗るホッコが頷いている。
一昨日仲間達に王都に行く事を話したのだが、案の定シキは浮島での研究や実験に忙しくて残りたいと言ってきた。
なのでシキの従魔であるライムや護衛のナキナ、その従魔である影丸も残る事になった。
そんな中でホッコだけは共に行きたいと言ってきた。
従魔である自分は主であるジルと共に行動したいと王都行きに同行する事になったのだ。
「お、もう揃っているみたいだな。」
遠くに見えてきた領主の屋敷の前にトゥーリやラブリートがいるのを確認する。
「遅いよジル君。」
「ジルちゃん、おはよう。」
「これでも早起きしてきたんだぞ?そもそもこんなに早く出発する必要があるのか?」
ジルが欠伸をしながらトゥーリに尋ねる。
まだ日が登って間もない時間帯であり街も随分と静かだ。
「天候の良い日中が一番距離が稼げるんだから早朝に出発するのは当然だよ。雨が降って地面がぬかるんだり、視界の悪い夜は危険だからあまり進みたくないしね。」
状況を見て進行を中止する日もある。
トゥーリとしては安全第一で向かいたい。
「冒険者なら依頼でもそう言った考えの元で動くから野宿とかも多いんだけど、ジルちゃんには当て嵌まらないみたいね。」
「夜に野外にいる事が少ないからな。依頼は日中で済ませて街中にいる事が殆どだ。」
依頼を受けても必ず門が閉まる前には帰る様にしている。
美味しい食事を満足するまで食べてベッドの上で安眠する為には野宿なんてしている暇は無いのだ。
「さすがジルちゃんね。でも誰もがジルちゃんみたいに素早く依頼を終わらせられる訳じゃ無いのよ?」
イレギュラーな事態や難易度の高い依頼になる程日帰りなんて出来無くなる。
なので依頼を受けた冒険者は野宿前提で動く者が大半だろう。
「だがラブリートなら出来るだろう?」
「当たり前じゃない。お肌に悪いから野宿なんてしたくないわよ。毎日しっかりと屋根のある場所で眠りたいもの。」
ラブリートも夜は街にしっかりと帰ってきている様だ。
理由は違えどそうする事の出来る実力が備わっていると言う事だ。
「はぁ~、非常識な護衛ばかりだと苦労しそうだね。お願いだから、雇い主の言う事は聞いてよ?」
どちらも戦力的に見れば申し分無いのだが、普通の冒険者達とは明らかに違う。
自分に扱えるのかとトゥーリは出発前から不安であった。
「どうかしら、状況次第ね。」
「我は気に食わないと思えば無視するぞ。」
「はぁ~、本当に先行きが不安だよ。」
二人の返答に再度大きな溜め息が出る。
しかしこの二人が揃っている時点で安全は確約された様なものなので、多少の事には目を瞑るべきだろう。
「一先ずメンバーを紹介しようかな。ジル君とラブちゃんについては伝えてるから私が連れていくメンバーをね。」
トゥーリがそう言うと後ろで控えていた二人が前に出て軽く会釈をしてくる。
鎧を身に付けた美人な女性騎士と、メイド服を着た可愛らしい女性メイドだ。
「この二人は今回の旅で御者と世話役として付いてきてくれる二人だよ。」
「セダン伯爵家騎士団所属、騎士のシズルです。今回は御者を務めさせて頂きます。お二方、宜しくお願い致します。」
騎士礼をしながらシズルが自己紹介する。
言葉遣いは固いが優秀そうな印象は伝わってくる。
「トゥーリ様のメイドを務めているキュールネです。皆さんのお世話をさせて頂く予定です。宜しくお願いしますね。」
こちらは接客に慣れていると言った印象だ。
落ち着いた雰囲気が伝わってくる。
「ああ、宜しくな。」
「随分と丁寧な騎士とメイドね。」
ラブリートが二人を興味深そうに見ている。
「君達は冒険者で護衛だけどこちら側から粗相があって今後の関係性の悪化なんてのは御免だからね。教育が行き届いている貴族の子を選抜しておいたのさ。」
トゥーリにとっては王子の生誕祭も重要な事だが、それに続いて二人との関係も重要である。
道中で二人との間に問題が起きるなんて事は絶対に無くしたい。
なので少しでも可能性を排除する為に相手に配慮出来る人選をしてきた。
貴族や冒険者と言った身分に縛られず、柔軟な対応が出来る者こそ今回の同行者に相応しいとトゥーリは思った。
「我々は確かに貴族ですが、お二方が気にする必要はありません。我々はどちらも男爵家の出であり、家督は継げませんから。」
「なのでどうか気軽に接して下さい。」
家督を継げない貴族出身の者は家の為に政略結婚する以外にも、上位の貴族の元で騎士や側仕えとなる者も多い。
仕える相手次第では元の暮らしよりも良い環境になる可能性もある。
トゥーリの下なら二人も良い暮らしが出来ているだろう。
「さて、長話ししてたら早起きの意味が無い。早速出発しよう。」
立ち話しを切り上げてトゥーリが合図すると四人が豪華な馬車に乗り込み、シズルが御者台に乗って馬を走らせて出発した。
4
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜
北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。
この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。
※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※
カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!!
*毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。*
※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※
表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる