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46章
元魔王様とエルフの里 2
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突然のエルミネルからの申し出に少し困惑するジル。
助力と言っているがそれはつまりエルフの里に赴いて共に魔物を倒してほしいと言う事だ。
「我に頼むと言う意味を理解しているのか?」
「してる。人族に里の情報が伝わる。でもジルは信用出来る人族。」
エルフが自分達の身を守る為に明かさなかった情報を開示すると言う事は種族全体を危険に晒すと言う事だ。
実は別の入り口を知っているジルだが、そんな事をエルミネルは知らないのでかなりの覚悟だろう。
「エルロッドはいいのか?」
「話しを聞く限り他に方法も無さそうじゃからのう。それに早くしなければどのみちエルフの里は壊滅する。」
魔物を倒さなければエルフ達は無事では済まない。
それならば強者の助力を得る為に多少のリスクは仕方無いと割り切っている様だ。
「それ程の被害と言う事か。」
「そう、一刻も早く解決したいけど里の意見は割れてる。人族に入り口を教える事に対して賛成と反対は半分ずつ。」
例え魔物の脅威から救われても人族に奴隷狩りをされて残りの人生を人族の言いなりとして生きていく可能性もある。
死ぬよりも悲惨な目に遭うかもしれないと考えると簡単に受け入れる事は出来無いだろう。
「ならば我が行ったら最悪殺されるのではないか?」
魔物を排除した後にエルフの里の入り口を知る者を抹消すればエルフ達の不安は解消出来る。
ジルの命を狙って行動する者が確実に出てきそうだ。
「ジルが殺されるところは想像出来んが、わしとエルミネルがそんな事はさせん。」
エルロッドの言葉にエルミネルがこくこくと頷いている。
「だが全員が肯定的では無いのだろう?」
「逆に言えば半分も肯定的なのじゃ。これはエルフの常識で考えればあり得ん事じゃな。」
人族がエルフ族に対してしてきた事を考えれば、肯定的な意見なんて一切出る筈は無い。
人族に頼んででも助けてもらいたいと思っているエルフが数多くいると言う事だ。
「分かった、お前達の頼みを聞いてやろう。」
「ジル、ありがとう。」
「すまんのう。」
二人は深々とジルに頭を下げる。
「向かうのは我だけでいいのか?」
「情報の漏洩は限り無く少なくしたい。ジルの仲間達を信用していない訳ではないのじゃが、これは許してくれんか?」
「別に構わん。」
ナキナ達がいれば戦力にはなるが、来てくれないと困る程では無いだろう。
自分とエルミネルがいれば大体の敵は事足りる筈だ。
「だがそうなるとエルミネルの戦力ダウンは煩わしいな。」
呪いによって魔力の回復が阻害されている。
膨大な魔力を主体として戦うエルミネルにとっては致命的な呪いだ。
「これでも肉壁くらいならなれる。私も向かう。」
置いていかれると思ったのかエルミネルがジルに言う。
同族が苦しんでいるのに自分だけ安全な場所で待機はしていられない。
「勘違いするな、お前には最前線で戦ってもらうつもりだ。」
そう言ってジルは無限倉庫から小瓶を取り出してエルミネルに渡す。
小瓶の中には一粒の丸薬が入っている。
「何これ?」
「そ、それは!?何故ジルが持っておるんじゃ。」
エルミネルは見覚えが無さそうだがエルロッドはそれを見て驚いている。
この丸薬が何か知っているのだろう。
これはトレンフルにいた時にダンジョンで出会ったエトに譲った万能薬である。
「細かい事は気にするな。エルミネル、それは万能薬と言って呪いくらいなら簡単に治してくれる。それを服用しろ。」
「分かった。」
エルミネルは言われるままに丸薬を飲み込む。
すると呪いを示す痣が見る見る消えていき、元の綺麗な肌へと戻った。
これでエルミネルの呪いは解呪され、魔力も徐々に回復するだろう。
「良かったのかジルよ、万能薬の様な貴重な薬を。」
その価値を知っているエルロッドだからこそ心配している。
気軽に手に入る物では無く、値段も簡単には付けられない世界最高峰の薬だ。
「貴重な薬だったの?私が稼いで返す。」
「気にするな、その分しっかり働いてもらうけどな。」
「分かった。」
エルミネルは気合いを入れる様に両手で握り拳を作っている。
だが気合いだけがあっても意味は無い。
「エルミネル、時間が無いらしいから飲むといい。」
ジルは無限倉庫から取り出したポーションを手渡す。
魔力を回復する効果のあるポーションだ。
呪いによって魔力が失われていたエルミネルが直ぐに魔力を回復するにはポーションが手っ取り早い。
「…飲みたくない。」
ポーションが不味い事はエルミネルも知っている。
魔力回復の手段として優秀なのは確かだが、不味いと分かっている物を進んで飲みたいとは思わない。
「同族のピンチなんだろう?」
「エルミネル、ギルドマスター権限で今直ぐに飲むのじゃ。」
二人にそう言われてエルミネルは渋々ポーションに口を付ける。
そして一気に傾けて中の液体を自分の口の中へと流し込んでいく。
「…吐きそう。」
ポーションを飲み干したエルミネルは、その不味さに綺麗な表情を歪ませていた。
助力と言っているがそれはつまりエルフの里に赴いて共に魔物を倒してほしいと言う事だ。
「我に頼むと言う意味を理解しているのか?」
「してる。人族に里の情報が伝わる。でもジルは信用出来る人族。」
エルフが自分達の身を守る為に明かさなかった情報を開示すると言う事は種族全体を危険に晒すと言う事だ。
実は別の入り口を知っているジルだが、そんな事をエルミネルは知らないのでかなりの覚悟だろう。
「エルロッドはいいのか?」
「話しを聞く限り他に方法も無さそうじゃからのう。それに早くしなければどのみちエルフの里は壊滅する。」
魔物を倒さなければエルフ達は無事では済まない。
それならば強者の助力を得る為に多少のリスクは仕方無いと割り切っている様だ。
「それ程の被害と言う事か。」
「そう、一刻も早く解決したいけど里の意見は割れてる。人族に入り口を教える事に対して賛成と反対は半分ずつ。」
例え魔物の脅威から救われても人族に奴隷狩りをされて残りの人生を人族の言いなりとして生きていく可能性もある。
死ぬよりも悲惨な目に遭うかもしれないと考えると簡単に受け入れる事は出来無いだろう。
「ならば我が行ったら最悪殺されるのではないか?」
魔物を排除した後にエルフの里の入り口を知る者を抹消すればエルフ達の不安は解消出来る。
ジルの命を狙って行動する者が確実に出てきそうだ。
「ジルが殺されるところは想像出来んが、わしとエルミネルがそんな事はさせん。」
エルロッドの言葉にエルミネルがこくこくと頷いている。
「だが全員が肯定的では無いのだろう?」
「逆に言えば半分も肯定的なのじゃ。これはエルフの常識で考えればあり得ん事じゃな。」
人族がエルフ族に対してしてきた事を考えれば、肯定的な意見なんて一切出る筈は無い。
人族に頼んででも助けてもらいたいと思っているエルフが数多くいると言う事だ。
「分かった、お前達の頼みを聞いてやろう。」
「ジル、ありがとう。」
「すまんのう。」
二人は深々とジルに頭を下げる。
「向かうのは我だけでいいのか?」
「情報の漏洩は限り無く少なくしたい。ジルの仲間達を信用していない訳ではないのじゃが、これは許してくれんか?」
「別に構わん。」
ナキナ達がいれば戦力にはなるが、来てくれないと困る程では無いだろう。
自分とエルミネルがいれば大体の敵は事足りる筈だ。
「だがそうなるとエルミネルの戦力ダウンは煩わしいな。」
呪いによって魔力の回復が阻害されている。
膨大な魔力を主体として戦うエルミネルにとっては致命的な呪いだ。
「これでも肉壁くらいならなれる。私も向かう。」
置いていかれると思ったのかエルミネルがジルに言う。
同族が苦しんでいるのに自分だけ安全な場所で待機はしていられない。
「勘違いするな、お前には最前線で戦ってもらうつもりだ。」
そう言ってジルは無限倉庫から小瓶を取り出してエルミネルに渡す。
小瓶の中には一粒の丸薬が入っている。
「何これ?」
「そ、それは!?何故ジルが持っておるんじゃ。」
エルミネルは見覚えが無さそうだがエルロッドはそれを見て驚いている。
この丸薬が何か知っているのだろう。
これはトレンフルにいた時にダンジョンで出会ったエトに譲った万能薬である。
「細かい事は気にするな。エルミネル、それは万能薬と言って呪いくらいなら簡単に治してくれる。それを服用しろ。」
「分かった。」
エルミネルは言われるままに丸薬を飲み込む。
すると呪いを示す痣が見る見る消えていき、元の綺麗な肌へと戻った。
これでエルミネルの呪いは解呪され、魔力も徐々に回復するだろう。
「良かったのかジルよ、万能薬の様な貴重な薬を。」
その価値を知っているエルロッドだからこそ心配している。
気軽に手に入る物では無く、値段も簡単には付けられない世界最高峰の薬だ。
「貴重な薬だったの?私が稼いで返す。」
「気にするな、その分しっかり働いてもらうけどな。」
「分かった。」
エルミネルは気合いを入れる様に両手で握り拳を作っている。
だが気合いだけがあっても意味は無い。
「エルミネル、時間が無いらしいから飲むといい。」
ジルは無限倉庫から取り出したポーションを手渡す。
魔力を回復する効果のあるポーションだ。
呪いによって魔力が失われていたエルミネルが直ぐに魔力を回復するにはポーションが手っ取り早い。
「…飲みたくない。」
ポーションが不味い事はエルミネルも知っている。
魔力回復の手段として優秀なのは確かだが、不味いと分かっている物を進んで飲みたいとは思わない。
「同族のピンチなんだろう?」
「エルミネル、ギルドマスター権限で今直ぐに飲むのじゃ。」
二人にそう言われてエルミネルは渋々ポーションに口を付ける。
そして一気に傾けて中の液体を自分の口の中へと流し込んでいく。
「…吐きそう。」
ポーションを飲み干したエルミネルは、その不味さに綺麗な表情を歪ませていた。
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