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44章

元魔王様と待望のスキル購入 2

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 魔力切れにより過度な空腹状態に襲われたジルだったが、大量に料理を食べ続けた事により空腹を満たせた。
テーブルの上にはジルの完食し終えた皿がこれでもかと積まれている。

「ふぅ~、満足した。」

「…まさかこんなに食べるなんて。今から夕食の仕込みを急がないと。」

 ジルが満足するまで食べた結果、仕込みをしていた料理まで一部無くなってしまった様だ。
リュカは焦って片付けをして厨房で料理をし始めている。
その分飯代は支払っているので頑張ってもらうしかない。

「さて、移動するぞ。」

「部屋でするのかのう?」

「いや、浮島の方でやる。」

 一先ず四人で部屋に移動する。

「二人も浮島に招くと言う事じゃな?」

「ああ、取り敢えず二人もこの扉に入ってくれ。」

 無限倉庫から取り出した扉を設置して先に中に入る。
レイアとテスラも二人の後に続いて扉を通る。

「ようこそ、我らの拠点へ。」

 一瞬にして宿屋の一室から広い木造の建物内へと移動した。
ここは浮島に建てられた居住用の建物だ。

「魔法道具の扉ですか。別の場所に転移した様ですね。」

「ここがジルさん達の拠点なんだ、へえ~。」

 二人は興味深そうに辺りを見回している。

「見回るのは後にしろ。その前にやる事がある。」

「スキルの購入じゃな?」

「それもあるがその前に少し話しておく事がある。ホッコ、もう少しだけ待っていてくれ。」

「クォン。」

 ホッコは分かったと言う様に首を縦に振っている。

「ナキナ、この二人について紹介しておこう。」

「レイア殿とテスラ殿じゃろう?トレンフルからの帰りの道中も一緒じゃったから二人の事は知っておるぞ?」

 ナキナが不思議そうに首を傾げる。
その時に色々と自己紹介も終えており、後輩の冒険者として共に依頼を受けた事もある。

「それだけでは無い。我はこの二人とは前々から知り合いだったのだ。」

 天使の襲撃に巻き込んでしまったので二人の事をこれ以上隠しておかずに正体を明かそうと思った。
ナキナは鬼人族なので人族程魔族を憎んでいる事も無いと思っており、二人も同じ意見で事前に許可を得ている。

「ジルさんとは昔冒険をしたりしていました。」

「もっと多くの仲間達と一緒にね。」

 二人が懐かしむ様に呟く。
それは転生前の事なので本当に遥か昔の事だ。
それでも二人にとっては忘れる事の出来無い思い出である。

「そうじゃったか。どこと無く気安い間柄に見えておったのはそれが理由かもしれんのう。」

「だから今後この二人も行動を共にする事が多くなるかもしれない。ナキナも仲良くしてやってくれ。」

「それは勿論じゃ。二人も仲良くしてくれると嬉しいのじゃ。」

 ナキナの言葉に二人が頷いている。
これで二人も今までよりも一緒に行動しやすくなっただろう。
だが本題はこれからだ。

「そしてもう一つ重要な事を話さなければいけない。先程の天使襲撃についてだ。」

「ナンバーズの襲撃は焦ったのう。」

 天使族の中でも上位の存在であるナンバーズが急に襲ってくるとは夢にも思わなかった。

「ああ、ナキナを巻き込んでしまったのは悪かったな。」

「巻き込んだ?どう言う事じゃ?そう言えば敵の天使が魔族がどうのと言っておったが。」

「二人共。」

 ジルが合図をすると二人が人化のスキルを解く。
すると人族の身体が本来の姿に戻っていく。

「っ!?」

 二人の姿を見たナキナは驚いている。
人族だと思って接していた二人の正体は実は魔族だった。

「見ての通り二人は魔族だ。レイアがヴァンパイアでテスラがサキュバスだな。」

「我々が魔族故に天使が襲撃してきたのだと思います。申し訳ありませんでした。」

「巻き込むつもりは無かったの、ごめんね。」

 二人がナキナに向かって深々と頭を下げる。
本来なら襲われる事の無かったナキナを危険な目に合わせてしまった。

「成る程のう、天使は魔族を敵視しておるから納得したのじゃ。」

「伝えるのが遅くなって悪かったな。魔族の正体を明かすのは慎重にいきたくてな。」

 普段暮らしているのは人族の国だ。
全ての人族が魔族を敵対視している訳では無いが、そう言った想いを抱く者は多いだろう。
故に二人の正体が知れ渡ってしまえば大騒ぎになる事は確実だ。

 二人は魔王時代の配下なので人族に討たれるなんて事にはなってほしくない。
なのでどうしても正体を明かすのは慎重になってしまう。

「それが正しいじゃろう。人族の耳に入れば大変な事になるからのう。妾は種族など全く気にせんがな。」

 二人が魔族と分かってもナキナの態度が変わる事は無い。
むしろ話してもらえて嬉しそうにしている。

「よかった~、天使の件で嫌われちゃったらどうしようかと焦ってたんだよね。」

 テスラが安心した様に大きく息を吐き、レイアもホッと胸を撫で下ろしている。

「そんな事で嫌ったりせん。ジル殿の仲間であるならば、妾とも仲間の付き合いをしてくれると嬉しく思う。今後とも是非仲良くしてくれると嬉しいのじゃ。」

「はい、こちらこそ宜しくお願いします。」

「宜しくね!」

 三人は笑顔で握手をして新たな仲間の存在を確かめ合っていた。
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