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43章

元魔王様と天使族の襲来 5

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 広範囲を極級魔法で攻撃した事により、手元にあるスキル収納本に大量のスキルが取得されていく。
今の攻撃により大量の魔物を倒す事が出来た様だ。

「ちっ、これだけやっても人化は出ないか。」

 追加されたスキルの量は物凄かったのだが、残念ながら狙っている人化のスキルは無かった。

「珍しいスキルなのかもしれんのう。」

「だが今倒した魔物達を回収すれば異世界通販で買えるくらいにはなるだろう。」

「であれば、それらを回収して撤退じゃな。」

 得られたスキル数以上の魔物が魔法の範囲内で倒れているので、それらを回収すれば相当なお金になるだろう。
異世界通販のスキルでの買い物は高いのだが、充分買える資金は揃う筈だ。

「ジルさん、とんでもない音がしましたけど大丈夫ですか?」

「わあー、すっごい事になってるね。」

 魔物の回収をしながら近付いてきていた二人が目の前の惨状に驚いている。

「少し広範囲に攻撃して一気にスキルを得ようと思ってな。」

「成果はどうでしたか?」

「外れだ。だが今日は回収して撤退する事にした。」

「了解!早速拾いにいきますか。」

 四人で手分けして魔物を回収していく。
さすがに魔の森の奥深くに入ってきただけあって高ランクの魔物が多い。
素材の値段にも大いに期待出来る。

「大体回収は終えたか?」

「かなりの量でしたね。頂いた鞄も一杯です。」

「私もこれ以上入らないや。」

「後はジル殿の無限倉庫くらいかのう。」

 ジル以外の三人には収納用の鞄が配られているが、その容量も限界に近いらしい。

「我も相当回収したから充分だろう。日ももう直ぐ傾いて…。」

 おおよその時間帯を確認する為に話しながら空を見上げる。
するとかなり上空に豆粒程の大きさだが何かを見つける。

「何だあれは?」

「ん?空に何かおるのか?」

「私には見えないですね。」

「私も。」

 皆が目を凝らしているがかなり距離があるのか見えにくい。
少し見続けているとその豆粒の周囲が光り出す。

「一帯が光り出した。あれは…っ!」

「殺気!」

「何かが降ってきます!」

 光りが現れると同時に上空から凄まじい殺気が降り注ぐ。
明らかにジル達に向けて何らかの攻撃を仕掛けるつもりだ。

「全員我に近付け!」

 ジルがそう呼び掛けると皆が素早く周囲に集まってくる。
どんな攻撃が来るかは分からないので、ジルが信頼している結界魔法の断絶結界での防御を選んだ。
展開して全員を包み込むと同時に光りが真上から降り注ぐ。
結界に暫く衝撃があったが少し経つと収まった。

「攻撃が止んだか。一体何なんだ。」

「ジル殿の結界にヒビが入っておるぞ。この光る剣は相当な威力じゃのう。」

 ジルの断絶結界の強度は凄まじい。
高ランクの冒険者や魔物であっても壊すのに苦労するレベルだ。
それにヒビを入れてくるとは相当な攻撃力と分かる。

「光る剣…。」

「これってまさか…。」

 レイアとテスラが周囲の地面に突き刺さる光る剣を見て驚いている。

「あれ~?生きてるじゃん?僕の攻撃を受けて無傷なんてどうなってるのかな?」

 上空から殺気を放ち攻撃を仕掛けた張本人達が降りてきた。
美しい翼に整った顔立ち、以前バイセルの街の近くでも見た事がある天使族だ。
話している天使は随分と若く見えるが後ろの天使達を従えているので立場は上の様だ。

「何だ貴様は。」

「人族のくせに僕を知らないなんて無知なんだね。」

 ジルの言葉に呆れた様に首を振っている。

「ジル様、少々まずい状況になりました。あの天使は危険です。全盛期の力を持たない私とテスラではどこまで戦えるか。」

 ジルの耳元でこっそりレイアが呟く。
腰に下げる真剣にも手が伸びている。

「何故こんな場所にナンバーズが。」

「妾もここまで有名な天使となるとさすがに知っておるぞ。聖痕スティグマ所持者に光りの剣とくれば、光剣のライエルじゃな?」

 どうやらこの天使は有名な様だ。
敵対種族である魔族の二人だけで無く、鬼人族のナキナも知っている様だ。

 ナンバーズ、聖痕、ライエルと残念ながら聞き覚えのある言葉は一つも無いが、転生していたジルとしては知らなくても仕方無いだろう。
そう言った不安な言葉からも実力が高いのは伺える。
Aランクの強さを持つ影丸が若干怯えている程だ。

「そこの男以外は知っている様だね。でも僕は優しいから無知な人族の為に改めて自己紹介をしてあげるよ。僕は聖国セントリアルの聖天司教団体所属、序列8位のライエル。これから君達を殺す者の名前だよ。」

 ライエルは空中に浮いたまま、そう呟いて笑みを浮かべた。
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