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35章
元魔王様と帰還を待っていた者達 7
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突然トゥーリからそんな事を言われたが結局どちらも聞く事になるのなら順番なんてどちらでも構わない。
「では悪い方から聞こう。」
「おっけー。少し前の話しになるんだけど、バイセルの街のオークションに行ったのは覚えているよね?」
「ああ。」
ダナンがミスリルのインゴットを金に変える手段としてオークションを利用しており、ジルも参加してみたいと言う事になって付いて行った件だ。
そこで偶然にもナキナが違法奴隷として売られているのを発見してジルが落札した。
そしてセダンの街まで連れ帰ってトゥーリに奴隷解放の作業を頼んだので忘れる筈が無い。
「私は初耳だったんだけど、貴族と問題を起こしたそうだね?」
トゥーリは確認する様に尋ねてきているが、笑顔なのに圧を感じる。
どうやら少し怒っている様だ。
「そんな事もあったな。だが非は貴族側にあるぞ。」
最初に宿の予約を取っていたのに、無理矢理奪われそうになったのだ。
多少強引に店から摘み出したのは認めるが、そうでもしないと店側に迷惑が掛かっただろう。
「はぁ~、そんな事貴族が聞く耳を持つ訳無いよ。身分の違いってのがあるんだからさ。」
貴族と平民では立場が違う。
側から見て貴族側に責任がある様な事でも、平民に非があると言う結果になるくらい身分の差は絶対的な力を持つのだ。
「面倒な事だ。と言うか我は名乗っていなかったと思うが?」
あの貴族とはバイセルの街で会ったきりでお互い名前も知らない。
それなのにトゥーリのところに苦情がきているのが謎だ。
「貴族の情報網をあまく見たらいけないよ。個人情報なんて直ぐに調べられてしまうのさ。」
情報と言うのは時として金になり、力になり、交渉材料となる。
有益な情報を一早く仕入れる為に権力者達は独自の情報網をある程度持っているらしい。
「それで我の事を調べてトゥーリに文句を言ってきたと言う事か。」
「セダンの街に住む冒険者って知られたらしくてね。領民の不始末の責任を取れって私に猛抗議してきたのさ。」
トゥーリは溜め息を吐きながらうんざりとした表情で言う。
「それに今回は相手も悪かったんだよね。」
「相手?」
「やっぱり知らなかったんだね。まあ、ジル君って貴族に興味も無さそうだし、そうじゃないかとは思ってたけどさ。相手の若様はデブリッジ侯爵家って言うお偉い貴族家の息子さんでね、爵位の高い貴族だったんだ。」
勿論ジルは初めて聞く言葉だ。
人族歴の浅いジルが貴族の家名なんて知っている筈も無く、どこの領地かもピンときていない。
「一応補足しておくと、国の北方にあるデブリッジ領を治める貴族だね。隣国と隣り合わせにある領地だから、防衛の要として武力が高い領地として知られてるよ。」
「ほう、そんなに偉い貴族だったとはな。とてもそうは見えなかったぞ。」
ジルの感想としては、中身が子供のまま大人になった我儘迷惑貴族と言った印象だ。
とてもそんな重要な領地を任せられている貴族とは思えない。
「それには同感だけどね。爵位を盾にやりたい放題って噂だし。」
「そんなのを野放しにしておいていいのか?」
国にとっては百害あって一利なしだと思われる。
早めに排除してその領地を有能な者に任せるべきだろう。
「証拠も権力で揉み消しているだろうからね。そう簡単に悪事の尻尾は掴めないのさ。だから他の貴族も直接的な手出しは出来ず、せいぜい牽制して大人しくさせるくらいだね。」
「やれやれ、面倒な者に目を付けられたものだ。」
「私は完全なとばっちりだけどね。」
トゥーリがそう言ってジト目を向けてくる。
よくも巻き込んでくれたなと表情が訴えている。
「まあ、起きてしまった事は仕方が無いだろう。」
「仕方が無いで片付けてほしくはないけどね。」
「それで抗議の内容は何なんだ?」
ジルの不敬に対する責任を取れとトゥーリに言っているのだから、何かしらを要求してきている筈だ。
「前と同じさ、嫁になれだって。また求婚されちゃったよ、モテるのも辛いね。」
トゥーリがやれやれと首を振りながら言う。
どこぞの元商会長の様にトゥーリが治める領地を自分の物にしたいのだろう。
「そうか、ならば嫁いで一件落着だな。」
「なんで私がジル君の為にあんな子供おじさんに嫁がなければいけないんだよ。」
「冗談だ、冗談。」
トゥーリの言葉に乗っかったつもりだったが、この冗談はあまり好まれなかった様だ。
「それでどうするんだ?」
「当然蹴るに決まってるだろう?そんな条件呑む奴いないよ。」
元々トゥーリは巻き込まれただけで、何も悪い事をしていない。
一方的に突き付けられた理不尽な要求を受け入れるつもりは無い。
「無視して問題無いのか?」
「何かしら行動は起こすかもね。でもその時は当然協力してくれるよね?」
トゥーリの問い掛けに対して、さすがにこれは自分が事の発端なので断れないなとジルは観念して頷いておいた。
「では悪い方から聞こう。」
「おっけー。少し前の話しになるんだけど、バイセルの街のオークションに行ったのは覚えているよね?」
「ああ。」
ダナンがミスリルのインゴットを金に変える手段としてオークションを利用しており、ジルも参加してみたいと言う事になって付いて行った件だ。
そこで偶然にもナキナが違法奴隷として売られているのを発見してジルが落札した。
そしてセダンの街まで連れ帰ってトゥーリに奴隷解放の作業を頼んだので忘れる筈が無い。
「私は初耳だったんだけど、貴族と問題を起こしたそうだね?」
トゥーリは確認する様に尋ねてきているが、笑顔なのに圧を感じる。
どうやら少し怒っている様だ。
「そんな事もあったな。だが非は貴族側にあるぞ。」
最初に宿の予約を取っていたのに、無理矢理奪われそうになったのだ。
多少強引に店から摘み出したのは認めるが、そうでもしないと店側に迷惑が掛かっただろう。
「はぁ~、そんな事貴族が聞く耳を持つ訳無いよ。身分の違いってのがあるんだからさ。」
貴族と平民では立場が違う。
側から見て貴族側に責任がある様な事でも、平民に非があると言う結果になるくらい身分の差は絶対的な力を持つのだ。
「面倒な事だ。と言うか我は名乗っていなかったと思うが?」
あの貴族とはバイセルの街で会ったきりでお互い名前も知らない。
それなのにトゥーリのところに苦情がきているのが謎だ。
「貴族の情報網をあまく見たらいけないよ。個人情報なんて直ぐに調べられてしまうのさ。」
情報と言うのは時として金になり、力になり、交渉材料となる。
有益な情報を一早く仕入れる為に権力者達は独自の情報網をある程度持っているらしい。
「それで我の事を調べてトゥーリに文句を言ってきたと言う事か。」
「セダンの街に住む冒険者って知られたらしくてね。領民の不始末の責任を取れって私に猛抗議してきたのさ。」
トゥーリは溜め息を吐きながらうんざりとした表情で言う。
「それに今回は相手も悪かったんだよね。」
「相手?」
「やっぱり知らなかったんだね。まあ、ジル君って貴族に興味も無さそうだし、そうじゃないかとは思ってたけどさ。相手の若様はデブリッジ侯爵家って言うお偉い貴族家の息子さんでね、爵位の高い貴族だったんだ。」
勿論ジルは初めて聞く言葉だ。
人族歴の浅いジルが貴族の家名なんて知っている筈も無く、どこの領地かもピンときていない。
「一応補足しておくと、国の北方にあるデブリッジ領を治める貴族だね。隣国と隣り合わせにある領地だから、防衛の要として武力が高い領地として知られてるよ。」
「ほう、そんなに偉い貴族だったとはな。とてもそうは見えなかったぞ。」
ジルの感想としては、中身が子供のまま大人になった我儘迷惑貴族と言った印象だ。
とてもそんな重要な領地を任せられている貴族とは思えない。
「それには同感だけどね。爵位を盾にやりたい放題って噂だし。」
「そんなのを野放しにしておいていいのか?」
国にとっては百害あって一利なしだと思われる。
早めに排除してその領地を有能な者に任せるべきだろう。
「証拠も権力で揉み消しているだろうからね。そう簡単に悪事の尻尾は掴めないのさ。だから他の貴族も直接的な手出しは出来ず、せいぜい牽制して大人しくさせるくらいだね。」
「やれやれ、面倒な者に目を付けられたものだ。」
「私は完全なとばっちりだけどね。」
トゥーリがそう言ってジト目を向けてくる。
よくも巻き込んでくれたなと表情が訴えている。
「まあ、起きてしまった事は仕方が無いだろう。」
「仕方が無いで片付けてほしくはないけどね。」
「それで抗議の内容は何なんだ?」
ジルの不敬に対する責任を取れとトゥーリに言っているのだから、何かしらを要求してきている筈だ。
「前と同じさ、嫁になれだって。また求婚されちゃったよ、モテるのも辛いね。」
トゥーリがやれやれと首を振りながら言う。
どこぞの元商会長の様にトゥーリが治める領地を自分の物にしたいのだろう。
「そうか、ならば嫁いで一件落着だな。」
「なんで私がジル君の為にあんな子供おじさんに嫁がなければいけないんだよ。」
「冗談だ、冗談。」
トゥーリの言葉に乗っかったつもりだったが、この冗談はあまり好まれなかった様だ。
「それでどうするんだ?」
「当然蹴るに決まってるだろう?そんな条件呑む奴いないよ。」
元々トゥーリは巻き込まれただけで、何も悪い事をしていない。
一方的に突き付けられた理不尽な要求を受け入れるつもりは無い。
「無視して問題無いのか?」
「何かしら行動は起こすかもね。でもその時は当然協力してくれるよね?」
トゥーリの問い掛けに対して、さすがにこれは自分が事の発端なので断れないなとジルは観念して頷いておいた。
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