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31章
元魔王様と船上の戦い 6
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サリーの運転する船はトレンフルの港からどんどん遠ざかっていき、街が豆粒の様に小さくなるくらい沖までやってきて停止した。
「到着致しました。」
「結構他にもいるわね。」
ルルネットが辺りを見回して言う。
自分達以外にもそれなりの数の船が止まっている。
どの船もジル達の船よりかなり大きく、無数の釣り糸が海に垂らされている。
一応それなりに距離があるので魔法に関しては大丈夫そうだ。
「やっぱマググロを取るってなるとこのくらいの大きさの船が必要になるわよね。」
「大きさが大きさですからね。ジル様の収納スキルが無ければこんな大きさの船では来れません。」
無限倉庫のスキルがあるからこそ、船の大きさを気にする必要が無い。
収納スキルの有り難さが良く分かる。
「捕獲方法は釣りだけなのか?」
「そうよ。網なんて使ってられないわ。」
ルルネットがそう言って釣竿をジルに渡してくる。
大物用なのか随分と頑丈そうな釣竿である。
「マググロは突進力に優れた魔物なのです。網を張ったとしても簡単に突き破られてしまいます。」
「成る程。」
道理で周りが釣竿だらけな訳である。
そして釣竿を垂らしている者はかなりガタイの良い者ばかりだ。
大きな海の魔物と綱引きをするとなると華奢な者では力負けしてしまうのだろう。
「何よ?」
周りを見た後にルルネットを見ていると目が合った。
「貧弱なルルネットが竿を引っ張り上げられるのかと思ってな。」
「貧弱言うな!私だって腕の魔装が出来る様になったんだから、マググロくらい引っ張り上げられるわよ!」
ルルネットが頰を膨らませながら言ってくる。
実はジルと最初に模擬戦をした時からコツコツと練習をしていた腕の魔装が形となってきていた。
まだ完全とは言えないが腕に魔力を纏わせられる様になってきている。
中途半端な魔装ではあるが短時間で身に付けたのは才能と努力の賜物だろう。
「ルルネットお嬢様、私も微力ながらお手伝い致します。」
「ありがとねサリー。一緒にジルをギャフンと言わせてやるわよ!」
「頑張りましょう!」
サリーの言葉でルルネットはより一層やる気を出した様だ。
何かと有能なサリーが付いていてくれれば任せても問題無いだろう。
「我は反対側で釣るから収納する時に呼ぶといい。」
「分かったわ!」
ルルネットは早速海に釣竿を垂らす。
ジルも釣りを始める為に船の反対側の少し離れた場所に移動する。
「獲物が大きいと餌も大きいな。」
釣竿の先には餌となる30センチ程の魚が針に付けられている。
これ一匹でも中々食べ応えがありそうだが、狙うマググロはそれを遥かに上回るだろう。
ジルも釣竿を海に垂らしてマググロが掛かるのを待つ事にする。
数分が経つと少し離れた船で当たりがあったのか慌ただしく船員達が動き出した。
ヒットした釣竿が曲線を描いて激しく撓っている。
相当な力で引っ張られているのか船員が三人掛かりで釣竿を引っ張てもビクともしていない。
そうこうしているうちに糸が力に耐えられずに切れてしまい、船員達が船の上で転げ回る。
それを見て周りの船の者達が笑い声を上げ、獲物を逃した船員達は悔しそうにしていた。
その後も幾つかの船で当たりがあったが、釣り上げられたのは半数程だ。
釣竿が折れたり糸が切れたりしない様に手早く釣り上げる必要があるので、マググロに拮抗出来る力を持たない者達は釣り上げる資格も無いみたいである。
故に船員以外にも冒険者が乗り込んでいる船も多数あり、そう言った者達の船の方が中々の成果を上げている。
冒険者達は単なる力自慢では無く、魔装を扱える者達だ。
身体能力をかなり高める魔装と言う技術は、マググロとの短期決戦の力勝負でかなり有用な様だ。
「そもそも当たりが来ないと意味が無いのだがな。」
ジルの釣竿はピクリとも反応していない。
いくら魔装を扱えると言っても釣竿に食い付いてくれなければ意味が無い。
「きた!」
ジルが釣竿を眺めていると後ろからルルネットの声が聞こえてくる。
どうやら釣竿に当たりがあった様だ。
「ルルネットお嬢様、頑張って下さい!」
「ぐぐぐ、重い~!サリーも持って!」
「手伝います!」
声を聞いているとかなり苦戦している雰囲気である。
魔装をルルネットが使っている様だが女性二人では厳しそうだ。
それでも魔装を使ったルルネットがガタイの良い大人数人分の働きをしているだけでも凄い事だ。
「どれどれ。」
ジルは時空間魔法の空間把握を使って海の中の様子を確認する。
ルルネットの釣竿から伸びる糸を辿ると、深い場所に口から糸を伸ばす巨大な魚を見つける。
「ほお、これがマググロか。確かにかなりの大きさだ。」
釣竿で引っ張られるのとは逆方向に泳ごうとしており、糸が真っ直ぐに張られている。
このまま時間が長引けば糸は簡単に千切れてしまうだろう。
「絶対に釣り上げてやるんだから!」
「頑張りましょう!」
ルルネットとサリーは諦めずに釣竿を懸命に引っ張っている。
「少し手助けしてやるか。」
空間把握による認識範囲内であれば自由に魔法が使える。
その効果を利用してマググロに魔法を使う事にした。
「初級闇魔法、フォースディクライン!」
ジルが魔法を使用するとマググロの力が弱まり、船に徐々に引っ張られ始める。
「力が弱まった!」
「ルルネットお嬢様、今がチャンスです!」
二人はマググロが弱った手応えを感じたのか必死に釣竿を引っ張って糸を手繰り寄せる。
マググロも必死に逃げようと泳いでいるがジルの魔法で弱体化しているので努力虚しく船に近付くばかりである。
本来の初級闇魔法のフォースディクラインは力を軽減させる魔法ではあるが効果はせいぜい一割程度だ。
しかしジルが使った事により、適性の高さや使用魔力量の多さから効果が高まり、マググロの力は五割程軽減される形となっていた。
故に女性二人掛かりでもマググロの力を上回る事が出来、見事二人はマググロを船の上に引っ張り上げる事に成功したのだった。
「到着致しました。」
「結構他にもいるわね。」
ルルネットが辺りを見回して言う。
自分達以外にもそれなりの数の船が止まっている。
どの船もジル達の船よりかなり大きく、無数の釣り糸が海に垂らされている。
一応それなりに距離があるので魔法に関しては大丈夫そうだ。
「やっぱマググロを取るってなるとこのくらいの大きさの船が必要になるわよね。」
「大きさが大きさですからね。ジル様の収納スキルが無ければこんな大きさの船では来れません。」
無限倉庫のスキルがあるからこそ、船の大きさを気にする必要が無い。
収納スキルの有り難さが良く分かる。
「捕獲方法は釣りだけなのか?」
「そうよ。網なんて使ってられないわ。」
ルルネットがそう言って釣竿をジルに渡してくる。
大物用なのか随分と頑丈そうな釣竿である。
「マググロは突進力に優れた魔物なのです。網を張ったとしても簡単に突き破られてしまいます。」
「成る程。」
道理で周りが釣竿だらけな訳である。
そして釣竿を垂らしている者はかなりガタイの良い者ばかりだ。
大きな海の魔物と綱引きをするとなると華奢な者では力負けしてしまうのだろう。
「何よ?」
周りを見た後にルルネットを見ていると目が合った。
「貧弱なルルネットが竿を引っ張り上げられるのかと思ってな。」
「貧弱言うな!私だって腕の魔装が出来る様になったんだから、マググロくらい引っ張り上げられるわよ!」
ルルネットが頰を膨らませながら言ってくる。
実はジルと最初に模擬戦をした時からコツコツと練習をしていた腕の魔装が形となってきていた。
まだ完全とは言えないが腕に魔力を纏わせられる様になってきている。
中途半端な魔装ではあるが短時間で身に付けたのは才能と努力の賜物だろう。
「ルルネットお嬢様、私も微力ながらお手伝い致します。」
「ありがとねサリー。一緒にジルをギャフンと言わせてやるわよ!」
「頑張りましょう!」
サリーの言葉でルルネットはより一層やる気を出した様だ。
何かと有能なサリーが付いていてくれれば任せても問題無いだろう。
「我は反対側で釣るから収納する時に呼ぶといい。」
「分かったわ!」
ルルネットは早速海に釣竿を垂らす。
ジルも釣りを始める為に船の反対側の少し離れた場所に移動する。
「獲物が大きいと餌も大きいな。」
釣竿の先には餌となる30センチ程の魚が針に付けられている。
これ一匹でも中々食べ応えがありそうだが、狙うマググロはそれを遥かに上回るだろう。
ジルも釣竿を海に垂らしてマググロが掛かるのを待つ事にする。
数分が経つと少し離れた船で当たりがあったのか慌ただしく船員達が動き出した。
ヒットした釣竿が曲線を描いて激しく撓っている。
相当な力で引っ張られているのか船員が三人掛かりで釣竿を引っ張てもビクともしていない。
そうこうしているうちに糸が力に耐えられずに切れてしまい、船員達が船の上で転げ回る。
それを見て周りの船の者達が笑い声を上げ、獲物を逃した船員達は悔しそうにしていた。
その後も幾つかの船で当たりがあったが、釣り上げられたのは半数程だ。
釣竿が折れたり糸が切れたりしない様に手早く釣り上げる必要があるので、マググロに拮抗出来る力を持たない者達は釣り上げる資格も無いみたいである。
故に船員以外にも冒険者が乗り込んでいる船も多数あり、そう言った者達の船の方が中々の成果を上げている。
冒険者達は単なる力自慢では無く、魔装を扱える者達だ。
身体能力をかなり高める魔装と言う技術は、マググロとの短期決戦の力勝負でかなり有用な様だ。
「そもそも当たりが来ないと意味が無いのだがな。」
ジルの釣竿はピクリとも反応していない。
いくら魔装を扱えると言っても釣竿に食い付いてくれなければ意味が無い。
「きた!」
ジルが釣竿を眺めていると後ろからルルネットの声が聞こえてくる。
どうやら釣竿に当たりがあった様だ。
「ルルネットお嬢様、頑張って下さい!」
「ぐぐぐ、重い~!サリーも持って!」
「手伝います!」
声を聞いているとかなり苦戦している雰囲気である。
魔装をルルネットが使っている様だが女性二人では厳しそうだ。
それでも魔装を使ったルルネットがガタイの良い大人数人分の働きをしているだけでも凄い事だ。
「どれどれ。」
ジルは時空間魔法の空間把握を使って海の中の様子を確認する。
ルルネットの釣竿から伸びる糸を辿ると、深い場所に口から糸を伸ばす巨大な魚を見つける。
「ほお、これがマググロか。確かにかなりの大きさだ。」
釣竿で引っ張られるのとは逆方向に泳ごうとしており、糸が真っ直ぐに張られている。
このまま時間が長引けば糸は簡単に千切れてしまうだろう。
「絶対に釣り上げてやるんだから!」
「頑張りましょう!」
ルルネットとサリーは諦めずに釣竿を懸命に引っ張っている。
「少し手助けしてやるか。」
空間把握による認識範囲内であれば自由に魔法が使える。
その効果を利用してマググロに魔法を使う事にした。
「初級闇魔法、フォースディクライン!」
ジルが魔法を使用するとマググロの力が弱まり、船に徐々に引っ張られ始める。
「力が弱まった!」
「ルルネットお嬢様、今がチャンスです!」
二人はマググロが弱った手応えを感じたのか必死に釣竿を引っ張って糸を手繰り寄せる。
マググロも必死に逃げようと泳いでいるがジルの魔法で弱体化しているので努力虚しく船に近付くばかりである。
本来の初級闇魔法のフォースディクラインは力を軽減させる魔法ではあるが効果はせいぜい一割程度だ。
しかしジルが使った事により、適性の高さや使用魔力量の多さから効果が高まり、マググロの力は五割程軽減される形となっていた。
故に女性二人掛かりでもマググロの力を上回る事が出来、見事二人はマググロを船の上に引っ張り上げる事に成功したのだった。
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