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27章

元魔王様とダンジョン探索 6

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 暗い洞窟の中は一本道となっており、奥に階下への階段があった。
降りていくと段々と魔力が感じられる様になってくる。

「この下からダンジョンになっている様だな。」

「タイプCはまだ出さないの?」

「もう少し階層を降りてからでいいだろう。ダンジョンに潜っている者達にメイド姿のタイプCを見られれば、噂になるかもしれない。」

 余計な面倒事を引き起こす原因はあまり作りたく無い。
ただでさえルルネットと言うトレンフルでは有名な者を引き連れているのだ。
ここに話題性になる物が追加されれば面倒事に発展しそうである。

「うわあ、本当にきたのね!」

 階段を降りると石造りの迷路みたいになっている空間が広がっていた。
床、天井、壁全てが魔力を帯びている不思議な空間、これがダンジョンだ。

「探索開始よ!」

「待て。」

「ぐえっ!?ちょっと、いきなり掴まないでよ!」

 首筋の服を掴んで止めると苦しかったのかルルネットが貴族令嬢らしからぬ声を出す。

「ダンジョンでは我の指示に従う約束だろ?」

「指示って、こんな序盤で何をするのよ。」

「感知のスキルを使ってくれ。」

 ルルネットが持つ唯一のスキルだ。
使用すれば一定範囲内を知覚する効果がある。

「こんな浅い階層でする事?」

「いいからやってみろ。」

 浅い階層には弱い魔物しか出ない。
そんなに警戒が必要かと不満気ではあるがジルの言う通りに感知のスキルを使う。

「あっちとこっちとそっちの三方向に魔物がいるわ。人はいないみたいね。」

「つまりこちらに進めば接敵は無いな。下の様子はどうだ?」

「え?下?うーんと、この方向にはいないみたいだけど?」

 ルルネットがそんな情報いるのかと疑問を浮かべている。

「ならば進む方向はこっちだ。」

「え!?何その調べ方!?下に向かう階段でも見つけられるの?」

 ルルネットはそんな方法を知らない。
ダンジョンにいつか入る為に勉強をしてきたが初めての知識だ。

「初見のダンジョンなのにそんな事が分かる訳無いだろう?」

「…。」

 ジルの返答を聞いてルルネットが冷ややかな目を向けている。
不思議な行動をしておいてそんな当たり前の事を言われてルルネットは少しだけ苛立ちを覚えた。

「魔物と遭遇しないのだから今の内に軽くダンジョンについて話しておくか。」

 ダンジョン初見のルルネットには幾つか知っておいてほしい事もある。

「ダンジョンについての前知識くらいあるわ。これでも勉強していたんだから。」

「ならば魔法の時の様に知識の食い違いが無いか調べておくか。」

 ジルとルルネットはダンジョンについて知っている情報を出し合っていく。
ダンジョンは魔物、トラップ、お宝がある場所で、魔物を倒す事でも素材が手に入るが、外みたいに丸ごと残らず素材の一部を落として消える。

 そして階層を下がる程に魔物が強くなっていき、報酬も期待出来る様になる。
一定の階層ごとにボス部屋と呼ばれる強力な魔物と戦う場所もある。

 ダンジョンには核となるダンジョンコアがあり、それを守るダンジョンマスターがいて、コアが破壊されるとダンジョンは消滅してダンジョンマスターも死ぬ。

 このダンジョンはトレンフルが保有する財源の一つとなっているので破壊行為は重罪となる。
仮にコアにまで辿り着けても破壊行動をしてはいけない決まりとなっている。

「ちなみに最高到達階層は地下18階層よ。」

 過去にそれを成し遂げたのはブリジットが率いたパーティーらしい。

「ダンジョンコアにまで至った者はいないと言う事か。」

「そう簡単にダンジョンは制覇出来無いわよ。構造も複雑だし魔物は強くなっていくし物質の枯渇問題もあるんだから。」

 ダンジョンに潜ると言うのは結構大変な事である。
実力者でも途中で強敵や相性の悪い敵に出会えば断念する事もあるし、食料が無くなれば引き返さなければならない。

「ふむ、ダンジョンに対する認識はある程度同じみたいだな。」

 魔法の時みたいな大きな違いは無く、ルルネットの勉強の成果もあった。

「最後にこれは知っているか?ダンジョンコアかダンジョンマスターによる指示か、ダンジョンと言う物の性質上そうなっているのかは分からないが、ダンジョンは常に魔装の様な事を行なっている。」

 床、天井、壁全てが常に魔力を帯びている。
ちなみにそれは他のダンジョンも同様だ。

「知ってるわよ、ダンジョン側の防衛手段みたいなものよね?」

 魔装は攻撃力だけで無く防御力も上がる。
ダンジョン内は普通の石で出来ているのだが魔装の効果で相当硬くなっている。

「破壊されたくは無いからそうだろうな。ご丁寧に修復能力まである事だし、な!」

 ジルは魔装した拳でダンジョンの壁を軽く殴る。
拳大に壁が陥没するが徐々に修復されて直ぐに元に戻る。

「修復能力は有名な話しよね。これのおかげでどれだけ暴れても後続の迷惑にならないんだから私達からすれば有り難い機能だわ。」

 ダンジョン内では魔物との戦闘が頻繁に起こる。
その際に武器や魔法を使うので戦闘の余波で天井が崩れたり壁に穴が空いたりと周りに被害が出る。

 普通ならそれらの片付けを他の探索者の迷惑とならない様にする必要が出てくるが、ダンジョンが自動で修復してくれるので崩落や迷惑を気にしなくてもいいのだ。

「逆にこの機能は利用出来ると言う話しでもある。」

「利用?」

「修復速度はそれなりだが猶予はあるから、こう言う事も出来るのだ。ルルネット、後ろにいろよ。」

 ジルはルルネットを背後に隠して地面に片手を付ける。

「超級風魔法、インパクトブレイク!」

 地面に添えられている掌から猛烈な風が生み出される。
その風がダンジョンの床に強い衝撃を与え、立っている床が軽く揺れる感覚があった。
そして直後に手を触れていた部分が音を上げて崩落していった。
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