上 下
239 / 651
27章

元魔王様とダンジョン探索 2

しおりを挟む
「そうです。一刻も早く冒険者ギルドとしては対処したいのですが、Bランクの魔物である事と場所が厄介でして。」

「確かに海となると冒険者を選ぶ依頼になるな。」

 依頼書の場所は海となっている。
冒険者の殆どが陸での依頼が基本であり、ランク通りの力を発揮出来る場所も陸となる。

 しかし場所が水の中に変わるだけで本来の実力を発揮する事は難しくなってしまう。
クラーケンはBランクに分類される魔物ではあるが、海を得意としない冒険者にとっては難易度が上がる事にもなるだろう。

「既に依頼書を出してから何組かの冒険者が向かわれたのですが、成果は上がっていません。このままでは騎士団の助けを借りる事になるでしょう。」

「協力を求めればいいんじゃないか?」

 ブリジットは高ランク冒険者と並ぶ実力がある。
他の騎士の実力も高いので騎士団に任せればクラーケンも倒せそうだ。

「何でもかんでも騎士の方々に頼るのは良くありません。騎士は有事の際の街の貴重な戦力なのですから、対処出来る事は冒険者で対処したいのです。この前も頼ったばかりですし。」

 この前と言うのは盗賊の件だ。
ミラに事前に話しを聞いていたが、あの盗賊の討伐はトレンフルのギルドで受け持つ事になっていた。

 しかし盗賊に奴隷が加わった事による戦力の向上で冒険者には厳しい相手となってしまい、騎士団に頼む形となった。
結果的にはジル達がいなければ騎士団も負けていたかもしれないのだが、一度騎士団を頼ったギルドとしては面子を保ちたいのだろう。

「高ランクの冒険者はいないのか?」

 騎士団に頼らないならばブリジットに並ぶ強者を向かわせればいい。
しかしそうなるとAランク相当の冒険者が必要となる。

 ランクが高い程冒険者の数は減っていくので、トレンフルのギルドが高ランク冒険者をどれだけ抱え込んでいるかと言う話しにもなる。

「クラーケンが居着いてしまった近くで皆潜っているので、出て来てくれれば対処してくれると思うのですが、現状では連絡が取れません。そして外にいる戦力では対処が難しいのです。」

 高ランクの冒険者はいるにはいるが取り込み中らしい。

「潜るって海にか?と言うかこの場所に何かあるのか?」
「おや?ご存知ありませんでしたか?その場所にはダンジョンがあるのですよ。」

 潜るとは海では無くダンジョンにと言う意味だった。

「ダンジョンか。成る程な、ギルドが早く対処したい訳だ。」

 ダンジョンは魔物が蔓延る迷宮の様な場所だ。
素材やお宝に溢れており、冒険者が一攫千金を夢見る場所でもある。
そんな場所が一時的でも封鎖されるとギルドとしては困るのだろう。

「クラーケンがいるせいで新たに冒険者達が入れず困っています。高ランク冒険者達もいつ戻ってくるか分からないので、外で対処出来る方を探しているのです。」

「そこで我に目を付けたと言う事か。」

 ブリジット以上の強さを持つジルであれば、クラーケンも倒す事が出来ると思われたのだ。

「はい、ダンジョンの資源はギルドにとってもトレンフルにとっても貴重な財源です。一刻も早く解放して冒険者が入れる様にしたいのです。」

 ダンジョン間の流通はトレンフルの財政に関わってくる。
早く対処出来るに越した事は無い。

「ふむ、ダンジョンか。それは良い事を聞いた。」

「っ!?もしかして受けて下さるのですか?」

 ジルのランク的に強制力の働かない指名依頼だったので一か八かでサザナギは頼んだ。
そんなジルの反応は意外と悪く無い。

「ああ、良いだろう。その依頼引き受けてやる。ただし条件次第でだけどな。」

「私に可能な範囲であればお聞きします。」

 ジルが条件を言うとサザナギは心良く承諾してくれた。
条件を聞いてくれたので早速クラーケン討伐の為にダンジョンの近くに向かう事にする。
先ずはそれを知らせる為に屋敷に戻って、ブリジット達にサザナギから頼まれた依頼内容についての説明をする。

「成る程、そんな事になっていたのですか。」

「騎士団に連絡はきていなかったのか?」

「その様ですね。救援依頼が届けば休暇中とは言え私の耳にも届く筈です。」

 現在ブリジットは休暇中ではあるが、トレンフルの騎士団員として有事の際には直ぐに出られる様にしてある。
なのでクラーケン問題はギルドだけで解決する様に動いている事になる。

「まあ、クラーケン程度簡単に排除出来るから騎士団の出番は無いだろう。」

 高ランクの魔物で戦闘場所が海であってもジルにとっては些細な事だ。
それくらいで苦戦する様な事態にはならない。

「依頼とは言えトレンフルの為にありがとうございます。」

「気にするな。頼んだ条件も引き受けてくれたからな。」

 ジルとしては提示した条件をのんでくれれば、それでどんな指名依頼も引き受けるつもりだ。

「条件?何か頼んだの?」

「ダンジョンへの探索許可証だ。それが無ければダンジョンには入れないと聞いたんでな。」

 クラーケンを倒した後にダンジョンに入る事を伝えたら探索許可証が無いと入れないと言われ、報酬にサザナギが用意してくれる事になったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ただしい異世界の歩き方!

空見 大
ファンタジー
人生の内長い時間を病床の上で過ごした男、田中翔が心から望んでいたのは自由な世界。 未踏の秘境、未だ食べたことのない食べ物、感じたことのない感覚に見たことのない景色。 未だ知らないと書いて未知の世界を全身で感じることこそが翔の夢だった。 だがその願いも虚しくついにその命の終わりを迎えた翔は、神から新たな世界へと旅立つ権利を与えられる。 翔が向かった先の世界は全てが起こりうる可能性の世界。 そこには多種多様な生物や環境が存在しており、地球ではもはや全て踏破されてしまった未知が溢れかえっていた。 何者にも縛られない自由な世界を前にして、翔は夢に見た世界を生きていくのだった。 一章終了まで毎日20時台更新予定 読み方はただしい異世界(せかい)の歩き方です

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

怠惰生活希望の第六王子~悪徳領主を目指してるのに、なぜか名君呼ばわりされているんですが~

服田 晃和
ファンタジー
 ブラック企業に勤めていた男──久岡達夫は、同僚の尻拭いによる三十連勤に体が耐え切れず、その短い人生を過労死という形で終えることとなった。  最悪な人生を送った彼に、神が与えてくれた二度目の人生。  今度は自由気ままな生活をしようと決意するも、彼が生まれ変わった先は一国の第六王子──アルス・ドステニアだった。当初は魔法と剣のファンタジー世界に転生した事に興奮し、何でも思い通りに出来る王子という立場も気に入っていた。 しかし年が経つにつれて、激化していく兄達の跡目争いに巻き込まれそうになる。 どうにか政戦から逃れようにも、王子という立場がそれを許さない。 また俺は辛い人生を送る羽目になるのかと頭を抱えた時、アルスの頭に一つの名案が思い浮かんだのだ。 『使えない存在になれば良いのだ。兄様達から邪魔者だと思われるようなそんな存在になろう!』 こうしてアルスは一つの存在を目指すことにした。兄達からだけではなく国民からも嫌われる存在。 『ちょい悪徳領主』になってやると。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

処理中です...