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23章
元魔王様と風の姫騎士との再会 2
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ジルの実力を考えると事前に通達しておかなければ予想外の働きで直ぐにでもランクが上がってしまうだろうとミラは思っていた。
しかしそれはギルドとしては有り難いがジルの望むところでは無い事はこれまでの付き合いで分かっている。
指名依頼の強制力が働くCランク以上にジルは上がりたいとは思っておらず、勝手にランクを上げれば必ずギルドを去る選択をするとミラは確信していた。
「それじゃあ行ってくる。」
「その前に少しだけいいですか?ちょっと気になる事がありまして。」
「気になる事?」
立ち上がったがミラにそう言われて再び座り直す。
表情が少し真剣なものになっている。
「トレンフルからでは無いのですが、そちらの方角から来られた冒険者が盗賊に襲われたと言っていたんです。」
「盗賊か、別に珍しい事でもないだろう?」
街や村を離れた人通りの少ない場所に盗賊が住み着くのはよくある事だ。
そう言った盗賊が移動中の者を襲い金目な物を奪うからこそ、今回の様に護衛が必要になる。
それもジル一人いれば特に問題にはならないだろう。
「そうなんですけど、その盗賊が中々に厄介だったらしいですよ。襲われてなんとか逃げてきた冒険者達もCランクだったらしいですから。」
冒険者の中ではランク的に真ん中よりも上の方ではある。
イメージとしては中堅どころの冒険者であり、それなりに経験を積んでいるランク帯だ。
「Cランク冒険者に喧嘩を売れる盗賊か。それなりの戦力は持っているかもな。」
「強さは勿論のこと、人族だけでは無く獣人やエルフもいたらしいです。奴隷の首輪を付けていたらしいので無理矢理働かされているのかもしれません。」
「それは厄介だな。」
一般的な盗賊と言えば大半が人族で構成されている。
獣人やエルフがその中に混ざっているなんて滅多に無い事なので普通の盗賊よりも厄介度は高い。
人族に比べて獣人は五感や身体能力に優れており、エルフは魔力が多く魔法や弓の扱いが上手い。
それを考えると普通の盗賊よりもかなり強いかもしれない。
「おそらく奴隷商人でも襲ったのでしょう。トレンフルに近いらしいので、対応は向こうのギルドが引き受けてくれています。」
Cランクの冒険者を襲ったとなるとギルドとしては早めに対処しておきたい。
自衛の出来無い一般人が襲われれば犠牲者がどれだけ増えるか分からない。
「我も手伝いを頼まれたら定期依頼ついでに引き受けるとしよう。」
「ジルさんが手伝ってくれれば助かります。道中はくれぐれも気を付けて下さいね。」
「ああ。」
心配するミラに見送られてギルドを後にした。
門の出口で待ち合わせとなっているので向かうと、シュミットが馬車の傍で待っているのを見つける。
シキ達も遅れず到着していた。
「待たせたな。」
「時間ぴったりや。ジルさん、道中の護衛よろしく頼むで。」
「ああ、よろしくな。」
「ほな早速出発しよか。」
シュミットがそう言って馬車の扉を開いて手招く。
見た目が中々豪華であり、貴族の馬車みたいである。
魔の森で初めて会った時に乗っていた馬車とは大違いだ。
「うわあ、広いのです!」
「これは凄いのう。」
馬車の中に入って開口一番シキとナキナが驚き喜んでいる。
ジルも同様に中に入って驚く。
外から見た何倍もの広さとなっており、扉が複数付いて他にもまだ部屋がある様だ。
「そうやろそうやろ、奮発した甲斐があったってもんや。」
皆の反応を見てシュミットは満足気に頷く。
自分の馬車を褒められて悪い気はしない。
「以前とは違う馬車だな。」
「わいは行商も多いからこの機会に思い切って買ったんや。命の恩人に窮屈な旅はさせられへんからな。」
馬車の中なのにそれなりに良い宿屋の一室並みに広くて住み心地が良さそうである。
これならシュミットの言う様に窮屈な思いなんてしなくてすむだろう。
「それとメイドもおるから何かあれば言ってな。」
シュミットが扉の一つを開けるとメイドが数人待機していた。
依頼主であるのに護衛のジル達の移動が快適になる様にと色々と準備してくれた様だ。
「その代わりに護衛はおらんけどな。」
「馬車が盗まれたらどうするんだ?」
「そうなったら破産やな。」
シュミットが高笑いしながら言った。
実際に盗まれたら全く笑えない損失となるだろう。
「最強の護衛が付いてるんやから問題無いやろ?」
「せいぜい頑張って護衛するとしよう。」
護衛では無くメイドを乗せているのはシュミットが信頼してくれている証だろう。
快適な旅が出来る様にとシュミットが色々してくれたのだ、その行為に報いる為に護衛を頑張ろうと思った。
しかしそれはギルドとしては有り難いがジルの望むところでは無い事はこれまでの付き合いで分かっている。
指名依頼の強制力が働くCランク以上にジルは上がりたいとは思っておらず、勝手にランクを上げれば必ずギルドを去る選択をするとミラは確信していた。
「それじゃあ行ってくる。」
「その前に少しだけいいですか?ちょっと気になる事がありまして。」
「気になる事?」
立ち上がったがミラにそう言われて再び座り直す。
表情が少し真剣なものになっている。
「トレンフルからでは無いのですが、そちらの方角から来られた冒険者が盗賊に襲われたと言っていたんです。」
「盗賊か、別に珍しい事でもないだろう?」
街や村を離れた人通りの少ない場所に盗賊が住み着くのはよくある事だ。
そう言った盗賊が移動中の者を襲い金目な物を奪うからこそ、今回の様に護衛が必要になる。
それもジル一人いれば特に問題にはならないだろう。
「そうなんですけど、その盗賊が中々に厄介だったらしいですよ。襲われてなんとか逃げてきた冒険者達もCランクだったらしいですから。」
冒険者の中ではランク的に真ん中よりも上の方ではある。
イメージとしては中堅どころの冒険者であり、それなりに経験を積んでいるランク帯だ。
「Cランク冒険者に喧嘩を売れる盗賊か。それなりの戦力は持っているかもな。」
「強さは勿論のこと、人族だけでは無く獣人やエルフもいたらしいです。奴隷の首輪を付けていたらしいので無理矢理働かされているのかもしれません。」
「それは厄介だな。」
一般的な盗賊と言えば大半が人族で構成されている。
獣人やエルフがその中に混ざっているなんて滅多に無い事なので普通の盗賊よりも厄介度は高い。
人族に比べて獣人は五感や身体能力に優れており、エルフは魔力が多く魔法や弓の扱いが上手い。
それを考えると普通の盗賊よりもかなり強いかもしれない。
「おそらく奴隷商人でも襲ったのでしょう。トレンフルに近いらしいので、対応は向こうのギルドが引き受けてくれています。」
Cランクの冒険者を襲ったとなるとギルドとしては早めに対処しておきたい。
自衛の出来無い一般人が襲われれば犠牲者がどれだけ増えるか分からない。
「我も手伝いを頼まれたら定期依頼ついでに引き受けるとしよう。」
「ジルさんが手伝ってくれれば助かります。道中はくれぐれも気を付けて下さいね。」
「ああ。」
心配するミラに見送られてギルドを後にした。
門の出口で待ち合わせとなっているので向かうと、シュミットが馬車の傍で待っているのを見つける。
シキ達も遅れず到着していた。
「待たせたな。」
「時間ぴったりや。ジルさん、道中の護衛よろしく頼むで。」
「ああ、よろしくな。」
「ほな早速出発しよか。」
シュミットがそう言って馬車の扉を開いて手招く。
見た目が中々豪華であり、貴族の馬車みたいである。
魔の森で初めて会った時に乗っていた馬車とは大違いだ。
「うわあ、広いのです!」
「これは凄いのう。」
馬車の中に入って開口一番シキとナキナが驚き喜んでいる。
ジルも同様に中に入って驚く。
外から見た何倍もの広さとなっており、扉が複数付いて他にもまだ部屋がある様だ。
「そうやろそうやろ、奮発した甲斐があったってもんや。」
皆の反応を見てシュミットは満足気に頷く。
自分の馬車を褒められて悪い気はしない。
「以前とは違う馬車だな。」
「わいは行商も多いからこの機会に思い切って買ったんや。命の恩人に窮屈な旅はさせられへんからな。」
馬車の中なのにそれなりに良い宿屋の一室並みに広くて住み心地が良さそうである。
これならシュミットの言う様に窮屈な思いなんてしなくてすむだろう。
「それとメイドもおるから何かあれば言ってな。」
シュミットが扉の一つを開けるとメイドが数人待機していた。
依頼主であるのに護衛のジル達の移動が快適になる様にと色々と準備してくれた様だ。
「その代わりに護衛はおらんけどな。」
「馬車が盗まれたらどうするんだ?」
「そうなったら破産やな。」
シュミットが高笑いしながら言った。
実際に盗まれたら全く笑えない損失となるだろう。
「最強の護衛が付いてるんやから問題無いやろ?」
「せいぜい頑張って護衛するとしよう。」
護衛では無くメイドを乗せているのはシュミットが信頼してくれている証だろう。
快適な旅が出来る様にとシュミットが色々してくれたのだ、その行為に報いる為に護衛を頑張ろうと思った。
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