206 / 654
23章
元魔王様と風の姫騎士との再会 1
しおりを挟む
ワイバーンの卵を取りに行ったり魔物の大群から村を救ったりと忙しい日々が過ぎ去り数日が経った。
昨夜早く寝た事もあり、ジルは早朝からスッキリとした目覚めを迎えていた。
階下に降りると女将やリュカは既に働いており、ジルに気付いて朝食を出してくれる。
他の者達はまだ眠っているので先に朝食を食べる。
「おはようなのです…。」
「おはようなのじゃ…。」
朝食を食べていると眠そうに目を擦りながらシキとナキナが階段を降りてくる。
ライムだけは朝から元気で、ナキナの肩から飛び降りてジルの座るテーブルに用意された自分のご飯に飛び付いている。
ライムと言えばまだ覚えていないスキルを持つウルフ種の魔物が手に入ったので変化吸収のスキルを使わせてみた。
それにより統率、駿足、咆撃、狼牙、斬爪と言った5つのスキルを取得する事が出来た。
統率は同種の魔物を率いる時に他者の能力を高める効果がある。
ライムであればスライム種となり、統率個体の様な力を発揮するスキルとなるだろう。
駿足はスキルを発動させると移動速度が上がる。
と言ってもスライムは元々あまり移動が速く無い魔物であり、スキルを使っても人の歩行速度と同じくらいになるだけであった。
そして残りの三つのスキルに関してだが、現状完全な死にスキルである。
ライムには口、牙、爪と言ったものが存在しておらず、検証した結果スキルは発動しなかったのだ。
そもそもスライムが得られるスキルでは無いと言う事もあり、変化吸収と言う特別なスキルを使う事で様々なスキルを得られるが、全てがライムの使えるスキルかと言われればそうでは無いらしい。
「遅いぞお前達。早く食べないと痺れを切らして迎えがくるぞ?」
ジルが眠そうにしている二人に向けて言う。
迎えとはシュミットの事だ。
数日前についに出発の目処がたったからと連絡があったのだ。
そして今日の朝からセダンの街を出る予定だ。
「こんなに朝早くじゃなくてもいいと思うのです。」
「同感なのじゃ。」
二人は眠い目を擦り文句を言いながらも席に着く。
「さて、我は先に食べ終えたしギルドにいってくる。集合場所に遅れるなよ。」
「はーいなのです。」
「了解じゃ。」
二人の眠そうな返事を受けてからジルは一人ギルドに向かう。
珍しく朝早くきたので人が多い。
今回のシュミットの護衛は正式な依頼なので手続きをしにきたのである。
「ジルさん、お待ちしてました。」
嫌々長い列に並ぼうとしているとミラがジルに気付いて駆け寄ってきた。
そのまま受付では無く応接室に通される。
「受付でやらないんだな。」
「領主様からの指名依頼ですからね。あちらは人も多いですから余計な騒ぎに巻き込まれたくないでしょう?」
「確かにな。」
ジルは実力のある冒険者ではあるがDランクで止めているのでランクは低い。
それなのにセダンの街の領主であるトゥーリから指名依頼をもらっていると知れれば冒険者達の間で要らぬ騒ぎを起こす事になるかもしれない。
「依頼内容や報酬について何かありますか?」
「特に無いな。事前に聞いていた通りだ。」
ミラに渡された依頼書を見て答える。
トゥーリと話した時に内容はある程度聞いている。
ジルの無限倉庫のスキルを当てにしているので随分とジルに有利な内容の依頼となっていた。
「それではこちらで手続きしておきますね。それとジルさんは暫く馬車での移動となりますので、ギルドでの定期的な依頼は気にしなくて大丈夫です。」
身分証である冒険者カードの所持には定期的な依頼が義務付けられている。
それを理由無く怠れば剥奪されるのだが、ギルドが事情を把握していれば問題は無い。
「ですがトレンフルに滞在される間は向こうで依頼を受けて下さいね。」
「どれくらいになるかは分からないが滞在はするつもりだからな。その間はしっかりと依頼を受けるつもりだ。」
シュミットにはいくらか滞在すると事前に聞いている。
詳しくはまだ決まっていないが長期間滞在するなら複数回依頼を受ける必要もあるだろう。
それに今回はシュミットの護衛に加えてトレンフルにいく目的であるシキの用事が終わるまで帰れない。
こちらはトゥーリやシュミットにも話しているので問題無い。
「分かってもらえてるなら大丈夫です。それとこちらを向こうのギルドに着いたら渡してもらえますか?」
「手紙?」
「ギルドマスター宛てです。」
「分かった、引き受けよう。」
ギルドには確実に訪れるので大した手間でも無い。
受け取って無限倉庫に仕舞う。
「内容はジルさん達が依頼を受けてもランクアップに反映しない様にと綴ったものです。伝えておかなければ直ぐにでもランクが上がりそうですからね。」
「気が利くな。」
どうやらジルに配慮してトレンフルのギルドに送ってくれる手紙らしい。
昨夜早く寝た事もあり、ジルは早朝からスッキリとした目覚めを迎えていた。
階下に降りると女将やリュカは既に働いており、ジルに気付いて朝食を出してくれる。
他の者達はまだ眠っているので先に朝食を食べる。
「おはようなのです…。」
「おはようなのじゃ…。」
朝食を食べていると眠そうに目を擦りながらシキとナキナが階段を降りてくる。
ライムだけは朝から元気で、ナキナの肩から飛び降りてジルの座るテーブルに用意された自分のご飯に飛び付いている。
ライムと言えばまだ覚えていないスキルを持つウルフ種の魔物が手に入ったので変化吸収のスキルを使わせてみた。
それにより統率、駿足、咆撃、狼牙、斬爪と言った5つのスキルを取得する事が出来た。
統率は同種の魔物を率いる時に他者の能力を高める効果がある。
ライムであればスライム種となり、統率個体の様な力を発揮するスキルとなるだろう。
駿足はスキルを発動させると移動速度が上がる。
と言ってもスライムは元々あまり移動が速く無い魔物であり、スキルを使っても人の歩行速度と同じくらいになるだけであった。
そして残りの三つのスキルに関してだが、現状完全な死にスキルである。
ライムには口、牙、爪と言ったものが存在しておらず、検証した結果スキルは発動しなかったのだ。
そもそもスライムが得られるスキルでは無いと言う事もあり、変化吸収と言う特別なスキルを使う事で様々なスキルを得られるが、全てがライムの使えるスキルかと言われればそうでは無いらしい。
「遅いぞお前達。早く食べないと痺れを切らして迎えがくるぞ?」
ジルが眠そうにしている二人に向けて言う。
迎えとはシュミットの事だ。
数日前についに出発の目処がたったからと連絡があったのだ。
そして今日の朝からセダンの街を出る予定だ。
「こんなに朝早くじゃなくてもいいと思うのです。」
「同感なのじゃ。」
二人は眠い目を擦り文句を言いながらも席に着く。
「さて、我は先に食べ終えたしギルドにいってくる。集合場所に遅れるなよ。」
「はーいなのです。」
「了解じゃ。」
二人の眠そうな返事を受けてからジルは一人ギルドに向かう。
珍しく朝早くきたので人が多い。
今回のシュミットの護衛は正式な依頼なので手続きをしにきたのである。
「ジルさん、お待ちしてました。」
嫌々長い列に並ぼうとしているとミラがジルに気付いて駆け寄ってきた。
そのまま受付では無く応接室に通される。
「受付でやらないんだな。」
「領主様からの指名依頼ですからね。あちらは人も多いですから余計な騒ぎに巻き込まれたくないでしょう?」
「確かにな。」
ジルは実力のある冒険者ではあるがDランクで止めているのでランクは低い。
それなのにセダンの街の領主であるトゥーリから指名依頼をもらっていると知れれば冒険者達の間で要らぬ騒ぎを起こす事になるかもしれない。
「依頼内容や報酬について何かありますか?」
「特に無いな。事前に聞いていた通りだ。」
ミラに渡された依頼書を見て答える。
トゥーリと話した時に内容はある程度聞いている。
ジルの無限倉庫のスキルを当てにしているので随分とジルに有利な内容の依頼となっていた。
「それではこちらで手続きしておきますね。それとジルさんは暫く馬車での移動となりますので、ギルドでの定期的な依頼は気にしなくて大丈夫です。」
身分証である冒険者カードの所持には定期的な依頼が義務付けられている。
それを理由無く怠れば剥奪されるのだが、ギルドが事情を把握していれば問題は無い。
「ですがトレンフルに滞在される間は向こうで依頼を受けて下さいね。」
「どれくらいになるかは分からないが滞在はするつもりだからな。その間はしっかりと依頼を受けるつもりだ。」
シュミットにはいくらか滞在すると事前に聞いている。
詳しくはまだ決まっていないが長期間滞在するなら複数回依頼を受ける必要もあるだろう。
それに今回はシュミットの護衛に加えてトレンフルにいく目的であるシキの用事が終わるまで帰れない。
こちらはトゥーリやシュミットにも話しているので問題無い。
「分かってもらえてるなら大丈夫です。それとこちらを向こうのギルドに着いたら渡してもらえますか?」
「手紙?」
「ギルドマスター宛てです。」
「分かった、引き受けよう。」
ギルドには確実に訪れるので大した手間でも無い。
受け取って無限倉庫に仕舞う。
「内容はジルさん達が依頼を受けてもランクアップに反映しない様にと綴ったものです。伝えておかなければ直ぐにでもランクが上がりそうですからね。」
「気が利くな。」
どうやらジルに配慮してトレンフルのギルドに送ってくれる手紙らしい。
4
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる
竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。
ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする.
モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする.
その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜
北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。
この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。
※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※
カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!!
*毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。*
※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※
表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる