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20章
元魔王様とSランク冒険者 3
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本来であればギルド登録を虚偽のデータで行うなんて許されない行為である。
それはラブリートも理解している。
「報告するか?別にここを去るだけだし我は構わんぞ。」
普通であればそんな不正はギルドに報告するだろう。
そうなれば騒ぎとなって面倒事が降り掛かるのは目に見えているのでジルは街を出るつもりだ。
最悪は国すらも出るかもしれない。
「せっかく面白い子を見つけたんだもの、そんな事しないわよ。」
どうやらギルドへの報告はしないでくれるみたいだ。
中々に気に入られてしまったらしい。
「そうか、我としては助かる。ちなみに鑑定スキルも持っていない事になってるから黙っているなら気を付けてくれ。」
「随分と秘密の多い子ね。」
それを聞いてラブリートは驚いていた。
魔法の適性だけで無くスキルまで偽っているとは思わなかったのだ。
「そうだわ、せっかくだし依頼に少し付き合ってちょうだいよ。」
「口止め代わりか?」
「そんな脅す様な真似しないわよ。面白い子に会えたんだし、もう少し観察したいじゃない?」
脅しとかでは無く純粋にもう少し付き合ってほしいだけの様だ。
「我を珍獣か何かと勘違いしてないか?まあ、急ぐ予定も無いし付き合ってやろう。」
面倒だが報告しないで黙っていてくれるなら多少付き合うくらい構わない。
ジルもラブリートと言う不思議な人物に少し興味が湧いているのだ。
「うふふ、それじゃあ依頼を見てくるわね。」
ジルの言葉を聞いて満足そうな表情を浮かべたラブリートは依頼ボードを物色しにいった。
依頼を選び終わるまで暇なのでミラの下に戻る。
「お帰りなさい。先程のは何だったんですか?」
「…我には冒険者の才能があると褒めてくれたのだ。それと成り行きで共に依頼を受ける事になった。」
魔法の事についてはラブリートも黙ってくれるらしいので誤魔化しておく。
「えっ、ラブリートさんと依頼ですか!?凄いじゃないですか!」
ミラはその言葉を聞いて心の底から驚いている様子だ。
ジルは知らなかったがミラはラブリートが誰かと依頼している光景なんて暫く見た記憶が無かった。
「そうなのか?何なのだあのおと…。」
「ストーーーップ!」
ミラは大きな声を上げながらジルの口を両手で押さえ付けてその先の発言を止める。
どこかで見たのと同じくらい反応速度が凄まじい。
どことなくその表情からは必死さを感じる。
「…何をする。そして近いぞ。」
目の前にまで迫ったミラの顔を見ながら言う。
前のめりになったミラに口を押さえられているので顔が至近距離まで寄せられている。
「ジルさん、今禁句を口にしようとしましたね?」
「禁句?」
ジルが何の事を言っているのか分かっていないのを見て、ミラがラブリートの位置を確認する。
まだ依頼ボードの側で依頼を探しているので受付からは離れている。
「男って言おうとしてましたよね?」
離れていても警戒する様にかなりの小声でジルに尋ねてくる。
顔が近いのにギリギリ聞こえるかと言ったレベルだ。
「それが禁句なのか?」
「ぜっっったいに本人の耳に入りそうな場所で言ったら駄目ですよ!」
相変わらずの小声だがその表情からは物凄い圧を感じる。
それだけこの言葉を言わせたくないのだろう。
「言うとどうなるんだ?」
そこまで言われると逆に少し気になってしまう。
「ジルさんでも無事じゃすまないかもしれません。と言うかラブリートさんの名前を聞いた事が無いんですか?」
「無いな。」
ミラの口ぶりから名の知れた冒険者なのは分かる。
しかしそんな人族の常識は魔王から転生したジルには備わっていない。
「ジルさんも冒険者なのに…。いいですか、ラブリートさんはセダンの誇る最強の冒険者、Sランクの冒険者なんです。」
あの変な見た目からは想像出来無いがどうやらとんでもない人物らしい。
「Sランクと言うと冒険者の頂点か。」
複数あるランクの中で最も高いのがSランクである。
ギルドに所属する数多くの冒険者達の頂点となるランク帯となっている。
「そうです。冒険者の数はとても多いですが、その中でも一握りの方しかなれないランクです。この国だけで見ても片手で数えられるくらいしかいないです。」
ギルドの最高ランクであるSランクともなると、国単位で見ても最高戦力と言える程のものだ。
人外、化け物、規格外、そう言った者しか辿り着けないのがSランクと言う最高峰なのである。
「そんな大物だったとはな。」
ミラの説明を聞いてもそれが大袈裟だとは思わない。
魔王時代にもSランクの冒険者には何度も国を攻められた。
異世界から召喚された勇者クラスの実力者が多く、配下の者達は苦戦させられたものだ。
「ラブリートさんを怒らせるとその力が向かってくると思って下さい。ちなみにラブリートさんは闘姫と言う二つ名で有名で、冒険者界隈では知らない人なんて殆どいないんですよ。」
二つ名は高ランクの冒険者を表す別名である。
戦い方や目立つ得物を持っていれば、そこから周りに認知されて呼ばれ始めるのだ。
冒険者では無いがシキの前契約者であるブリジットも二つ名を持っていたりした。
「覚えておくとしよう。」
ジルは忠告を聞いた上で改めて万能鑑定をラブリートに使った。
それはラブリートも理解している。
「報告するか?別にここを去るだけだし我は構わんぞ。」
普通であればそんな不正はギルドに報告するだろう。
そうなれば騒ぎとなって面倒事が降り掛かるのは目に見えているのでジルは街を出るつもりだ。
最悪は国すらも出るかもしれない。
「せっかく面白い子を見つけたんだもの、そんな事しないわよ。」
どうやらギルドへの報告はしないでくれるみたいだ。
中々に気に入られてしまったらしい。
「そうか、我としては助かる。ちなみに鑑定スキルも持っていない事になってるから黙っているなら気を付けてくれ。」
「随分と秘密の多い子ね。」
それを聞いてラブリートは驚いていた。
魔法の適性だけで無くスキルまで偽っているとは思わなかったのだ。
「そうだわ、せっかくだし依頼に少し付き合ってちょうだいよ。」
「口止め代わりか?」
「そんな脅す様な真似しないわよ。面白い子に会えたんだし、もう少し観察したいじゃない?」
脅しとかでは無く純粋にもう少し付き合ってほしいだけの様だ。
「我を珍獣か何かと勘違いしてないか?まあ、急ぐ予定も無いし付き合ってやろう。」
面倒だが報告しないで黙っていてくれるなら多少付き合うくらい構わない。
ジルもラブリートと言う不思議な人物に少し興味が湧いているのだ。
「うふふ、それじゃあ依頼を見てくるわね。」
ジルの言葉を聞いて満足そうな表情を浮かべたラブリートは依頼ボードを物色しにいった。
依頼を選び終わるまで暇なのでミラの下に戻る。
「お帰りなさい。先程のは何だったんですか?」
「…我には冒険者の才能があると褒めてくれたのだ。それと成り行きで共に依頼を受ける事になった。」
魔法の事についてはラブリートも黙ってくれるらしいので誤魔化しておく。
「えっ、ラブリートさんと依頼ですか!?凄いじゃないですか!」
ミラはその言葉を聞いて心の底から驚いている様子だ。
ジルは知らなかったがミラはラブリートが誰かと依頼している光景なんて暫く見た記憶が無かった。
「そうなのか?何なのだあのおと…。」
「ストーーーップ!」
ミラは大きな声を上げながらジルの口を両手で押さえ付けてその先の発言を止める。
どこかで見たのと同じくらい反応速度が凄まじい。
どことなくその表情からは必死さを感じる。
「…何をする。そして近いぞ。」
目の前にまで迫ったミラの顔を見ながら言う。
前のめりになったミラに口を押さえられているので顔が至近距離まで寄せられている。
「ジルさん、今禁句を口にしようとしましたね?」
「禁句?」
ジルが何の事を言っているのか分かっていないのを見て、ミラがラブリートの位置を確認する。
まだ依頼ボードの側で依頼を探しているので受付からは離れている。
「男って言おうとしてましたよね?」
離れていても警戒する様にかなりの小声でジルに尋ねてくる。
顔が近いのにギリギリ聞こえるかと言ったレベルだ。
「それが禁句なのか?」
「ぜっっったいに本人の耳に入りそうな場所で言ったら駄目ですよ!」
相変わらずの小声だがその表情からは物凄い圧を感じる。
それだけこの言葉を言わせたくないのだろう。
「言うとどうなるんだ?」
そこまで言われると逆に少し気になってしまう。
「ジルさんでも無事じゃすまないかもしれません。と言うかラブリートさんの名前を聞いた事が無いんですか?」
「無いな。」
ミラの口ぶりから名の知れた冒険者なのは分かる。
しかしそんな人族の常識は魔王から転生したジルには備わっていない。
「ジルさんも冒険者なのに…。いいですか、ラブリートさんはセダンの誇る最強の冒険者、Sランクの冒険者なんです。」
あの変な見た目からは想像出来無いがどうやらとんでもない人物らしい。
「Sランクと言うと冒険者の頂点か。」
複数あるランクの中で最も高いのがSランクである。
ギルドに所属する数多くの冒険者達の頂点となるランク帯となっている。
「そうです。冒険者の数はとても多いですが、その中でも一握りの方しかなれないランクです。この国だけで見ても片手で数えられるくらいしかいないです。」
ギルドの最高ランクであるSランクともなると、国単位で見ても最高戦力と言える程のものだ。
人外、化け物、規格外、そう言った者しか辿り着けないのがSランクと言う最高峰なのである。
「そんな大物だったとはな。」
ミラの説明を聞いてもそれが大袈裟だとは思わない。
魔王時代にもSランクの冒険者には何度も国を攻められた。
異世界から召喚された勇者クラスの実力者が多く、配下の者達は苦戦させられたものだ。
「ラブリートさんを怒らせるとその力が向かってくると思って下さい。ちなみにラブリートさんは闘姫と言う二つ名で有名で、冒険者界隈では知らない人なんて殆どいないんですよ。」
二つ名は高ランクの冒険者を表す別名である。
戦い方や目立つ得物を持っていれば、そこから周りに認知されて呼ばれ始めるのだ。
冒険者では無いがシキの前契約者であるブリジットも二つ名を持っていたりした。
「覚えておくとしよう。」
ジルは忠告を聞いた上で改めて万能鑑定をラブリートに使った。
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