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11章

元魔王様と一流の鍛治師 2

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 しかしジル達が無事に戻ってきたのでそれも杞憂に終わった。

「我がオーク如きに返り討ちにされる訳が無いだろう。」

 ミラの言葉を聞いたジルが呆れた様に言う。

「そっちでは無いですよ!ついでに受けた依頼じゃないですか!」

「何の事か分からんな。それより手続きを頼むぞ。」

 あくまでもそう言う体裁を崩さずにオークの魔石を取り出して置く。

「はぁ、それでコカトリスは狩れたんですか?」

 呆れながらもオークの魔石を受け取って依頼の処理をしながらミラが尋ねる。

「ああ、オーク討伐の邪魔をしてきたのでな。」

「やっぱり倒してるじゃないですか!それと疲れるのでもう誤魔化さなくていいですよ。」

 ジルとのやり取りで疲れたミラがそう言う。
出会った頃からずっと驚かされてきたが、難無く高ランクの依頼の討伐対象まで倒してきたと聞いて、つくづく規格外だと思い知らされた。

「ジル様、コカトリスは売るのです?」

「持ってきてるんですか!?」

 シキの言葉を聞いたミラがズイッと顔を近付けて尋ねる。
高ランクの素材なのでギルドとしては売ってもらえるなら是非買い取りたい。

「み、ミラ、怖いのです。」

 突然顔が目の前にきたので、シキは小さな手で押し返しながら言う。

「す、すみませんでした。貴重な魔物の素材でしたので。」

 冒険者は上のランクにいく程、ピラミッド状に人が少なくなっていく。
なので高ランクの依頼は低ランクの依頼と違って直ぐに無くなっていく訳ではなく、高ランクの素材も手に入りにくいのだ。

「売るつもりだったから、解体はしていないが持ってきてはいるぞ。」

 元々解体出来る者がいないので解体はギルド任せである。
解体費用として多少金が掛かるが、労力を割いたり素材を無駄にしない事を考えると任せるのが一番楽なのだ。

「こちらとしては売っていただけるのならば助かります。」

 依頼では無いので報酬は出ないが買い取りとしてのお金は発生する。
コカトリスは高ランクなので大金が期待出来る。

「なら早速向かうか。」

「あ、ジルさんちょっと待ってください。」

 解体場所にコカトリスを出しにいこうとしたらミラに止められる。

「その前にお伝えしたい事がありまして。頼まれていたミスリル鉱石の件なんですけど。」

 ミラがキョロキョロと周りを見回して確認し、小声でジルに言ってくる。
無限倉庫のスキルの中に大量に入っていたミスリル鉱石の卸先を探してもらっていた件である。

「もう見つかったのか?」

「見つかったと言っていいのか悩ましいのですが…。」

 ミラははっきりとしない様子で言う。

「なんだ?値切り交渉でもされてるのか?」

 ミラ曰くジルの持つミスリル鉱石は純度が高く、かなり高い値段で取り引き出来るらしいので、買い手としては安く仕入れたいと考えても不思議では無い。

「いえ、そもそも売買の話しすらしていません。ジルさんに頼まれてから、セダンにある武器屋を幾つか回ったんです。そしたらその内の一つである鍛治師に鉱石の事を尋ねられまして。」

 目利きに長けていたのか、見た瞬間に目の色を変えて尋ねてきたらしい。

「入手経路とかか?」

「いえ、持ち主はお前かと聞かれただけです。否定したら持ち主に会わせろと言われまして。なので直接聞いて下さい。」

 そう言ってミラが立ち上がる。

「どこにいるんだ?」

「酒場でずっと待ってますよ。」

 そう言ってギルド内の酒場の方を指差す。
昼過ぎだと言っても食事や酒目当てで何人かの客はいる。

「一応それなりに時間の掛かる依頼だぞ?ずっと待っていたのか?」

 移動で数日使う依頼なのだ。
ギルドで帰りを待っているのは現実的では無い。

「そう話したのですが直ぐに会える様に酒場で待っていると言って、三日程酒場にいますね。」

「三日なのです!?」

 それを聞いてシキが驚いている。
あんな騒がしくて酒臭い場所に三日もいられるとは、ジルとしても驚きである。

「酒場はずっと開いてますからね。お金さえ払えるのなら誰も文句は言いません。」

 金さえあれば客なので席をずっと占領していても追い出される事は無いのだ。

「それにしても待ち過ぎだろう。」

「規格外のジルさん達なら直ぐに帰ってくる可能性もありましたからね。本人が待つと言っているのなら、私に何か言う権利はありませんし。」

 ジルならば片道数日の距離もなんとかして、直ぐに帰ってくるのではないかとミラは思っていた。
それも含めて遅いのではと言う心配でもあったのだ。
そしてそれは中々に鋭い意見であり、実際に魔法で移動する事により爆速での移動を可能としていた。

「ならば早速会うとするか。」

「あのミスリル鉱石の話しなので、一応奥の部屋を使ってもらってもいいですか?」

 ギルド内は少ないと言っても人はいる。
騒ぎを大きくしたくないミラとしては、応接室の方で話してほしい様だ。

「分かった。」

「私が呼んできますから、中で待っていてください。」

 そう言ってミラが酒場の方に向かっていったので、ジル達は部屋で待つ事にして先に応接室に入った。
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