20 / 651
2章
元魔王様と人族の街 10
しおりを挟む
ミラに声を掛けてきたのは、上階から階段を降りてきている最中のエルフであった。
「ギルドマスター!お疲れ様です。」
「冒険者ギルドの責任者か。」
ミラに挨拶されたエルフはギルドマスターらしい。
見た目は20歳後半に見える美形の男性だが、エルフは長命種なので見た目はあてにならない。
万能鑑定を使ってみると500歳を優に超えていた。
そしてエルロッドは道具鑑定のスキルを持っていたので、これを使ってジルを調べたと思われる。
魔法道具の類を身に付けていないので疑いは晴れた様だ。
「うむ、ギルドマスターをしておるエルロッドじゃ。ギルドの者達が世話になったようじゃな。」
演習場の一件について言っているのだろう。
ジル以外にもランク選定試験を受けにきた新人冒険者はいたので、そこから話が伝わったのかもしれない。
「試験官と名乗らせるならば、もう少し実力者を用意するといい。」
「ちょ、ちょっとジルさん!?」
ジルは自身の力を把握する為にも実力者との戦闘を期待していたが、物足りない結果だったので素直にエルロッドに伝えた。
それを見たミラは慌てている。
立場的にも年齢的にも目上のギルドマスターに対して、こんな態度を取る者は滅多にいないのだろう。
「ほっほっほ、構わんよミラ。ジルと言ったな、普通の新人冒険者を相手取るならば、あれくらいの実力があれば充分なのじゃよ。」
エルロッドはあまりジルの発言を気にしてはいない様だ。
冒険者の相手となれば、敬語も知らない者が多いので慣れているのだろう。
「そうだったか、我は少し物足りなかったが。」
「お前さんを普通とは言えんよ。試験官全員を相手取って負かす新人冒険者などそうおらん。」
ジルは自分が相当弱体化していると神々に聞かされていたが、元々のスペックが高過ぎた。
それこそ神の領域に踏み込む程の実力だったので、弱体化したと言っても人族の中では最強クラスである。
「ふむ、そう言うものか。」
「それよりもギルドマスター、何か用事があって来られたのでは?」
普段エルロッドが階下に降りてくる事は珍しいので、何かあったのではとミラは考える。
「試験官全員が倒れておるからの、試験官の代わりにジルのランク選定試験についてじゃ。」
そう言ってエルロッドがランク選定試験の結果について話してくれた。
当然試験官を倒す程の実力なので、文句無しの最高評価を貰えた。
そしてDランク相当の実力者達を一人で軽々と倒してしまえる程の強さであれば、BランクやCランクに相当する。
だがランク選定試験では、E、F、Gの中で割り振られるので、ジルの結果はEランクとなった。
上のランクには数々の依頼をこなした実績や依頼の中でも高難度の護衛依頼等を成し遂げなければ上がれない決まりもあるので、上げたくても簡単に上げられないのだ。
「つまり我はEランクになったと言う事か。」
冒険者の中では初心者から抜けたところと言ったランク帯である。
「不満かの?」
「ランクは別にどうでもいい。身分証を得る事が目的なのだからな。」
冒険者は早くランクを上げて報酬の良い依頼を受けたがるので、エルロッドはジルに何か言われる事も覚悟していたのだが、ジルは目的が達せられるならば問題無い。
「そうじゃったか、それはこちらとしても助かるわい。ミラよ、早速手続きをしてくれるかの?」
「分かりました、冒険者カードをお借りしますねジルさん。」
ミラはジルから冒険者カードを受け取ると奥の扉に消えた。
「どうかしたか?」
ミラがいなくなってからエルロッドがずっと見てくる。
何かと比較するかの様に全身見回しては首を傾げているのだ。
「ふむ、何やら懐かしい気配を感じた気がしたのじゃが、気のせいみたいじゃ。手間を取らせて悪かったの。」
エルロッドの言葉を聞いて一瞬元魔王とバレたかと思ったが大丈夫そうであった。
魔王の面影は微塵も残っていないのでそう簡単にはバレない筈だ。
エルロッドかは分からないが魔王時代にもエルフと出会った事は何度もある。
しかし数百年も前の話しなのと毎回自己紹介していた訳では無いので、全員覚えている訳では無い。
「別に構わんぞ。」
「お主程の者ならば、ギルドマスターとして依頼する事もあるじゃろう。その時は頼まれてくれ。」
ギルド側からも高ランクの冒険者を直接指名して依頼をする事がある。
ジルのランクは低いが高ランクの冒険者達と実力は変わらないので、頼まれにくいが零では無い。
「状況によるとだけ言っておく。」
自由気ままな二度目の人生は思うがままに生きようと決めているので、依頼を受けるかは気分次第である。
その返答でも満足したのかエルロッドは階段を上がって二階に戻っていった。
そしてミラにランクの書かれたカードを貰い、目的も果たしたので美味い食事でも食べようと冒険者ギルドを後にした。
「ギルドマスター!お疲れ様です。」
「冒険者ギルドの責任者か。」
ミラに挨拶されたエルフはギルドマスターらしい。
見た目は20歳後半に見える美形の男性だが、エルフは長命種なので見た目はあてにならない。
万能鑑定を使ってみると500歳を優に超えていた。
そしてエルロッドは道具鑑定のスキルを持っていたので、これを使ってジルを調べたと思われる。
魔法道具の類を身に付けていないので疑いは晴れた様だ。
「うむ、ギルドマスターをしておるエルロッドじゃ。ギルドの者達が世話になったようじゃな。」
演習場の一件について言っているのだろう。
ジル以外にもランク選定試験を受けにきた新人冒険者はいたので、そこから話が伝わったのかもしれない。
「試験官と名乗らせるならば、もう少し実力者を用意するといい。」
「ちょ、ちょっとジルさん!?」
ジルは自身の力を把握する為にも実力者との戦闘を期待していたが、物足りない結果だったので素直にエルロッドに伝えた。
それを見たミラは慌てている。
立場的にも年齢的にも目上のギルドマスターに対して、こんな態度を取る者は滅多にいないのだろう。
「ほっほっほ、構わんよミラ。ジルと言ったな、普通の新人冒険者を相手取るならば、あれくらいの実力があれば充分なのじゃよ。」
エルロッドはあまりジルの発言を気にしてはいない様だ。
冒険者の相手となれば、敬語も知らない者が多いので慣れているのだろう。
「そうだったか、我は少し物足りなかったが。」
「お前さんを普通とは言えんよ。試験官全員を相手取って負かす新人冒険者などそうおらん。」
ジルは自分が相当弱体化していると神々に聞かされていたが、元々のスペックが高過ぎた。
それこそ神の領域に踏み込む程の実力だったので、弱体化したと言っても人族の中では最強クラスである。
「ふむ、そう言うものか。」
「それよりもギルドマスター、何か用事があって来られたのでは?」
普段エルロッドが階下に降りてくる事は珍しいので、何かあったのではとミラは考える。
「試験官全員が倒れておるからの、試験官の代わりにジルのランク選定試験についてじゃ。」
そう言ってエルロッドがランク選定試験の結果について話してくれた。
当然試験官を倒す程の実力なので、文句無しの最高評価を貰えた。
そしてDランク相当の実力者達を一人で軽々と倒してしまえる程の強さであれば、BランクやCランクに相当する。
だがランク選定試験では、E、F、Gの中で割り振られるので、ジルの結果はEランクとなった。
上のランクには数々の依頼をこなした実績や依頼の中でも高難度の護衛依頼等を成し遂げなければ上がれない決まりもあるので、上げたくても簡単に上げられないのだ。
「つまり我はEランクになったと言う事か。」
冒険者の中では初心者から抜けたところと言ったランク帯である。
「不満かの?」
「ランクは別にどうでもいい。身分証を得る事が目的なのだからな。」
冒険者は早くランクを上げて報酬の良い依頼を受けたがるので、エルロッドはジルに何か言われる事も覚悟していたのだが、ジルは目的が達せられるならば問題無い。
「そうじゃったか、それはこちらとしても助かるわい。ミラよ、早速手続きをしてくれるかの?」
「分かりました、冒険者カードをお借りしますねジルさん。」
ミラはジルから冒険者カードを受け取ると奥の扉に消えた。
「どうかしたか?」
ミラがいなくなってからエルロッドがずっと見てくる。
何かと比較するかの様に全身見回しては首を傾げているのだ。
「ふむ、何やら懐かしい気配を感じた気がしたのじゃが、気のせいみたいじゃ。手間を取らせて悪かったの。」
エルロッドの言葉を聞いて一瞬元魔王とバレたかと思ったが大丈夫そうであった。
魔王の面影は微塵も残っていないのでそう簡単にはバレない筈だ。
エルロッドかは分からないが魔王時代にもエルフと出会った事は何度もある。
しかし数百年も前の話しなのと毎回自己紹介していた訳では無いので、全員覚えている訳では無い。
「別に構わんぞ。」
「お主程の者ならば、ギルドマスターとして依頼する事もあるじゃろう。その時は頼まれてくれ。」
ギルド側からも高ランクの冒険者を直接指名して依頼をする事がある。
ジルのランクは低いが高ランクの冒険者達と実力は変わらないので、頼まれにくいが零では無い。
「状況によるとだけ言っておく。」
自由気ままな二度目の人生は思うがままに生きようと決めているので、依頼を受けるかは気分次第である。
その返答でも満足したのかエルロッドは階段を上がって二階に戻っていった。
そしてミラにランクの書かれたカードを貰い、目的も果たしたので美味い食事でも食べようと冒険者ギルドを後にした。
4
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
怠惰生活希望の第六王子~悪徳領主を目指してるのに、なぜか名君呼ばわりされているんですが~
服田 晃和
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた男──久岡達夫は、同僚の尻拭いによる三十連勤に体が耐え切れず、その短い人生を過労死という形で終えることとなった。
最悪な人生を送った彼に、神が与えてくれた二度目の人生。
今度は自由気ままな生活をしようと決意するも、彼が生まれ変わった先は一国の第六王子──アルス・ドステニアだった。当初は魔法と剣のファンタジー世界に転生した事に興奮し、何でも思い通りに出来る王子という立場も気に入っていた。
しかし年が経つにつれて、激化していく兄達の跡目争いに巻き込まれそうになる。
どうにか政戦から逃れようにも、王子という立場がそれを許さない。
また俺は辛い人生を送る羽目になるのかと頭を抱えた時、アルスの頭に一つの名案が思い浮かんだのだ。
『使えない存在になれば良いのだ。兄様達から邪魔者だと思われるようなそんな存在になろう!』
こうしてアルスは一つの存在を目指すことにした。兄達からだけではなく国民からも嫌われる存在。
『ちょい悪徳領主』になってやると。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる