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2章
元魔王様と人族の街 4
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少し歩くと冒険者ギルドと書かれた看板が見えてきた。
もう直ぐ日が沈む時間帯と言う事もあり、ギルドに近付くに連れて冒険者が増えてくる。
依頼を終えた冒険者達もギルドに向かっているのだ。
ギルドの中に入ると広々とした作りになっており、見渡す限り冒険者ばかりであった。
酒場のスペースが中に設けられている事もあり、とても賑わっている。
「ここが受付でいいのか?」
前世を含めて冒険者ギルドに入ったのは初めてなので利用方法を知らない。
一先ず他の冒険者達に習って、複数の女性が並んで座っている窓口の中の空いている場所に近付いて話し掛けてみた。
「はい、ようこそ冒険者ギルドへ。依頼の発注でしょうか?」
長い茶色の髪が特徴的な若い人族の女性が微笑みながら尋ねてきた。
冒険者の看板とも言える受付嬢だけあって、容姿はかなり優れている。
「いや、冒険者になりたいのだが。」
「えっ?冒険者ですか?」
ジルの言葉に受付嬢は少し驚いた様に聞き返してくる。
「何か変な事を言ったか?」
冒険者ギルドに来て冒険者になるのは普通の事だろう。
今の発言に何か不自然なところがあったかとジルは疑問に思う。
「いえ、何も問題ありません。気分を悪くされたのなら申し訳ありませんでした。」
受付嬢が深々と頭を下げながら謝ってくる。
「謝る事なんかねーだろ、ミラちゃん。そいつ弱そうだもんな。」
「ん?」
後ろを振り向くとジルの背丈を軽く上回る大男が立っていた。
頬が赤くなって少しフラフラしており、酔っ払っているのは一目瞭然だ。
「おいガキ。てめえ冒険者になりてーんだってな。」
酔っ払っていても冒険者として培った実力があるのか、中々の迫力である。
子供であれば泣いて逃げ出しそうなレベルだ。
「そうだが、何か用か?」
「てめえみてえな弱そうな奴が冒険者だと?笑わせるな。冒険者になっても直ぐ死にそうだから、優しいミラちゃんは気にしてんだよ。」
先程依頼を出す側だと勘違いしたのは、ジルが戦える様には見えなかったからだと、目の前にいる酔っ払いの冒険者が言う。
確かに自分的にも見た目からは強そうには見えないし、武器も所持していないので、そう見られるのも納得であった。
「ふむ、特に問題は無い。手続きを頼む。」
ジルは受付嬢に向き直って話しの続きに入る。
強そうに見られていない事は分かったが、特に気にする事は無い。
冒険者となって身分証を手に入れるのが目的なのだ。
「おい、俺を無視してんじゃねーぞ。ガキは帰って寝てろ。」
無視された大男は怒りながらジルに手を伸ばしてきた。
「邪魔をするな酔っ払い。」
ジルは伸ばされた大男の腕を掴み、片手で持ち上げて軽く床に投げてやる。
怪我をさせるつもりは無いので、力は殆ど入れていない。
冒険者は背中から床に叩き付けられた様に見えるが、特に痛がっている様子も無い。
だが大男に比べて小さなジルが投げ飛ばした異様な光景に、周りの皆は目を丸くしていた。
「さて、続きを頼もう。」
ある程度の実力の持ち主ならば、今ので実力差を理解して引くだろうとジルは判断した。
「それは構わないのですが…。」
受付嬢であるミラの視線の先では、大男が起き上がっていた。
そしてジルを怒りの形相で睨み付けている。
「なんだ、まだやるのか?」
「ガキに舐められたまま引き下がれるか!」
大男は再びジルに迫り、丸太の様な太い腕を唸らせて、拳をジルに叩き込んでくる。
だがジルはその拳を難無く片手で受け止めて、反撃として大男の額にデコピンをしてやる。
「ゴハッ!?」
この世界には無いが、まるで銃で撃たれたかの様な音が響き、大男は後ろに吹き飛ばされた。
見た目からはとても強そうには見えないジルなので、そんな行動一つ一つに周りが驚愕している。
「これで大人しくなるだろう。」
先程とは違いそれなりに痛みを与えた。
これで実力差は嫌でも理解した筈だ。
「今回は全面的にお相手が悪いので構いませんが、冒険者同士の諍いとなるとギルドからの評価が下がります。冒険者になってからは自重する様にして下さいね。」
ミラはこれから冒険者になるジルに説明する。
どうしても血の気の多い冒険者は一定数いるので争い事は絶えない。
ギルドとしても罰を与えて抑制に努めているのだが、現状を見れば焼け石に水だろう。
そして話しの通りだとすれば大男はギルドから処罰が下されるだろう。
「善処しよう。」
そう口では言っておくが穏便に済ませられないのであれば、やられたらやり返すつもりである。
「おい、ガキ。」
声の方に振り向くと大男が懲りずに立ち上がっており、それを見たジルはうんざりとした気持ちになる。
「まだ邪魔するか?」
大男の額から血は流れていないが、痛々しい程赤々と腫れている。
そんな怪我を負わせたのに引き下がるつもりは無いらしい。
「感謝するぜ、おかげで酔いが覚めたからな。」
痛みで酔いが覚めたと言う大男は、不敵な笑みを浮かべながら腰の得物を抜く。
かなり使い込まれているロングソードだ。
「ちょ、ちょっと困ります!?冒険者ギルド内での刀傷沙汰なんて!?」
それを見たミラは慌てている。
まさか冒険者ギルド内での揉め事に、武器まで持ち出すとは思わなかったのだ。
もう直ぐ日が沈む時間帯と言う事もあり、ギルドに近付くに連れて冒険者が増えてくる。
依頼を終えた冒険者達もギルドに向かっているのだ。
ギルドの中に入ると広々とした作りになっており、見渡す限り冒険者ばかりであった。
酒場のスペースが中に設けられている事もあり、とても賑わっている。
「ここが受付でいいのか?」
前世を含めて冒険者ギルドに入ったのは初めてなので利用方法を知らない。
一先ず他の冒険者達に習って、複数の女性が並んで座っている窓口の中の空いている場所に近付いて話し掛けてみた。
「はい、ようこそ冒険者ギルドへ。依頼の発注でしょうか?」
長い茶色の髪が特徴的な若い人族の女性が微笑みながら尋ねてきた。
冒険者の看板とも言える受付嬢だけあって、容姿はかなり優れている。
「いや、冒険者になりたいのだが。」
「えっ?冒険者ですか?」
ジルの言葉に受付嬢は少し驚いた様に聞き返してくる。
「何か変な事を言ったか?」
冒険者ギルドに来て冒険者になるのは普通の事だろう。
今の発言に何か不自然なところがあったかとジルは疑問に思う。
「いえ、何も問題ありません。気分を悪くされたのなら申し訳ありませんでした。」
受付嬢が深々と頭を下げながら謝ってくる。
「謝る事なんかねーだろ、ミラちゃん。そいつ弱そうだもんな。」
「ん?」
後ろを振り向くとジルの背丈を軽く上回る大男が立っていた。
頬が赤くなって少しフラフラしており、酔っ払っているのは一目瞭然だ。
「おいガキ。てめえ冒険者になりてーんだってな。」
酔っ払っていても冒険者として培った実力があるのか、中々の迫力である。
子供であれば泣いて逃げ出しそうなレベルだ。
「そうだが、何か用か?」
「てめえみてえな弱そうな奴が冒険者だと?笑わせるな。冒険者になっても直ぐ死にそうだから、優しいミラちゃんは気にしてんだよ。」
先程依頼を出す側だと勘違いしたのは、ジルが戦える様には見えなかったからだと、目の前にいる酔っ払いの冒険者が言う。
確かに自分的にも見た目からは強そうには見えないし、武器も所持していないので、そう見られるのも納得であった。
「ふむ、特に問題は無い。手続きを頼む。」
ジルは受付嬢に向き直って話しの続きに入る。
強そうに見られていない事は分かったが、特に気にする事は無い。
冒険者となって身分証を手に入れるのが目的なのだ。
「おい、俺を無視してんじゃねーぞ。ガキは帰って寝てろ。」
無視された大男は怒りながらジルに手を伸ばしてきた。
「邪魔をするな酔っ払い。」
ジルは伸ばされた大男の腕を掴み、片手で持ち上げて軽く床に投げてやる。
怪我をさせるつもりは無いので、力は殆ど入れていない。
冒険者は背中から床に叩き付けられた様に見えるが、特に痛がっている様子も無い。
だが大男に比べて小さなジルが投げ飛ばした異様な光景に、周りの皆は目を丸くしていた。
「さて、続きを頼もう。」
ある程度の実力の持ち主ならば、今ので実力差を理解して引くだろうとジルは判断した。
「それは構わないのですが…。」
受付嬢であるミラの視線の先では、大男が起き上がっていた。
そしてジルを怒りの形相で睨み付けている。
「なんだ、まだやるのか?」
「ガキに舐められたまま引き下がれるか!」
大男は再びジルに迫り、丸太の様な太い腕を唸らせて、拳をジルに叩き込んでくる。
だがジルはその拳を難無く片手で受け止めて、反撃として大男の額にデコピンをしてやる。
「ゴハッ!?」
この世界には無いが、まるで銃で撃たれたかの様な音が響き、大男は後ろに吹き飛ばされた。
見た目からはとても強そうには見えないジルなので、そんな行動一つ一つに周りが驚愕している。
「これで大人しくなるだろう。」
先程とは違いそれなりに痛みを与えた。
これで実力差は嫌でも理解した筈だ。
「今回は全面的にお相手が悪いので構いませんが、冒険者同士の諍いとなるとギルドからの評価が下がります。冒険者になってからは自重する様にして下さいね。」
ミラはこれから冒険者になるジルに説明する。
どうしても血の気の多い冒険者は一定数いるので争い事は絶えない。
ギルドとしても罰を与えて抑制に努めているのだが、現状を見れば焼け石に水だろう。
そして話しの通りだとすれば大男はギルドから処罰が下されるだろう。
「善処しよう。」
そう口では言っておくが穏便に済ませられないのであれば、やられたらやり返すつもりである。
「おい、ガキ。」
声の方に振り向くと大男が懲りずに立ち上がっており、それを見たジルはうんざりとした気持ちになる。
「まだ邪魔するか?」
大男の額から血は流れていないが、痛々しい程赤々と腫れている。
そんな怪我を負わせたのに引き下がるつもりは無いらしい。
「感謝するぜ、おかげで酔いが覚めたからな。」
痛みで酔いが覚めたと言う大男は、不敵な笑みを浮かべながら腰の得物を抜く。
かなり使い込まれているロングソードだ。
「ちょ、ちょっと困ります!?冒険者ギルド内での刀傷沙汰なんて!?」
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