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隣国エテルカールトン
偵察
しおりを挟む「ギル、どう思う?」
「ん?如何とはなんだ?」
「…全く何も考えてないのね」
最近出来たと言うダンジョンの視察と銘打ってわざわざ5日かけてエレファンスへ偵察に来たのだが、人が多すぎて偵察どころではないのが現状だ。
エレファンスにはこれまで一つもダンジョンが無かった為、冒険者ギルドはかろうじて存在しているものの、これまでギルドが請け負うって来た仕事は街の雑用が殆どで、当然常駐しているスタッフもそう言った仕事ばかりを回していたものだから、突然ダンジョン品の買取や査定、出現する魔物の情報、資料の販売、踏破情報や地図の作成依頼、またその販売、などダンジョン都市レベルの対応を求められても出来ない。
それだけではない。元々そう言う街ではなかった為、突然沢山の冒険者、商人、観光客が集まっても、宿泊施設だけでなくレストランやカフェ、防具・武器屋などの施設や役所も販売許可証の発行や空き家紹介、観光産業の事前抽選など受け入れる器がまだ出来上がっていない。
全て手が回らないほど人で溢れかえってしまっているだろうとギルドの責任者としてギルゲインとマーサはエレファンスへ数人のベテラン受付達を引き連れて赴いたのだが、驚くべき事に既に街は出来上がっていたのだ。
「上流階級、中流階級、下流階級、上級冒険者、下級冒険者…とそれぞれ価格層をきちんと分けた設定で新しい宿泊施設5軒。同じ価格設定のレストランが10軒。それも王都で有名なレストランまである」
「この店田舎の街とは思えないくらいに品揃えなかなか良いな。…親父これはいくらだ?」
「んあ?…あぁ、それは金貨3枚だな」
「しかも、安い!」
ダンジョンが出来ることを知っていて事前に準備していたとしか思えない。
が、それを言った所で混乱をされるためにダンジョン発見の発表を遅らせただけ、元々王の避暑地として開発していた…などと言い逃れる方法はなんぼでもある。
ただ、見れば見るほどハリボテ感が否めない。
店の外観はそのまま。なのに私の鑑定では恐らく最低でも金貨10枚はくだらない品であろうミスリル製の素晴らしい短剣が金貨3枚だなんてあり得ない低価格で販売されている。
いや、この店で販売されている品は揃いも揃ってほとんどが手に入りずらいミスリル製だ。こんな素晴らしい商品を扱う店がこんな片田舎に元々あったとは思えない。
「最近仕入れたのか?」
「ん?あぁ、うちは金がねぇから無理だと言ったんだがな、安くても良いから如何しても買い取ってくれって言うから、まとめて買い取ってやったんだよ」
「そうか、店主得したな。これは金貨10枚はするぜ?」
「…そ、そうなのか?」
「あぁ。間違いねぇ!」
こうなんでも正直に言ってしまうのがギルのいい所だ。何の気なしに良いも悪いも正直に言うから相手には信用されやすいし、こちらが欲しかった情報を最も簡単に聞き出してしまう。
…時と場合を選んで欲しいと思う時もあるけど。
「じゃあ、これは金貨5枚で売っても良いのか?」
「あー、それは金貨1枚もしないな」
「何だよ…」
「親父、オレが仕分けてやるよ」
「本当か!この樽に入れてってくれ」
「おうよ。…最近新しいダンジョン発見のお陰で儲かるだろ?」
「確かにな、新しい宿屋が建ったり、店屋も増えたし、活気づいたのは認めるがな。オレらみたいな田舎モンが慣れない事するもんじゃねぇ。突然こんなモン仕入れても見分けもつかねぇ」
「…色んな奴が集まってるからな。言いがかりつけられちゃ、商売にならねぇよな」
「その通りだ」
閑古鳥が鳴いていた街に活気が戻るのは嬉しいが、戸惑いも隠せない様子だった。
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