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隣国エテルカールトン

聖都(3)

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 神社の中も私が知っている通りの雰囲気だった。
 そして極め付けは働いている人達は袴姿で、みんな黒髪黒目だった。
 フローネ、いや、アクベート王国で私が訪れたことのある街には黒髪はいても黒目の人は殆ど見かけなかった。
 そのせいなのかは分からないけど、この街に着いてからずっと物凄い視線を感じていた。

「私みたいな見た目って、もしかして此処では何か言われがありますか?」

「そうだね。元々この国を収めていた国王の一族は皆んな黒髪黒目だったみたいだし、教会側の最高権力者も代々黒髪黒目の者が勤めているよ」

 なるほど?この見た目、物凄く珍しい訳じゃないけどこの国の権力のある人はこの見た目の者達が勤めているからあんなに注目を集めてしまってたのか。
 これ、勘違いされている可能性もあるね?

「こんにちは。……本日はお供えですか?ご見学ですか?」

「お供えに参りました」

「では、あちらの列にお並び下さい」

 指し示された方を見ると皆、何かを手に列を成している。
 ガラクタの様に見えるものから見たことのない料理までその種類、内容は様々だ。

「貴方もお供えです~?」

「あ、はい」

「…何をお供えに~?」

 私達の前に並んでいた少しふくよかなおっとりとした男性が不思議そうな顔をしながら聞いてくる。
 確かに皆んなお供え物を手に持っているのに、私は何も持っていないので不思議に思うのも仕方がないことかもしれない。

「実はこのカバンの中に入ってまして」

「ほう!そんな小さなカバンに入るのでしたらさぞ小さな細工なのでしょうな~!」

 まぁ、普通ならそう思うよね。普通の鞄に料理を入れる人なんていないだろうし、この鞄に《収納》が付与されてるなんて思わないだろう。

「お互い受け取って頂けたら良いですなぁ!」

「受け取って…?」

「は~い!エテル様はこれまで供えられた全てのお供え物を覚えてらっしゃるのですよ~!同じ物は受け取られないですし、似たアイディアも受け付けませんね~」

「そうなのですね。それは…何という料理なのですか?」

「あ、はい!これはですね、私が考えたたまご入りハンバーグなのですよ!」

「たまご入り…」

 この成人男性の握り拳以上にでかい肉の塊がハンバーグって…。それは似た物に含まれないの?
 その名前があるってことは多分、私の先人がハンバーグを作ったのだと思うけど…申し訳ないけど、正直あんまり美味しくなさそう。
 …本当に申し訳ないけど。

「ハンバーグ、食べた事ありますか~?」

「えっ…えぇ。まぁ…」

「お肉の切れ端を叩く事を思いついた先祖は本当に偉大です!そしてそこから生み出されたハンバーグもまだ偉大です!私は更なる進化をさせるべくたまごを入れたのです!」

 うーん、卵を入れたって…この見た目多分、ゆで卵をいれたミートローフってところだよね?
 それにしては大きすぎない?中心は卵だから良いとして…お肉に火通ってるのかなぁ?凄く心配だ。

「私はこれを神に認めて頂き!自分の店を出すのです!」

「…素晴らしいですね」

 この世界に来てから色んな物を食べてきたけど、どれも結構美味しくて、たまにお米が恋しくなる時はあったけど味などで困ったりはしなかった。

「リザが作っていたハンバーグと見た目が全然違いますね?」

「…た、卵入りだそうです」

「それでこんなにも違うのですか?」

「次!」

「おぉ!私の番のですね~!行ってきますよ~!」

「頑張ってください!」

 なんか応援したくなるなぁ、あの人。
 この気持ち分かる?分からないかなぁ…?

「これは何だ?」

「たまご入りハンバーグなのです~!」

「…すごい見た目だな」

「自信作です~!」

「…ハンバーグは既にお供えされている。それと同じだと判断される可能性があるが良いのか?」

「は~い!」

「…分かった。では、金貨一枚だ」

「はい!」

 金貨一枚か…。結構するんだね。
 あの人、大丈夫かなぁ…。なんだか、心配だなぁ。

「次!」

「は、はい!」

「貴方は何をお供えするんだ?」

「あ、えっと鞄と…こっちは何個か種類がありまして…」

「ふむ。とりあえず一つ出してみろ」

「あ、じゃあ…この鞄です」

「鞄?」

「こちらは最近アクベート王国で発明されたばかりの魔法鞄です。この鞄には《収納》の付与が施されていて、このサイズで小さな家一軒分ほどの荷物を収納できます」

「《収納》の付与された指輪が存在しているから、難しいと思うが良いのか?」

「え?」

 思っていたのと少し違う。私が考えていたのは“お供え”して認めてもらうって事は要は日本で言う“著作権侵害”を咎める物だと思ってた。
 だから、この人の言う通り《収納》の指輪はあるけど、これまでに無かった“鞄に《収納》を付与する”と言う今までに無かったアイディア発想だから問題ないと思っていた。
 でも、違うの?

「他の物はないのか」

「あ、はい!あとはこのアクセサリーです」

「ふむ、それでは尚更無理だろうな」

「え?」

「アクセサリーなんてこの世にごまんとある。デザインが違うからと一つ一つをお供えしていたら信じられない数になるぞ?」

 まぁ、確かにいう通りなんだけども。魔石を取り替え出来る様に作ってる人はいないと思うんだけどなぁ…。

「それでもやってみるのか?」

「は、はい!」

 折角此処まできたのだから、やるだけやって見るしかないよね…?







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