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商会開業

衝撃

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「話しは聞いてるな」

「「「「「…」」」」」

 アークの質問にその場に居る誰も返事はしないがその視線と態度が彼らの返答だった。
 ロシナンテ伯爵家が治めるソーロ領。
 そこはこの国に五つあるダンジョン都市のうちの一つ。
 付け加えると主にダンジョン都市と呼ばれているのは上級ダンジョンがある領の事でソーロは二つの上級ダンジョンを有している。

「聞いての通り、向こうでも同じことが起きているようだ」

 王国からのこんな嫌がらせはいつもの事。
 フローネも含めてダンジョン都市て呼ばれている領を表立って非難できないので国はこれまでも様々な方法で嫌がらせをしてきた。
 ただ、今までのは可愛いものだったと言える。関税を増やして税収を減らしてきたり、ダンジョン品の買取価格を引き下げたり、優秀な冒険者達が集まらないようにつまらない指名依頼を出したり。
 ただ、そんなのはやり方次第で何とでも出来た。

 しかし、今回のこの災害が王国の仕業だと言うのなら話しは変わってくる。ソーロは壊滅状態で此方は村一つ無くなるほどの被害が出ているのだから。

「頼む」

「…まず、お前達がフローネを出た後の事だ」

 分かっている事だけ、と前置きをしてギルゲインは口を開く。
 アーク達がフローネを出発した後、街道にて魔物の目撃情報が直ぐに上がってきた。
 以前からはぐれの魔物の被害は増え続けていた為、調査や見回り、退治など冒険者ギルド主体で行っていて、それもあって今回は発見が早く、対処も順調に進んでいたのだとか。
 ただ、報告場所が人の往来の多い街道だったのと、最近は被害報告が減っていた森林ダンジョンの付近だった事もあり、ギルゲインは更なる調査を実施した。

 ダンジョンには大体それぞれ決まった種類の魔物しか出ない。
 森ならゴブリンやウルフなどの動物やドライアド、トレント、スピアなどの植物や昆虫系。海ならクラーケン、シーサーペントなどの魚類やセイレーンや人魚など。山岳などはゴーレムやドラゴン、ワーム、洞窟ならスライムやスケルトン、ワント、砂漠ならサンドワームやスピネル…大体はその土地や気候などに合った魔物が現れる。

 そして今回街道を占拠したオーガは森林ダンジョンの魔物でそこそこの強さもある。

 そんな折、ギルゲイン達が森林ダンジョンの調査を続けていると、本当に些細な事なのだが、森が…動植物が妙に騒がしいと感じた。

「調査の結果、川が増水していた。そしてこれがその時の水質検査の結果だ見てくれ」

 水質検査の結果もアーク達が考えていた通り、海水の流入を示している。

「恐らく深海ダンジョンに原因があるだろうな。このまま川が氾濫しないとも限らないから其方の調査には【紅の空】頼んだ」

「適任だな」

「それから煉獄ダンジョンの方もどうもきな臭い。取り敢えず、そっちは【烈火の姫】に頼んでおいた」

「ユシテル達か。良く引き受けてくれたな」

「…まぁ、ちょっとな。そっちの報告はもう少し待ってくれ」

「あぁ」

 この後想定される事態を思い浮かべてアークはため息を吐く。

「それで?」

「…水質調査を終えて、森の調査に戻った」

 ギルゲインは森で奇妙な集団を見つけ、彼らに立ち入り禁止中だと伝えたが、その直後。何の気配も感じていなかったはずが、途端にオーガの群れが溢れ出た。

「あの動きは冒険者でもないズブの素人だったよ。当然王国兵でもないな」

 この事件の犯人が王国でないのなら一体何処がこんな事をしでかそうとしているのか。

「今回、ソーロではうちと同様に魔物の反乱が起こり、逃げ帰った商人が魔物を引き連れてきてしまったらしい」

「今回ばかりはお前の判断が功を奏した、ということだな」

「橋は直ぐ直せるが…街は無理だ」

 苦々しい表情を浮かべる一同。

「ラウリ」

「…」

 そんな中にアークの低音で伸びやかな声がよく通る。ラウリは声をかけてきた相手が領主なのもお構いなしに壁にもたれかかったまま顔だけを上げる。

「…暫くリザの護衛は知り合いに頼んであるからお前達は森の様子を見て来てくれ」

「…了解」

「すぐに行きましょう」

 ラウリの返事に続いてメリル達もしっかりと頷き、目配せをしてすぐに出て行く。

「フィオ。俺たちは深海ダンジョンの様子を見に行く」

「準備をします」

「早く、行く」

「急ぐにゃ」

 アークの言葉にフィオデナルドたちも同意して準備の為に部屋を後にする。
 
「それにしても今回はまた派手に動いて来たもんだな」

「ここまで明らかさまに手を出されると一層清々しいもんだよ」

 アークとギルゲインの乾いた笑いが廊下に響いた。








 

 







 



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