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商会開業

騒ぎ

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 フローネの街に近づくと思っていた通り、中は混乱状態だった。
 街に閉じ込められて身動きが取れない商人や旅人、冒険者達が門番にどうにかしてくれと懇願したり、脅したりする声が門の外側にいる私達にも聞こえてくるくらいだった。
 こんな中で私達が門を開けたら更なる混乱を招くだろうと言うことで私達は一旦、門横に設置されている兵舎に身を寄せる事になった。


「シュナさん、ミャールさん…これは…ちょっと恥ずかしい…です」

「リザ!大丈夫にゃ!」

「リザ、似合う、可愛い」

「で、でも…」

 肩掛けの光沢のある黒胸当てと肩当てにビキニラインのパンツ。腰に二つの革ベルト、そこにダガーなどの武器を装備して、ニーハイタイツとお腹は完全に出ていて、長い髪は全部結い上げる。明らかにいつもよりも露出が多い冒険者っぽい服装。
 全てミャールさんの防具だ。

「アーク、フィオ。準備出来たにゃ!」

「最高の出来」

「…二人とも。これだとリザさんが目立ち過ぎます」

「でも、シュナのは着れなかったにゃ!」

「仕方ない、リザ、大きいから」

「…」

 何が、とは敢えて言わないシュナさんにアークさんはゆっくりと頭の先から爪先まで眺め、フィオデナルドさんは頭を抱えて黙り込む。

「…ルーペリオ」

「用意させます」

 様子を見に来た冒険者を装って裏口から街の中に入る予定だったのだが、兵舎には女性もののそれらしい着替えの用意はなく、二人のを借りる事になって今に至る。

「お、お見苦しいものを…」

「いや、寧ろありがたいと言うか、ずっとそれでも良いと言うか…」

「え?」

「アーク」

 凄い剣幕でアークさんを睨みつけるフィオデナルドさん。
 二人とも目のやり場に困るといった様子で正直言ってとても申し訳ない。

 数十分後、ルーペリオさんが持ってきたメイド服に三人で着替え直す。

「さっきのも良かったけど、コレも良いにゃ!」

「役得」

「お二人もとてもお似合いです」

 何故か見慣れているはずの冒険者の格好よりもメイド姿の方がしっくり来る気がする。

「当たり前にゃ!だって…もにょもにょ…」

「…?」

「何でもない、気にしない」

「は、はい」

 準備を終えて部屋を出ると、まるで壁のようなものにぶつかる。

「す、すみません」

「ギルにゃ!」

「お久しぶり、ギル」

「待っていたぞ」

 萎縮してしまいそうな程に大きな身体を屈めてニッコリと人懐っこそうな笑顔を向けてくれるギルさん。

「じゃあ、行こうか!」

「ハイにゃ!」

「仕方ない」

「え?」

「侍女の格好で出るにゃら、偉い人が必要にゃ!」

 戸惑っている私にミャールさんが分かるような分からないような説明をする。

「ギル、冒険者ギルド、偉い人」

「そ、そうだったんですか!」

「まぁ、一応ギルドのトップだ!」

「トップ…?たしかフローネのギルド長はカルロスさんでは…?」

「トップはトップでもギルはギルド本部のトップにゃ!」

「そうなんですか…………え?」

 これまた凄い人だったらしい。
 私この前そんな人になんか色々貰っちゃったのですか?後で高額請求とかありませんよね…?

 そうこう考えているうちに兵舎の裏口に到着する。

「…初めからこうして置けば良かったですね」

「眼福だったが…イテッ」

「ミャーに感謝するにゃ!」

「…?」

「リザ、君は分からなくて良いよ」

 裏口には既に侍従スタイルに着替え終わっているアークさんとフィオデナルドさんが待っていた。

「来たな」

 裏口からも門の前での騒ぎが聞こえてきていて、兵士の人達はとても大変そうにしている。私達はギルさんか用意した馬車に乗り込み、その横を平然と通り過ぎていく。

「状況だけは伝えておこうか」

 馬車が走り出してすぐに神妙か面持ちのギルさんは私達がいない間のフローネの状況を教えてくれた。


 私達が建国祭の為にフローネを出た後、森林ダンジョンから魔物の群れが溢れて来て、魔物に街道を占拠される事態が起こった。
 溢れ出たのは森林ダンジョンの中でもかなり厄介なオーガの群れで、街道を一時封鎖するしかなかったのだそうだ。

 だけど、それでも商人や冒険者はどれだけ危険かを説明してもフローネから出たがり、あの状態なのだと言う。

「橋を落としたのはギル、お前だな」

「フッ、当然だろう」

 間髪入れずに悪びれる様子もなく答えるギルゲインにアークは頭を抱える。

「アイツらが外に出るのは勝手だが、オーガの群れに遭遇して逃げ帰ってくるのは目に見えていたし、もしそれでオーガの群を引き連れて来たらフローネまで危ないだろ?」

「それだけの事で何も橋まで落とさなくても良かったと思うがな」

 確かにギルさんの言う通りではあるが、言っていることの規模が大きすぎる。
 3キロにも渡るあの大きな橋をどうやって落としたのだろうか、と私は疑問だった。









 
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