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異世界
助太刀
しおりを挟む「リザさん、あれはグリフォンという鳥類系の魔物です」
「グリフォン…」
「とても素早く、尚且つ賢く、長中距離の攻撃が得意で私の魔法の射程範囲を見極めて射程外から攻撃して来ています」
「だ、大丈夫なのですか!?」
「今のままでは少しキツイです」
「じゃあ、ノアを…」
「ダメです!ノアはリザさんを守らなくてはなりません」
グリフォンの広範囲攻撃が続く。マーサちゃん1人なら逃げ切れるだろうが、今は私がいる。だからと言って戦おうにも私に出来る事なんて何もないし、マーサちゃんはグリフォンが魔法の射程外にいる為に魔法が当てられない。かと言ってこのまま攻撃を止めれば狙い撃ちされそうだ。
だから、魔力が無駄だと分かっていてもマーサちゃんは魔法を打ち続けるしか無い。
(…せめてマーサちゃんの邪魔にならないようにしないと…)
「あー、えっと!助太刀しまーす!」
「あ、オイ!了承得てからって言っただろ!」
「あんの、馬鹿!」
「やれやれだね…」
「すまん!あの馬鹿が勝手に…」
「いいえ!助かります!私の射程外にいて困ってたんです。素材は全て譲りますのでお願いします!」
「ホレ来た!」
「あー、もう!」
突然現れて助太刀を申し出てくれたのは剣士、重剣士、斥候、魔法師のバランスの良さそうな4人組パーティー。
「メリル!宜しく!」
「あーもう!防御壁はアンタの足場じゃ無いんだからね!」
「ハハハ!」
剣士は軽やかな身のこなしでトントントンと木の枝を伝って上に上がっていく。そして魔法師に声をかける前にそのまま人並外れた跳躍力で宙に舞う。
呆れた様子で彼に合わせて魔法師が防御壁を張り、彼はそのままグリフォンめがけて駆け上がっていく。
私はその姿に思わず見惚れて空を見上げ、太陽の眩しさに目を細める。
「おーい!お嬢ちゃん!魔法は得意か?」
「グリフォンぐらいなら消し炭にも出来ますよ!」
「ハハハ!そりゃいい!今落とすから、宜しくな!」
「また、アイツは…」
「消し炭にって素材なんて取れないじゃない…」
パーティーメンバー達は呆れた様子だが、マーサちゃんは寧ろとても楽しそうに手を振りながら彼に答える。
「そーれ!落ちるぞ!」
「ふふふ、面白い事をしてくれますね」
お上品に笑ったマーサちゃんは次の瞬間にはその笑みを消し、甲高く超音波のようでいて、歌のようにも聞こえ、また詩のようにも聞こえる言葉を発している。ただ、マーサちゃんが何を言っているのかは全く分からない。
その超音波のような歌のような詩のような言葉の羅列が揃うと、グリフォンは声をあげる間もなく頭だけが青い炎に包まれて、花畑には巨大な身体だけが落下して沢山の花を撒き散らした。
「お嬢さん、なかなかやるねー!」
「それほどでもありません」
「いやいや、あんなん見せられたら謙遜も無駄ですよ」
駆け寄って来た彼らに褒められてもいつも通りの上品な微笑みを返すマーサちゃん。
「もう1人のお嬢さんは…って、あーれ?君、受付の子だよね?」
「あ、はい…」
私に興味津々な剣士は剣を鞘に収めながらゆっくりと近づいてくる。
「確かリザちゃん!俺はラウリ、宜しく!」
「ラウリ…さん」
「さん、なんていらないよ!」
「その、助けて頂いてありがとうございました」
「怖かったよね?大丈夫?」
「あの…はい…」
優しく頭を撫でながらそう言ったラウリさんに私はほんのりと頬を染める。
アークさんやフィオデナルドさんともまた違う少年ぽさを残した可愛げのある青年。
「しっかし、今から帰るのは厳しいな」
「困りました。私達は日帰りの予定でしたので、簡単な軽食くらいしか持ち合わせていません」
「えっと…」
マーサちゃんが私に目配せをしたので推し黙る。実は念のため、といって鞄に泊まりの道具は一式揃えてきたのだ。
だが、彼らに鞄を見せるわけには行かない。私の持っている鞄はフィオデナルドに渡した鞄には劣るものの市販の物より格段に容量が多いからだ。
それに彼らは…。
「大丈夫よ。2人くらい増えても大丈夫なくらいは用意があるから。その代わりお手伝いは頼むわね」
「えぇ。勿論です」
私達は野営の準備を進めた。
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