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異世界

子女のプライド

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 昼下がり。
 若々しい子女達の笑い声が天井の高いホールに響き渡ってる。
 玄関に飾られたこの家の家宝でもある煌びやかな花瓶に生けられた美しい花々が室内に優しい香りを立ち込めさせていて招待客である彼女達を出迎えた。

「久しぶりですわね、レミーリア。ご招待ありがとう」

「久しぶりですわ、ジェーン。こちらこそお越し頂きましてありがとう」

 そんな中で一触即発の二人に注目が集まる。これは彼女らの派閥にとっては風物詩とも言えるほどに日常的な出来事だ。

 貴族達はこうして時折お茶会を開く。
 お茶会は貴族達の横の繋がりを確認するためのものであり、貴族の子女達にとっては見栄の張り合いの場でもあり、社交界デビュー前なら友達(取り巻き)を作る機会でもある。

「ジェーン様、本日のお召し物もとっても素敵ですわ!」

「あぁ、この指輪のことかしら?これは大した事ないのよ?お祖母様が昨日、旅行から帰ってきてお土産に頂いたの」

「流石、ジェーン様ですわ!ジェーン様のお祖母様はかの有名なパルプキン伯爵夫人ですものね!」

 勝ち誇ったような嫌らしい笑みを浮かべながら、白々しいほどの棒読み演技で指輪を見せつけてくる。

「あら、やっぱりお土産ですの?道理で安っぽいと思ってたところですわ」

「なっ…何を仰いますの…!!」

「この前庶民の市場で似ているものをお見掛けしましたの。ねぇ、ティナ?」

「えぇ。貴族の嗜みとして庶民の生活を見て回ったあの日の事ですね。可愛らしい少女がお小遣いを握りしめて買ってましたわ」

「な、何を仰いますの…!?」

「此方はきちんとマダム・ウィングのお店で…」

「サラ!!」

「まぁ、まだそんなお店をお使いだったのですね?ふふふ」

 此方も負けじとこの場にいる全員に聞こえるような大きな声で煽る。
 顔を赤らめて憤慨するジェーンの表情にご満悦な笑みを浮かべる。

 マダム・ウィングのお店は若者向けの店というよりはご年配向けの店だ。なので、子女達の中ではもう時代遅れの店としてあまり人気がない。
 貴族の子女ならば最先端の流行を知っていて当然の事だし、その流行を作り出すことが出来れば、家格など関係なく社交界では注目と名誉を手に出来る。
 当然そうなれば、こう言った子女達のお茶会でも威張ることが出来る様になる。

「そ、そう言えば…貴方のお祖母様もご旅行に行かれたとか。きっといつも通り貴方の大好きなあま~いお菓子を買ってきて貰ったのでしょ?」

 何処からその情報を仕入れてきたのかは知らないが、お菓子をお土産に貰ったのを何故だが確信しているようだ。
 だが、今日のレミーリアは違う。
 ジェーンからのその言葉を待っていたのだ。

「確かにお祖母様はフローネで有名なマダム・ヘンリーのお店でお菓子を買ってきて下さいましたが、あれは皆様に振る舞うためのもので私のお土産は別に頂きましたの」

「…な、何を頂いたのかしら」

「まぁ、大した物ではありませんのよ?」

 レミーリアは勝ち誇った笑みを浮かべながら、堂々とした足取りで自身が座る予定の茶会の席に向かう。
 当然、その余裕のある笑みと足取りにざぞ凄いものを貰ったのだと皆、後からついて歩く。

「本当に大した物ではないのだけれど、折角お祖母様に頂いた物ですから大切にしようと思っておりますのよ」

「「「「「まぁ…!!!」」」」」

「流石!!!ジローネ家ですわ!!」

 純白の艶やかで美しい布地に同じく純白の美しく繊細な刺繍が施されている。これだけでも何処に出しても恥ずかしくない程に美しいと言えるのに、更にその周りにあしらわれた繊細なレース飾り。

「レミーリア様、どちらでご購入されたのですか!?」

「あら…サンドラさん、御免なさいね。これはとある工房で作られた物…」

「こ、工房でお作りの物でしたのね…。失礼致しました」

 工房。
 それは貴族の各家々でのお抱えの職人を意味する。それを根掘り葉掘り聞くのはご法度中のご法度。
 皆、それ以上は何も聞くことが出来なかった。










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