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異世界
能力
しおりを挟む「二人ともお帰り!無事だったのね…」
ダンジョンへ続く街道に面した門は人々でごった返していた。街道にワイバーンが出たっという事はもう既に知れ渡っているようで、あちらこちらで心配と安堵の声が聞こえて来た。
私達を探すのに必死だったのか、額に汗を滲ませ、不安な表情を無理矢理に笑顔に変えたフランさんが出迎えてくれた。
「フランさん…」
「あら、やっぱり寝てしまったのね。リザも疲れてるのにごめんなさいね」
「い、いえ。寧ろ、私にマリーちゃんを付き合わせたからこんな事に…」
「それなら、私が温泉を勧めたからよ…」
「いえ、温泉はすごく良かったです。ダンジョンの中なのに空があって…イメージと全然違ってました」
「普段は安全な街道なのに、今日に限ってはぐれのワイバーンが出るなんてね…。でも、安心したわ…そんなに楽しかったんなら、お互いもう言いっこなしにしようじゃない?」
「…はい」
フランさんは私の顔を見て楽しそうに笑いながら腕の中でぐっすり眠っているマリーちゃんを引き取っていく。
マリーちゃんが相当心配だったろうに私にまで気を遣ってくれるフランさんに何と返したらいいのか言葉が直ぐには出てこなかった。
私、楽しかった…のかな?あんなに怖い思いをしたのに…?
私、どんな顔をしている?
マリーちゃんを抱えて歩くフランさんの背中を見ながら、自身の顔に触れて確かめてみる。
確かに、今日は久しぶりに思いっきり身体を動かして、久しぶりに思いっきり笑っていた気がする。
一緒にいたのがマリーちゃんだったと言うのも、また私の肩の力を抜かせるのに一役買っていたのか。
「…すごく楽しかった…と思います」
誰にも届かない言葉がそこにはあった。
部屋に戻ってきた私はベッドに身体を投げ出し、今日一日あったことをゆっくりと振り返える。
朝はジンクスさんの紹介で執事風のルーペリオさんと出会った。とても物腰の低い老紳士で、なのに凄く気さくで話しやすくとても安心したのを覚えている。
アクセサリーの材料になりそうな物を見つけて喜んでいたら、マリーちゃんの突撃に遭ってそのまま連れ去られてしまった。
そこから馬車に乗って温泉へ。温泉ではプールやミストサウナも堪能し、珍しい湯花と言う物を見つけた。
その帰り道、突然はぐれワイバーンの襲撃に遭った。間一髪のところでキャスパリーグに助けられ、何とか今ここに居る。
「あの子はまた会ってくれるのかな…」
珍しく、大変高価な物だと言うのにポケットに無造作に入れていた湯花の存在を思い出す。
ポケットから取り出そうと手を突っ込むと湯花の他にもう一つ何が固い物を感じる。
「あ、すっかり忘れてた」
前日、アークさんとジンクスさんが見たがっていたギルドカード。受け取ってポケットに入れたままになっていた。
これを見れば自身の能力が分かるらしい。私はまだ傷一つ入っていない綺麗なカードを手に上半身だけ起こす。
「…ス、ステータスオープン」
少し気恥ずかしいような気持ちになりながらギルドカードを作った時にリンリンさんから受けた説明通りに言葉にすると、両掌に乗っているカードがプロジェクターのような役割を果たして空中に文字や数字が浮かび上がる。
「リザ…呼ばれし者…?アクセサリー屋…付与術…L v99…細工技巧…32…針子35…木工加工21…金属加工…13…絵師…68?どれだけあるの?」
何せ種類も多いし、何が何だがわからないしで結局カードを見ても、それだけでは何か色々出来るみたいだ、としか分からない。
一つ一つ補足説明欄を見ながらそれらが、
どんな能力なのかを確かめていく。
それで分かったのは持っていた能力は全てハンドメイドで何かしらの知識をつけたものばかりだという事。
絵師レベルが他より高いのも作品を作る前に何となくのデザインをスケッチブックに書き起こしたりしていたからだろう。
今までやって来たことがこうして形に、そしてレベルとして残っているのがとても嬉しかった。
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