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廃坑
しおりを挟む「来たかったのはここか?」
「あぁ」
それから4日かけて二人はナージャに足を踏み入れた。ナージャはジルべビュートが予想していたよりも廃れていて、まともに営業している宿屋もなければ、普通に食事をしたり、買い物をする場所も無くなっていた。
完全に出鼻を挫かれて行くあてを失った二人はシャーロットが行きたいと言っていた場所へ到着早々に足を運んだ。
着いたのはナージャの中でも一番小さな廃坑。かつては小さいながらルビーやサファイアがよく取れた場所だが、今では石炭の一つも見つからない。
「こんな所になんの用事なんだ?」
「…?そろそろ旅の資金が足りなくなってくる頃だと思ってな」
「…そうだが、こんな所で何が出来る」
「其方は私が何者であるのか忘れたのか?」
ジルべビュートの質問に呆れたように返す。彼が明らかに戸惑っている間にシャーロットは両手を強く結び合わせて、その透き通る赤く美しい瞳から一粒の涙を零す。
「…まさか」
彼女が徐に近くの壁に触れると、その壁だけが途端に脆く崩れ落ち、薄暗くて良くは見えないが持ち込んだランプの光でその奥のキ何かがキラリと光った。
「やはり忘れていたようだな」
「違う!このような事はあってはならないんだ!今、我が国が滅び欠けているのは…!」
ジルべビュートはそこまで言って言葉を噤む。それは彼女のせいではない。自分達の欲深さが招いた結果だ。
「私はお前の望みが叶うまでは何があっても死ねぬ。旅が続けられないのなら手助けするのは当然だろう」
「…ッ」
そうだ。自分は彼女の為だと言い訳して自分の欲を満たすために縛り付けるような願いを言った。
ーーー結局、俺もアイツらと何にも変わらない。
「まだこの廃坑が機能しているのなら元通りにしておいてほしい」
「大丈夫だ。またこの廃坑から鉱石が取れると噂になれば、我々が此処を訪れたという事を知らせるようなものだからな」
「…なら、いい」
シャーロットの起こすことは奇跡だ。廃れた廃坑の壁から原石が出て来たり、干上がった湖が復活したり、天候を操り、人の病まで完治させられる。
そんな奇跡が簡単に起こせるのは彼女が聖女だからなのだろう。
でも、彼女は神に見放されたのではないのか?それなのに何故まだ能力が使える?
ーーー少し『千の呪い』について詳しく調べる必要がありそうだな
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