温もり

本の虫

文字の大きさ
上 下
1 / 35
4月

いつもの朝

しおりを挟む
朝。5時30分。目覚ましが鳴り、いつも通りに起きる。手早くジャージに着替え、リビングに向かった。リビングにはすでに父と母が居た。二人とも早起きなため、いつも俺より先に起きている。
「おはよう、陽太。お弁当は用意したわ。黎くんによろしくね。」
「おはよう陽太。今日も朝練か?えらいなぁ。」
「おはよう。当然だよ、せっかくレギュラーに選ばれたんだし。」
軽く会話をしつつ、朝ご飯をできるだけ急いで食べる。
「ごちそうさま。」
きちんと手を合わせ、食器を片づけ、自室から荷物を取って家を出る。
「いってきます。」
母は、弟たちを起こしに行った。返事はないがいつも通りである。さて・・・もう6時。は手がかかるからな・・・朝練、間に合うだろうか。



*****



「行くか。」
今、俺、日村陽太がいるのは、家の隣、とても豪華な門の前。日課をこなすためである。まずはインターホンを3回。・・・返事、なし。次に門を開けドアへ。渡されている合鍵を使い、ドアを開ける。中に入り、今度はこの豪奢な洋館の主にして幼馴染の名前をだいぶ大きな声で3回よぶ。・・・返事、なし。
「上がるぞー」
返事などぶっちゃけ最初から期待していない。期待するだけ無駄だと知っているので。家主の部屋の前に立ち、ドアをノック。
「ん・・・」
「起きろ、黎。朝だぞ。」
そう、俺の日課・・・それは隣の家で1人暮らしをする幼馴染を毎朝起こしにすること。
「起きろ。黎。」
「ん~」
ぜってー起きてねぇ・・・
「開けるぞ。」
予想通り中には、ベッドの上でミノムシみたいに丸まっている氷室黎ひむろれいの姿があった。
「起きろよいい加減・・・」
力任せに布団をはぐ。
「んっ!陽ちゃん・・・?ちょ、寒い返して・・・」
「何言ってんだ起きやがれ黎。」
「まだ6時とかでしょ?いいじゃん・・・」
「お前毎日9時に寝てるだろ?寝すぎだ、普通に考えて。しかも一回譲って寝かせておいたら結局寝過ごして学校来たの昼だったろ。忘れたとは言わせねぇぞ?」
「陽ちゃんひどい・・・だって布団が僕を離してくれなかったんだ・・・」
「うるせー早く起きろや。朝飯、作っといてやるから。10分後な。」
「・・・はーい」


きっかり10分後、黎はちゃんと制服をきてリビングに降りてきた。なんだかんだ言いながら結局起きてくれるのだ。のそのそと席にすわって食べ始める。
「陽ちゃんの味噌汁おいしい・・・」
「さんきゅー早く食べろ。」
「わかってるって~」



*****


in電車。

吊革につかまって外を眺めている黎の横顔をみて、あぁ綺麗だな。と、ふと思った。黎は目立つ。テレビでもめったにお目にかかれないような繊細な美しさと、なによりその儚さに惹かれるのだ。毎朝一緒に登校しているが、いつもいつも視線を感じる。でも、
「陽ちゃん、桜。」
本人はいたってマイペース。というか、自分が目立つことにも気づいてないのだろう。
「綺麗だな、桜。」
「ん。」
黎は人を惹きつける。男も女も、関係なく。そして、一片たりとも動かないその美貌を、どうにかして動かしたい。と、切望する輩を毎日無自覚に作り続けているのだ。

けれど。なにがあっても黎は、俺が守る。               

もう、あんな思いはしたくないから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百色学園高等部

shine
BL
やっほー 俺、唯利。 フランス語と英語と日本語が話せる、 チャラ男だよっ。 ま、演技に近いんだけどね~ だってさ、皆と仲良くしたいじゃん。元気に振る舞った方が、印象良いじゃん?いじめられるのとか怖くてやだしー そんでもって、ユイリーンって何故か女の子っぽい名前でよばれちゃってるけどぉ~ 俺はいじられてるの?ま、いっか。あだ名つけてもらったってことにしよ。 うんうん。あだ名つけるのは仲良くなった証拠だっていうしねー 俺は実は病気なの?? 変なこというと皆に避けられそうだから、隠しとこー ってな感じで~ 物語スタート~!! 更新は不定期まじごめ。ストーリーのストックがなくなっちゃって…………涙。暫く書きだめたら、公開するね。これは質のいいストーリーを皆に提供するためなんよ!!ゆるしてぇ~R15は保険だ。 病弱、無自覚、トリリンガル、美少年が、総受けって話にしたかったんだけど、キャラが暴走しだしたから……どうやら、……うん。切ない系とかがはいりそうだなぁ……

不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う

らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。 唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。 そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。 いったいどうなる!? [強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。 ※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。 ※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。

生徒会長親衛隊長を辞めたい!

佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。 その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。 しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生 面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語! 嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。 一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。 *王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。 素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。 オマケに丸い伊達メガネ。 高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。 そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。 あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。 俺のポディションは片隅に限るな。

処理中です...