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勝手に「彼女」を仕立てた彼−前
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あの日以来、ゲーセンだの喫茶店だのいろいろな場所に連れ回された。
女装を見られたすぐ翌日に呼び出されたりなんかしたから、毎日になるんじゃとびくびくしていたのだが、僕の不安をよそに結局週に三日程度に落ち着いた。
もう一ヶ月も前のことだ。
放課後や休日にユキナとして秀次様と過ごすことにも慣れてきた。人とは順応する生き物なのだ。
そんな新たな日常を壊したのは、秀次様からの一通のメールだった。
「ユキナは俺の彼女ってことになったからよろしく」
タイトルは無し、本文はこれだけ。僕を混乱させるには十分な内容だ。
すぐにでも問い詰めたかったが携帯の電源は切られているらしく、電話は繋がらないしメールの返信もない。山奥のド田舎じゃないんだからずっと電波の届かない場所にいるなんてこともないだろうに。
今度は何を考えているのか僕にはさっぱりだ。
次の日学校に行くと、イケメン様はやっぱりたくさんの人に囲まれていた。
耳をすませてみると話題は僕の頭痛のタネ、宮下秀次の彼女のことだった。
廊下に出ても、食堂に行っても、特に女子生徒の間ではその話題で持ちきりだ。
女子校の生徒だの、中学時代の後輩だの、女子大生だの、秀次様の彼女について勝手な憶測が飛び交っている。
うわさをしている人たちもまさか彼女の正体が女装した野郎で、しかも偽造だなんて思わないだろう。可哀想に。
結局安息の地などどこにもなく、無駄に消耗しただけに終わった。イケメン様の人気ぶりを再認識させられたとも言う。
どこに行っても秀次様の彼女、つまりユキナに関してあれやこれや言われているのを聞くのは非常に居心地が悪い。
こんな状況に陥るはめになった真意を確かめたかったのだが、あいにく僕と宮下秀次はあくまでただのクラスメイト。いきなり突撃するのは違和感しかない。
どうにも落ち着かないまま放課後を待つしかなかった。
校門を出ると同時に携帯が鳴る。案の定秀次様だった。
どうせ呼び出しだから、着替え場所に向かいつつ内容をチェックする。
向こうもだんだん雑になってきて、メールには目的地しか書いていなかった。
僕はというともう慣れたもので、着替えに利用する学校近くの使用者が少なかったり男女共用だったりするトイレの場所も覚えてしまった。着替えも駅のロッカーに常備してある。
はっ!? まさかこれも秀次様の調教の成果……!
いやいや、でも、こんな危険で背徳的な行為に抵抗がなくなったとしても、勝手に偽造恋人にするのはどうかと思うのだ。少しはこっちのことも慮ってほしい--とまで考えたところで自分の現状に思い至る。
好きな人はおろか、校内には会話の相手すらいない。友人だって、かろうじてそう呼べそうなのは、中学時代に何が気に入ったのかまとわりついてきた奴一人だ。
僕の感情以外何も気にする必要はなさそうだ。
あのサディストにしてみれば、そんなもの小指の爪ほどの価値もないだろう。
あれこれ考えながら女物の服に着替えて、オールウィッグをつけ、薄く化粧を済ませる。
最近は学校帰りにそのまま、なんてこともよくあるから、ローファーでも違和感のない服だ。その結果、スカート率が上がっている。なんせユキナは僕好みのふわふわした女の子なんだから。
もちろん足をむきだしになんて恐ろしくてできないから、黒タイツも履いているけど。この独特の感触は慣れるのに時間がかかった。
なんでこうツラツラと服について語っているかというと、今日の目的地が例のカラオケなのだ。あの、足置きにされた。
今着替えてからやっと考えが及んだのだが、この膝上十センチ丈のスカートでは前のように四つん這いになったりしたら中が見えてしまうんじゃなかろうか。
一度気づいてしまうとそればかり気になってしまう。
すべすべしているのに妙に張り付くタイツの感覚とか、足元から入ってくる肌寒い風の感覚とか、もう慣れてしまったはずなのにどうしても意識が向く。
着替えてしまおうかと思ったが、今のこれ以外の手持ちは男子制服のみ。家に戻れば他にもあるのだが、待たせてしまっては何を言われるかわからない。
足置きにされないことを祈りつつ、腹を括ってこのまま向かうことにした。
カラオケ店に着くと、まだ秀次様は来ていなかった。
せっかくスカートのまま来たのに待たせてしまったのでは着替えるのを諦めた意味がない。
ひとまず安堵の息を吐く。
僕がついた後数分で秀次様もやって来た。ギリギリだったわけだ。危ない危ない。
店に入り、案内された部屋は奇しくもあの時と同じ部屋だった。
僕は思わずスカートの裾を引っ張る。
そんな僕を冷めた目で眺める秀次様の猫はすでに逃げ出している。
淡々とした声で座るように促され、一瞬驚愕で肩が跳ねた。
いつもよりスカートに気をつけてソファーに座る。足も意識してきっちり閉じた。
それから、粗方予想はつくが今日の用事はなんなのか、遠慮がちに秀次様の方をうかがう。
すると、秀次様は呆れたようにため息をついた。
「何を緊張してるかは知らないけど、彼女だからって身体求めたりはしないよ」
「かかかかかからだああ!!??」
想像すらしなかった言葉に顔が茹だる。
「身体を求める」というのが意味することを思い浮かべ、ますます羞恥が湧き上がった。
僕は、ユキナは、秀次様のオモチャだから、請われれば拒否できない。そもそもなんでもするって最初に言っちゃっている。なんと恐ろしいことを承諾してしまったのだろう!
秀次様がまだその辺の倫理観は捨ててなくて良かった……!
顔を真っ赤にさせて我が身を抱く僕を見て、秀次様は意地悪く笑った。
「なに? 期待しちゃった?」
「そんなわけないだろ!」
「はは、顔真っ赤じゃん」
「うるさい」
本当ほっといてほしい。でもこういう時に好き勝手するのが僕のご主人様なのだ。
ひとしきり僕で遊んだあと、秀次様は思い出したかのように心底わからないといったていで首を傾げた。
「で、貞操の心配じゃなかったらいったい何に緊張してたっていうんだよ?」
「えっと、その…………また足置きにされるんじゃないかって」
選択肢にノーが残されていない僕は、せめてもの抵抗だと目を合わさずぼそぼそ答える。
「足置きぃ? 前もしたのに緊張してたわけ?」
「ま、前のときはズボン履いてたから」
「は?」
「だ、だから、今日はスカートだから、中が見えるんじゃないかって」
決まり悪気にそう言うと、秀次様はきょとんと目を丸くしたあと、腹を抱えて笑い出した。
「そんなに笑わなくたっていいだろ!」
「だって、お前、女子か」
「男だよ! だから気にしてるんじゃないか!」
外見は装えても体の構造は変えられない。スカートの下の黒タイツをもっこりさせているナニがあるわけだ。そんなの僕好みのふわふわした女の子じゃない。
何がおかしいのか、秀次様はたっぷり十分ほど笑い続けたあとで見慣れた笑みを浮かべてこう言った。
「そこに這いつくばって、足置き」
「なっ!」
この流れで足置き再び、だと?
目を見開く僕に、秀次様は平然と言ってのける。
「今日はさせるつもりなかったんだけどね、そんな顔されたらやらせるしかないだろ?」
「~~っ! 秀次様の鬼! 鬼畜! 悪魔!」
「なんとでも。俺はユキナが羞恥に悶えてる顔が見たいだけだ。それに、幸成くんがあんなにウブだとは思わなかったしなー」
いきなり本来の名前で呼ばれて何のつもりかと顔を見つめる。
お綺麗なその顔はニヤニヤ意地悪く笑っているだけ。何を考えているかは読み取れない。
「ほら早くしないと皆にバラしちゃうぞー」
秀次様は携帯を持った手を揺らし、楽しげな悪い顔で僕を脅す。
これを言われると僕はどうすることもできないので、命令をきくしかない。
テーブルを反対側のソファーの方に押しやり、できたスペースに膝をつく。覚悟が決まらずその状態で逡巡している僕を、あろうことかあの鬼畜、蹴飛ばしやがったのだ。
「にぎゃっ!」
と微妙な悲鳴を上げて潰れた僕を絶対零度で見下ろして一言。
「さっさとしろ」
「は、はい!!」
僕は反射的に返事をして四つん這いになった。
女装を見られたすぐ翌日に呼び出されたりなんかしたから、毎日になるんじゃとびくびくしていたのだが、僕の不安をよそに結局週に三日程度に落ち着いた。
もう一ヶ月も前のことだ。
放課後や休日にユキナとして秀次様と過ごすことにも慣れてきた。人とは順応する生き物なのだ。
そんな新たな日常を壊したのは、秀次様からの一通のメールだった。
「ユキナは俺の彼女ってことになったからよろしく」
タイトルは無し、本文はこれだけ。僕を混乱させるには十分な内容だ。
すぐにでも問い詰めたかったが携帯の電源は切られているらしく、電話は繋がらないしメールの返信もない。山奥のド田舎じゃないんだからずっと電波の届かない場所にいるなんてこともないだろうに。
今度は何を考えているのか僕にはさっぱりだ。
次の日学校に行くと、イケメン様はやっぱりたくさんの人に囲まれていた。
耳をすませてみると話題は僕の頭痛のタネ、宮下秀次の彼女のことだった。
廊下に出ても、食堂に行っても、特に女子生徒の間ではその話題で持ちきりだ。
女子校の生徒だの、中学時代の後輩だの、女子大生だの、秀次様の彼女について勝手な憶測が飛び交っている。
うわさをしている人たちもまさか彼女の正体が女装した野郎で、しかも偽造だなんて思わないだろう。可哀想に。
結局安息の地などどこにもなく、無駄に消耗しただけに終わった。イケメン様の人気ぶりを再認識させられたとも言う。
どこに行っても秀次様の彼女、つまりユキナに関してあれやこれや言われているのを聞くのは非常に居心地が悪い。
こんな状況に陥るはめになった真意を確かめたかったのだが、あいにく僕と宮下秀次はあくまでただのクラスメイト。いきなり突撃するのは違和感しかない。
どうにも落ち着かないまま放課後を待つしかなかった。
校門を出ると同時に携帯が鳴る。案の定秀次様だった。
どうせ呼び出しだから、着替え場所に向かいつつ内容をチェックする。
向こうもだんだん雑になってきて、メールには目的地しか書いていなかった。
僕はというともう慣れたもので、着替えに利用する学校近くの使用者が少なかったり男女共用だったりするトイレの場所も覚えてしまった。着替えも駅のロッカーに常備してある。
はっ!? まさかこれも秀次様の調教の成果……!
いやいや、でも、こんな危険で背徳的な行為に抵抗がなくなったとしても、勝手に偽造恋人にするのはどうかと思うのだ。少しはこっちのことも慮ってほしい--とまで考えたところで自分の現状に思い至る。
好きな人はおろか、校内には会話の相手すらいない。友人だって、かろうじてそう呼べそうなのは、中学時代に何が気に入ったのかまとわりついてきた奴一人だ。
僕の感情以外何も気にする必要はなさそうだ。
あのサディストにしてみれば、そんなもの小指の爪ほどの価値もないだろう。
あれこれ考えながら女物の服に着替えて、オールウィッグをつけ、薄く化粧を済ませる。
最近は学校帰りにそのまま、なんてこともよくあるから、ローファーでも違和感のない服だ。その結果、スカート率が上がっている。なんせユキナは僕好みのふわふわした女の子なんだから。
もちろん足をむきだしになんて恐ろしくてできないから、黒タイツも履いているけど。この独特の感触は慣れるのに時間がかかった。
なんでこうツラツラと服について語っているかというと、今日の目的地が例のカラオケなのだ。あの、足置きにされた。
今着替えてからやっと考えが及んだのだが、この膝上十センチ丈のスカートでは前のように四つん這いになったりしたら中が見えてしまうんじゃなかろうか。
一度気づいてしまうとそればかり気になってしまう。
すべすべしているのに妙に張り付くタイツの感覚とか、足元から入ってくる肌寒い風の感覚とか、もう慣れてしまったはずなのにどうしても意識が向く。
着替えてしまおうかと思ったが、今のこれ以外の手持ちは男子制服のみ。家に戻れば他にもあるのだが、待たせてしまっては何を言われるかわからない。
足置きにされないことを祈りつつ、腹を括ってこのまま向かうことにした。
カラオケ店に着くと、まだ秀次様は来ていなかった。
せっかくスカートのまま来たのに待たせてしまったのでは着替えるのを諦めた意味がない。
ひとまず安堵の息を吐く。
僕がついた後数分で秀次様もやって来た。ギリギリだったわけだ。危ない危ない。
店に入り、案内された部屋は奇しくもあの時と同じ部屋だった。
僕は思わずスカートの裾を引っ張る。
そんな僕を冷めた目で眺める秀次様の猫はすでに逃げ出している。
淡々とした声で座るように促され、一瞬驚愕で肩が跳ねた。
いつもよりスカートに気をつけてソファーに座る。足も意識してきっちり閉じた。
それから、粗方予想はつくが今日の用事はなんなのか、遠慮がちに秀次様の方をうかがう。
すると、秀次様は呆れたようにため息をついた。
「何を緊張してるかは知らないけど、彼女だからって身体求めたりはしないよ」
「かかかかかからだああ!!??」
想像すらしなかった言葉に顔が茹だる。
「身体を求める」というのが意味することを思い浮かべ、ますます羞恥が湧き上がった。
僕は、ユキナは、秀次様のオモチャだから、請われれば拒否できない。そもそもなんでもするって最初に言っちゃっている。なんと恐ろしいことを承諾してしまったのだろう!
秀次様がまだその辺の倫理観は捨ててなくて良かった……!
顔を真っ赤にさせて我が身を抱く僕を見て、秀次様は意地悪く笑った。
「なに? 期待しちゃった?」
「そんなわけないだろ!」
「はは、顔真っ赤じゃん」
「うるさい」
本当ほっといてほしい。でもこういう時に好き勝手するのが僕のご主人様なのだ。
ひとしきり僕で遊んだあと、秀次様は思い出したかのように心底わからないといったていで首を傾げた。
「で、貞操の心配じゃなかったらいったい何に緊張してたっていうんだよ?」
「えっと、その…………また足置きにされるんじゃないかって」
選択肢にノーが残されていない僕は、せめてもの抵抗だと目を合わさずぼそぼそ答える。
「足置きぃ? 前もしたのに緊張してたわけ?」
「ま、前のときはズボン履いてたから」
「は?」
「だ、だから、今日はスカートだから、中が見えるんじゃないかって」
決まり悪気にそう言うと、秀次様はきょとんと目を丸くしたあと、腹を抱えて笑い出した。
「そんなに笑わなくたっていいだろ!」
「だって、お前、女子か」
「男だよ! だから気にしてるんじゃないか!」
外見は装えても体の構造は変えられない。スカートの下の黒タイツをもっこりさせているナニがあるわけだ。そんなの僕好みのふわふわした女の子じゃない。
何がおかしいのか、秀次様はたっぷり十分ほど笑い続けたあとで見慣れた笑みを浮かべてこう言った。
「そこに這いつくばって、足置き」
「なっ!」
この流れで足置き再び、だと?
目を見開く僕に、秀次様は平然と言ってのける。
「今日はさせるつもりなかったんだけどね、そんな顔されたらやらせるしかないだろ?」
「~~っ! 秀次様の鬼! 鬼畜! 悪魔!」
「なんとでも。俺はユキナが羞恥に悶えてる顔が見たいだけだ。それに、幸成くんがあんなにウブだとは思わなかったしなー」
いきなり本来の名前で呼ばれて何のつもりかと顔を見つめる。
お綺麗なその顔はニヤニヤ意地悪く笑っているだけ。何を考えているかは読み取れない。
「ほら早くしないと皆にバラしちゃうぞー」
秀次様は携帯を持った手を揺らし、楽しげな悪い顔で僕を脅す。
これを言われると僕はどうすることもできないので、命令をきくしかない。
テーブルを反対側のソファーの方に押しやり、できたスペースに膝をつく。覚悟が決まらずその状態で逡巡している僕を、あろうことかあの鬼畜、蹴飛ばしやがったのだ。
「にぎゃっ!」
と微妙な悲鳴を上げて潰れた僕を絶対零度で見下ろして一言。
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「は、はい!!」
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