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08 生き様
決戦前夜
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それから俺達2人は、ありとあらゆる手を講じてヨミとの戦いに備えを始めた。
きっとこの戦いは、今まで俺達が経験してきたものとは異質のものになるだろうという予感がしていた。
そうじゃないと、勝つ事ができない戦いなのだ。
ヨミを廃棄すると定めた前日の夜。俺とヘルはベッドで横になっている。
この安らぎの時間は、明日下手を打てばもう2度とやってこない時間だ。
「窓開けていい?」
「ああ」
正直俺は不安だった。
本当にヨミに勝てるのか。
確定要素なんて殆ど無い。また矢面に立つヘルが無残な目に遭うかもしれないし、俺だって死ぬか、死ぬより酷い目に遭う可能性は十二分にある。
怖い。
「風が気持ちいいね」
「……そうだな」
「……やっぱり、デシレも怖いの?」
ヘルの肩にそっと手を回すと、その体はかすかに震えていた。
俺達はお互いに恐怖心を隠し合い、それを見透かし、心の奥から取り出して見つめ合う事で、迫りくる戦いを克服しようとしているのだ。
「確実に勝てる戦いじゃないかもしれない」
「そう……だね」
「でも、勝たなきゃいけない。そうだろ?」
「うん、もちろん」
どんな手段を使ってでも、ヨミは倒さなければいけない存在だ。世界にとっても、俺達に対しても、危険すぎる男。
いや、世界なんてどうでもいい。この国の平和も知ったこっちゃない。
俺とヘルの関係をこれ以上乱される訳にはいかない。
なんのことはない。俺達は利己的な目的で奴を廃棄するのだ。
「生きて帰る。そして、俺達はこれからもずっと一緒に居るんだ。ヘル、そうしよう。そういう未来にするんだ」
「……ふふっ」
「何がおかしいんだよ」
「なんかね、そういう言い方するデシレって珍しいなって思って」
言われてみればそうかもしれない。俺が普段希望的観測をしないというのではなく、勝利というこんなにも不確定な物を、まるで手の中に掴んでいる物のように、もう手に入れた所有物であるかのように、言葉にした事が珍しい。
「デシレ、好きだよ。俺、デシレと組んで本当に良かった。辛い事もたくさんあったけど、楽しい事はもっとたくさんあった。これからもそうなるって信じてる。だから、明日は頑張るよ。俺達のこれからを、手に入れるためにさ」
「ああ、俺も、全力を尽くす」
なんとなくヘルの頭をくしゃくしゃと撫でれば、撫でた俺も撫でられたヘルも思わず頬が緩んでしまう。さっきまでの緊張と、明日が決戦の日であるという事実が嘘みたいな恍惚感だ。
この何気ない幸せを、今日だけの思い出で終わらせないために。
俺達は勝つのだ。
ヘルの寝息が聞こえてくる頃、俺の意識もまどろんでいた。
そうして2人とも信じられないくらい良く眠り、決戦の朝を迎える。
きっとこの戦いは、今まで俺達が経験してきたものとは異質のものになるだろうという予感がしていた。
そうじゃないと、勝つ事ができない戦いなのだ。
ヨミを廃棄すると定めた前日の夜。俺とヘルはベッドで横になっている。
この安らぎの時間は、明日下手を打てばもう2度とやってこない時間だ。
「窓開けていい?」
「ああ」
正直俺は不安だった。
本当にヨミに勝てるのか。
確定要素なんて殆ど無い。また矢面に立つヘルが無残な目に遭うかもしれないし、俺だって死ぬか、死ぬより酷い目に遭う可能性は十二分にある。
怖い。
「風が気持ちいいね」
「……そうだな」
「……やっぱり、デシレも怖いの?」
ヘルの肩にそっと手を回すと、その体はかすかに震えていた。
俺達はお互いに恐怖心を隠し合い、それを見透かし、心の奥から取り出して見つめ合う事で、迫りくる戦いを克服しようとしているのだ。
「確実に勝てる戦いじゃないかもしれない」
「そう……だね」
「でも、勝たなきゃいけない。そうだろ?」
「うん、もちろん」
どんな手段を使ってでも、ヨミは倒さなければいけない存在だ。世界にとっても、俺達に対しても、危険すぎる男。
いや、世界なんてどうでもいい。この国の平和も知ったこっちゃない。
俺とヘルの関係をこれ以上乱される訳にはいかない。
なんのことはない。俺達は利己的な目的で奴を廃棄するのだ。
「生きて帰る。そして、俺達はこれからもずっと一緒に居るんだ。ヘル、そうしよう。そういう未来にするんだ」
「……ふふっ」
「何がおかしいんだよ」
「なんかね、そういう言い方するデシレって珍しいなって思って」
言われてみればそうかもしれない。俺が普段希望的観測をしないというのではなく、勝利というこんなにも不確定な物を、まるで手の中に掴んでいる物のように、もう手に入れた所有物であるかのように、言葉にした事が珍しい。
「デシレ、好きだよ。俺、デシレと組んで本当に良かった。辛い事もたくさんあったけど、楽しい事はもっとたくさんあった。これからもそうなるって信じてる。だから、明日は頑張るよ。俺達のこれからを、手に入れるためにさ」
「ああ、俺も、全力を尽くす」
なんとなくヘルの頭をくしゃくしゃと撫でれば、撫でた俺も撫でられたヘルも思わず頬が緩んでしまう。さっきまでの緊張と、明日が決戦の日であるという事実が嘘みたいな恍惚感だ。
この何気ない幸せを、今日だけの思い出で終わらせないために。
俺達は勝つのだ。
ヘルの寝息が聞こえてくる頃、俺の意識もまどろんでいた。
そうして2人とも信じられないくらい良く眠り、決戦の朝を迎える。
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