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最終章
第764話
しおりを挟むレイモンドは姿を消した。神の手によって転移させられながら世界を巡るらしい。
【 居場所を特定させないため。そして、吟遊詩人が複数いると思わせるため 】
不死人は食事や睡眠を要さない。それは不死人ではなくなったレイモンドも同様だ。
【 休憩も食事も与える。しかし、人々との接触は最低限しか認めない 】
罪を贖ったとはいえ人として生きて死ぬより、世界の興亡を見続ける選択をしたレイモンド。人ではないため、名を失うこととなるが……
《 レレレモンド 》
《 レモネード 》
《 モンモンド 》
「レレレのオニーサン」
《 ホウキ持たす? 》
「一応、神の使徒にはなるらしいぞ」
名前はなくとも呼び名は必要、ということで好き勝手に呼び名を選んでいた私たちにダイバがひと言注意を促す。
「えー! 神の使徒?」
「そうらしい」
【 不満か? 】
「不満!」
《 不満だらけ 》
《 不満しかない 》
《 不満以外に何があるというの 》
妖精たちに取り囲まれて、神々の方がタジタジになる。あちこちの集落で私たちの戦闘から人々を守っていた妖精たちが、神が張った結界が解除されたのに気づいてグモール国に集まっている。その数、四桁いったかな? そんな妖精たちの半数が、少人数で今後の話をしていた神々を取り囲んで凄んでいる。
……神の方が妖精の使徒じゃないか?
「エミリア。思ったことを口にするなよ」
《 言わなくても聞こえた! 》
「あっ! ……妖精たちの同調術、続けたままだ」
「……すぐに解除しろ」
解除したけどすでに手遅れ。妖精ネットワークで拡散された私の感想は共有されて……
《 下剋上だぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎ 》
反旗を翻した。
【 エミリア教の反乱だー! 】
「私を巻き込むなぁぁぁ!」
神界で睡りにつくことが決定した神々が楽しそうに走り出し、その後ろから妖精たちが追いかける。神が少しでもこの世界を好きになってくれれば……愛してくれればいい。優しい気持ちで睡りについたら、きっと世界を優しさで包んでくれるかも。
今の楽しい気持ちを夢でみたら、きっと……生命を愛しく思えるだろうか。元は同じ神だった妖精たち。
妖精たちが歌った子守唄。それに涙を流したのはジャミーラだけではない。神たちもまた涙を流していたのだ。
……神界で睡って世界を安定させるのは、過去の罪と悲しみを思い出した彼らの懺悔であり……ジャミーラを欲し、周りの被害を考えずに暴れ、どこまでも追い回した当事者による贖罪でもある。
優しいジャミーラは永久に睡り続けてほしいとは思っていないだろう。「生きて償え」とは思っているだろうけど。
壊れかけた世界を回復したら、何千年でも先の未来に睡りから覚めるかもしれない。ううん、世界が安定したら目を覚ましてほしい。
今度は、思いやりのある神となってくれれば。
「楽しい思い出だけでは反省しないかもな」
《 …………切り刻んで大陸に埋めちゃる 》
私の気持ちを聞いたダイバがぼそりと呟く。それを聞いた暗の妖精がナイフを掲げて追いかけると、神々は本気で逃げ出した。
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