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最終章

第759話

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「私がこの世界に召喚された。それは魅了の女神が私の中に潜んでいたから」
「この世界に召喚されたときに、ではなく?」
「そう、元の世界にいたときから」

魅了の女神ことチャミは渾沌こんとんの時代に日本へとやってきた。

「どんな偶然か分からない。でも、私の古いご先祖様の血脈の中で眠り続けていた」

そして起きた自然災害。生き残ったのは私ひとり。

「チャミの話では、私が家族を探して倒れたときに異変に気づいて覚醒したそうよ」
「じゃあ……俺の召喚でキミがここに来たのは……」
「私の中にジャミーラが探し求める『ガミーラ』がいたからよ」

聖女はジャミーラを殺すために召喚されたよばれたのではない。無差別に選ばれたわけではない。

「ガミーラやガミールをうちに秘めた人たちがのよ」
「…………その二人は一体、どうして」

そっか。この世界では神は『ひとり、ふたり』呼びか。日本みたいに偶像ではないからかもしれない。

きっと誰もが知りたいと思ったのだろう。

『ジャミーラを見捨てて逃げたのか?』

そんなことまで言われている。……それはちがう。

「ジャミーラを求めて起こった悲劇。それによってガミーラとガミールは
「なぜ、なぜそんなことが……」
「その理由なら、話してくれたじゃない」

シェリアさんが、驚きの声をあげたフィシスさんに指摘する。シェリアさんはおっとりしているけど話はちゃんと理解できているようだ。

「神々がジャミーラ様を求めて争ったときに、たくさんの神々や聖霊様、精霊ニンフや妖精たちも傷ついたり亡くなったのよ? その中に、ガミーラ様とガミール様も含まれているのではなくて?」
「「「あっ‼︎」」」

説明されてやっと気づいた人たちが声をあげる。さすがにダンジョン都市シティから参戦していたダイバたちは、今まで何度も話し合いをしてきたこともあり、薄々気づいていたようだ。

「ジャミーラに一番近い存在。そんなガミーラとガミールがいなくなれば、自分がジャミーラの隣に立てる。……ほうら、考え方が幼稚でしょ? ばあか、愚かものと言われても当然だよね。そんな身勝手な連中が、ジャミーラを追い詰めてこの世界を滅ぼしかけたんだよ」
《 やーい、ばあか 》
《 やーい、愚かもの 》
《 強いものは弱いものを守るためにいるんだよ? それなのに、強いものが弱いものをイジメたらダメだって。エミリア教で教わらなかったの? 》

両手を腰に当てた妖精の言葉に私たちは一斉に吹き出して大笑いする。私が聖魔たちに教えてきた言葉が、教祖ピピンを通じて『エミリア教の教え』として広まっている(らしい。私は直接関わってないから知らん)。

妖精たちが一ヶ所に集まって取り囲んでいるのは、立たされたままの神々。ピピンの影響下にいるため、「罰として立って話を聞きなさい!」という指示に従って直立不動でいるのだ。なんの罰か? それは、ジャミーラが死んだときに「危機は過ぎ去った」として神界に帰ろうとした神々に「逃げる気か?」とピピンが脅したからだ。

実は神々はすでにピピンの支配下から抜け出している。しかし、ピピンに支配された事実は精神的に負担だったらしい。何よりピピンは。それが今まで罪を感じなかった神々に罪を自覚させたことで、「逃げる気か?たったひと言」で動けなくなっているのだ。

さらに、私から聞かされている事実が動きを止めている。遠回しに、直視してこなかった自身の罪を突きつけられていては、帰る逃げることなどできない。そんなことをすれば、神の威信が地に落ちる……

「とうの昔に失われています」

罰を与えられるのは一部の神のみ。それは……ピピンの指摘どおりなのだろう。
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