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最終章

第733話

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「おまえら、嬉しいからと言ってもやりすぎだ」

ダイバに引き起こされたアルマンさんは転倒時に後頭部を強打していたようだ。ミュレイが魔法をかけて治療していた。翼人族テンシは風と光を属性に持つ。そのため、治療は翼人族テンシ一族の能力であって魔法ではないらしい。

「一時期は、その能力を欲する人が多かったみたいですが……」
「ねえ、ピピン」
「はい、なんでしょう」

アルマンさんを倒した妖精たちに「あとで私のところへ集まりなさい」とだけ注意していたピピンは、私の呼びかけに即返事をする。

「まるで、ピピンたちの属性や妖精たちの妖力チカラみたいだね」
「同じだと思いますよ。翼人族テンシは風があれば少しの力で飛ぶことができます。ですが、自然の風では途中で途切れたり、風のとおり道が繋がっていなかったり。中にはイタズラ好きな風が強風を吹かせたりしかねませんから。そのときに身を守る方法がなければ危険でしょう?」

ちゃんとこちらの会話は聞いていたようだ。その上で的確な回答がくる。その様子に、みんなも感心したような目でピピンをみる。

「最近では空魚ルティーヤと共に空を巡回している風の妖精たちから、風の情報が届くようになりました」
《 うん。風の道がねじれていたり歪んでいたら空魚ルティーヤが正しい道に戻してくれるの 》

それも、イタズラ好きな妖精なかまたちの芸術イタズラだ。最初の頃は文句を言われたりケンカもあったらしい。

《 でもね、『道じゃないところならいいんだよ』って分かってくれたの 》

それはちょっとした事故だった。
空を飛ぶ練習を始めた翼人族テンシの子どもたちが、風の道にのって飛ぶ練習をしていた。その中のひとりが、つくられたに弾かれて道から大きく外れて飛ばされてしまった。

「仲間たちがすぐに助けたため落ちることはなかったらしいが。ひとりで練習していたらどうなっていたと思っているんだ‼︎‼︎」

妖精たちに捕まって連れてこられた風の妖精にノーマンが目を吊り上げて怒鳴った。しかし、種族が違えば価値観も違う。怒っても意味がないのだ。

特に妖精たちはそんな未来さきなど考えない。時間の概念がないからだ。その点でいえば、無限寿命の種族はすべてそうかもしれない。有限寿命のエルフ族エリーさんでも似たような考え方をしている。

ただ、エリーさんやその一族、……ここでまだ奴隷として働いているハイルと同族たちは、妖精たちと主にピピンの教育的ムチによる指導によって『エルフ族至上主義』から脱却した。スライム最強説を身をもって知り、妖精たちの勤勉さを朝から晩まで叩き込まれた彼らは……

「「「エミリア様、今日も清く正しく美しい心で1日を過ごせることに感謝します」」」
「「「エミリア様、今日も清く正しく美しい心で1日を過ごす努力を怠りません」」」
「「「エミリア様、今日も罪深き我らを正しい道へお導きください」」」
「「「今日も私たちを見守りください」」」

どっぷりとエミリア教にひたっていた。

「一行、増えてない?」
「あれは罪を犯した者の懺悔です。彼らはすでに1度目のペナルティーを犯していますから。次はないと自覚させるために追加させています」

そこは教祖として厳しくしているようだ。

「彼らは更生のための信仰です。もしも隠れて罪を犯した場合、自動で棄教となるため『朝のお勤め』ができません」
「ピピン……それって…………」

爽やかな笑顔で立てた人差し指を唇の前に当てるピピン。ピピン特製『気持ちよくエミリア教に従いたくなる美味しいお水』の効果は、罪を犯さなければ影響はないのだから……問題なし☆
だよね?
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