上 下
698 / 789
最終章

第711話

しおりを挟む

フィムは私とダイバ、アゴールに伝えないといけないと思ったのか。私とアゴールの関係を夢の中まで教えに来てくれた。

「じゃあ、私の育ての母がアゴールなの?」

コクコクコクとフィムが頷く。いまはダイバの胡座の中に入って、ダイバを独り占めできて満足そうだ。ちなみにアゴールは夢の中では妊婦ではないため、フィムを抱っこしたかったようだ。しかし、フィムは真っ先にダイバに抱きついて……現在に至る。

フィムはずっと留守にしていたダイバを独り占めしたかった。しかし、アゴールは妊娠。そのためアゴールにエーメを預けられなくなり、ダイバを妹と2人で共有しているようだ。

「エミリアは、とくべつだよ」

フィムはダイバが私を優先する理由を知っている。だから、……だけど……いまは、エーメがいない。

「いまだけ、いい?」
「当然だ。フィムは俺の大事な息子だからな」
「私の息子でもあるのよ」
「私のかわいい弟~♪」
「エミリア。お前は叔母だ」
「ええええ~!」
「シエラのついの魂が何を言っている」
大きいおっきいお姉ちゃん!」
「ウソを教えるな」

苦笑してフィムの頭を撫でるダイバ。それに満足した表情のフィムが、私に手を伸ばして頭を撫でてくれる。

「ママはエミリアのママだから。エミリアはママのこ。だから、おねえちゃん」

ということなのだ。

「そういえば以前、シーズルがエミリアをおんぶした、って聞いてひどい嫉妬をしていたな」
「そのあと、私をおんぶしたまま1時間おろしてくれなかった」
「あれはダイバが邪魔したから……」

どうやら、「疲れていたエミリアさんが寝るまで」がアゴールの予定だったらしい。……あんなにもピョコピョコととび跳ねて「エッミリアさんをおんぶ~♪」とはしゃいでいたら寝られません。

「そういえば……この空振り具合って」
「エミリアたちを引きとった直後の母親に似てるな」

突然2人の子ども、ひとりはまだ乳児の母親になったことで、手探りで世話をしてくれた母。兄が私の世話をしてくれたことで気持ちに余裕はできたものの、初日に熱湯でミルクをつくって幼児の兄に中身を捨てられて泣いた母。泣き疲れてそのまま床で寝てしまった母。

そんな母にアゴールを重ねてみる。

「似てるね」
「ああ、似てるな」

私は、もといた世界で永遠に喪った優しい家族を、この世界で取り戻していたのだ。

そのことに気づかず。それでもどこかで繋がっていた家族の魂は、私をもう一度受け入れてくれた。

「私は、家族?」
「前からそう言っている」

ダイバの手が私の頭にのせられる。

「私は……」
「私のムスメぇぇぇ」

アゴールが私を、ダイバと足の中にすっぽり入っているフィムごと抱きしめる。

「エミリアは、おねえちゃん」

そう言って小さな手で私を抱きしめるフィム。

「じゅうい」
「「「え?」」」

小さな声が聞こえて、タンッタンッと音がしてそちらに目を向ける。そこにいたのは膨れっ面のエーメ。可愛く頬を膨らませて地団駄のように足で床を叩く。

「じゅゆい」

ああ、。そう言っているのか。

「エーメ、おいで」

アゴールが手を広げるとトタトタと歩いてきたエーメは……「ねえね♪」と言いながら私の膝にポフンッと倒れ込んだ。

アゴールが目を覚ましてからも激しく拗ねていた。
苦笑しながら、ダイバがそう教えてくれたのは翌朝のこと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?

なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」  かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。   『お飾りの王妃』    彼に振り向いてもらうため、  政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。  アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。  そして二十五の歳。  病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。  苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。  しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。  何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。  だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。  もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。  自由に、好き勝手に……私は生きていきます。  戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。