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最終章
第711話
しおりを挟むフィムは私とダイバ、アゴールに伝えないといけないと思ったのか。私とアゴールの関係を夢の中まで教えに来てくれた。
「じゃあ、私の育ての母がアゴールなの?」
コクコクコクとフィムが頷く。いまはダイバの胡座の中に入って、ダイバを独り占めできて満足そうだ。ちなみにアゴールは夢の中では妊婦ではないため、フィムを抱っこしたかったようだ。しかし、フィムは真っ先にダイバに抱きついて……現在に至る。
フィムはずっと留守にしていたダイバを独り占めしたかった。しかし、アゴールは妊娠。そのためアゴールにエーメを預けられなくなり、仕方なくダイバを妹と2人で共有しているようだ。
「エミリアは、とくべつだよ」
フィムはダイバが私を優先する理由を知っている。だから、……だけど……いまは、エーメがいない。
「いまだけ、いい?」
「当然だ。フィムは俺の大事な息子だからな」
「私の息子でもあるのよ」
「私のかわいい弟~♪」
「エミリア。お前は叔母だ」
「ええええ~!」
「シエラの対の魂が何を言っている」
「大きいお姉ちゃん!」
「ウソを教えるな」
苦笑してフィムの頭を撫でるダイバ。それに満足した表情のフィムが、私に手を伸ばして頭を撫でてくれる。
「ママはエミリアのママだから。エミリアはママのこ。だから、おねえちゃん」
ということなのだ。
「そういえば以前、シーズルがエミリアをおんぶした、って聞いてひどい嫉妬をしていたな」
「そのあと、私をおんぶしたまま1時間おろしてくれなかった」
「あれはダイバが邪魔したから……」
どうやら、「疲れていたエミリアさんが寝るまで」がアゴールの予定だったらしい。……あんなにもピョコピョコととび跳ねて「エッミリアさんをおんぶ~♪」と燥いでいたら寝られません。
「そういえば……この空振り具合って」
「エミリアたちを引きとった直後の母親に似てるな」
突然2人の子ども、私はまだ乳児の母親になったことで、手探りで世話をしてくれた母。兄が私の世話をしてくれたことで気持ちに余裕はできたものの、初日に熱湯でミルクをつくって幼児の兄に中身を捨てられて泣いた母。泣き疲れてそのまま床で寝てしまった母。
そんな母にアゴールを重ねてみる。
「似てるね」
「ああ、似てるな」
私は、もといた世界で永遠に喪った優しい家族を、この世界で取り戻していたのだ。
そのことに気づかず。それでもどこかで繋がっていた家族の魂は、私をもう一度受け入れてくれた。
「私は、家族?」
「前からそう言っている」
ダイバの手が私の頭にのせられる。
「私は……」
「私のムスメぇぇぇ」
アゴールが私を、ダイバと足の中にすっぽり入っているフィムごと抱きしめる。
「エミリアは、おねえちゃん」
そう言って小さな手で私を抱きしめるフィム。
「じゅうい」
「「「え?」」」
小さな声が聞こえて、タンッタンッと音がしてそちらに目を向ける。そこにいたのは膨れっ面のエーメ。可愛く頬を膨らませて地団駄のように足で床を叩く。
「じゅゆい」
ああ、ずるい。そう言っているのか。
「エーメ、おいで」
アゴールが手を広げるとトタトタと歩いてきたエーメは……「ねえね♪」と言いながら私の膝にポフンッと倒れ込んだ。
アゴールが目を覚ましてからも激しく拗ねていた。
苦笑しながら、ダイバがそう教えてくれたのは翌朝のこと。
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