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最終章
第707話
しおりを挟む「それが現在、ムルコルスタ大陸の魔法の衰退に結びついているのよ」
チャミの説明によって、ムルコルスタ大陸の不完全な魔法の知識に納得ができた。
「私の魔法、エリーさんでさえ知識はあっても使えなかった。確かに、自分に不向きな魔法があって、魔導具に頼るのは当然だと思う。だけど、生活魔法でその属性が使えるのに、それ以外では使えないなんておかしいよね」
「それには私も実体験したわ」
私の言葉にミリィさんが頷く。ムルコルスタ大陸を離れて各地を旅していたとき、『使えないと思っていた魔法が使えた』のだという。
「私はただ苦手なだけで、まったく使えないわけではなかったのよ」
「だって、ムルコルスタ大陸では口頭で学ぶんでしょう? 教えてくれる人が知らない、もしくは苦手な魔法だったら教えられないよね」
ミリィさんが魔法を教わったのは、植物の精霊のシェリアさんとフィシスさん姉妹。そして花の妖精のアンジーさんとシシィさん。そしてエリーさんは風属性のエルフ。
「水と地、風は習ったわ。でも、ほかの魔法は習わなかったから、私は使えないとばかり……」
その思い込みはルーバーと出会ったことで変化した。
「使えない属性なんかあるのか? ただ苦手なだけとか?」
「……分からないわ。だって習ったことないもの」
それでルーバーに全属性の魔法を教わり、普通に使える属性と使えなくはないが苦手な属性を知ったそうだ。
「私に光の属性があると知って驚いたわ」
「光の属性は、主に『謂れなき差別』を受けている人が、その処遇に負けないように与えられる後天的な属性なのよ」
チャミの言葉にミリィさんは目を丸くして、静かに瞼を閉じて俯いた。その表情は優しく微笑んでいて、昔を思い出して悲しんでいる様子ではなかった。
「エミリアちゃん、心配してくれているのね」
大丈夫よ、と言いながら、隣に座る私を抱きしめて優しく頭を撫でてくれる。
「辛いこともあったわ。でも、それはエアちゃんと出会って別れ。エリーたちと別れて、ひとりで旅立ち、ルーバーと出会った。そして、エミリアちゃんと再会して、ルーバーと家族になりシェシェとリュリュの双子がうまれた。いまの幸せがその辛さがあったから生まれたのなら、私が生まれてすぐに捨てられたことも、エルフの里からエリーに連れられて外の世界に出たことも、フィシスたちと冒険者として旅をしてきたことも……すべて『よかった』って笑って言えるわ」
その声は、けっして無理しているとか空元気とかではなく。すべてに感謝している声音だった。
「エアがいなかったら、ミリィは旅に出ることもなく。俺たちが出会うこともなく、一緒に旅をすることもなかった。そして、俺たちが家族になることも、双子を授かることもなかった」
すべてが偶然から始まり、現在がある。
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