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第十二章
第666話
しおりを挟む「じゃあ、行ってくるね」
「ああ……気をつけて」
「解錠」
ギルロバに見送られてダイバたちが待つダンジョンへと転移する。同時に結界の指輪が発動した。
「2人とも、結界は大丈夫?」
「ああ……これが最後の1回だな。前に買った2個があるから大丈夫だ」
「俺は3個だ。これもあと2回か」
呑気に話をしているが、その間に風の妖精が私の髪の毛を一房握って毒ガスを回収している。この髪の毛から私の魔力を吸収しているのだ。
「風の妖精、どう?」
《 まだまだあるよ 》
「手伝う?」
《 ううん、エミリアの魔力もらってるから大丈夫 》
風の妖精が集めた毒ガスは風船に吸い込まれていく。掃除機のようなものだ。そして風船の中には空間魔法で無限に吸い込めるようになっている。集気瓶に移すのは、鑑定で成分を調べるため。成分が判明すれば発生原因も分かるし、対処方法も解毒剤を用意するのも可能だ。
《 エミリア、敵が出てきたよ 》
「な~にが出~た♪ な~にが出~た♪ ど~こ~に~出った~♪?」
《 毒ガスでも死なないバシリスク 》
「ありゃま、こりゃま。けったいなモンが出たな」
この世界はコカトリスとバシリスクは別種だ。コカトリスはニワトリで、バシリスクはニワトリの鶏冠を持った毒ヘビ。
攻撃に石化魔法があるため、普通に戦おうものなら石像が乱立する。さらに息を吐くついでに猛毒も吐く。アゴールも毒を吐くけど……それを上回る。ただし、そんなバシリスクにも弱点がある。
「素材になるんだっけ。テントの中にアゴールがいるから、毒をもって毒を制す?」
《 ここは安全かつ派手に召喚魔法で 》
「ん、じゃあ……【雄鶏召喚】ア~ンド【飯綱召喚】!」
召喚魔法を使うには専用の魔導具が必要となる。陰陽道のお札と同じ『急急如律令』と書かれた札だ。「何をおいても急いで来いや」という意味だ。その言葉を召喚に使うとは……
ちなみにお札は私たちの聖女の召喚には使われていない。召喚の規模が違うからだ。
「雄鶏は鳴け。飯綱はバシリスクを一撃で倒せ」
お札を2枚、前方へと放り投げて召喚と命令をする。そうしないと、誰に攻撃していいか分からないため戸惑ってしまうようだ。下手したら味方を攻撃しかねない。そのため私は召喚時に指示をだすようにしている。
お札から飛び出したのは尾長鶏とイタチ。尾長鶏がその場で鳴くとバシリスクが動きを止め、イタチが爪でバシリスクの首を一閃する。何をするか言っているため、それに合わせた召喚獣がやってくる。同時に召喚される場合もあるため、召喚獣は複数体が存在する。
魅了の女神がしてくれた説明では、召喚獣の方でも一応召喚に伸るか反るかは自由らしい。気に入った相手には召喚獣は殺到するし、一度でも傷つけたり裏切った場合、召喚を拒否する権利を持っている。
「召喚に応じるには扉を通らなくてはならないわ。フィルターのようなものよ。望んだ能力を持たない召喚獣が押し寄せたら召喚者も困るでしょう?」
そして主従関係ははっきりさせないといけない。残念だけど、召喚は彼らにとって任務なのだ。誰だって、遊び半分で仕事に向かう相手を好む召喚者などいるはずがない。それは召喚の機会を減らす結果にもなる。
たった一度の召喚で悪名を与えられて嫌われる。
そんなことを召喚獣側だって望んでいないのだ。
ちなみに召喚で扉が開くと、私たちと召喚獣側は繋がるが、時間の流れは大きく違う。こちらが1秒でもあちらでは10秒。こちらが望む召喚獣と仕事内容でフィルターが完成する。そこから適正にあった召喚獣が出てくるそうだ。
仕事を終えた召喚獣は私に近寄ると頭を下げる。
「ご苦労さま。戻って休んで」
そう労って頭を撫でると、召喚獣たちは光の粒子になって消えていった。
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