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第十二章

第653話

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スーキィたちの獣化を初めてみた頃は獣人だと思ったが、彼らの本来の姿は人形ひとがたと獣化の両方。それでも私たちが住み着いた頃……当時は白虎が大きな姿にしかなれなかった。そのため白虎と同じ女性であるスーキィが子猫の大きさになる方法と戻り方、体重のかけ方に身のこなし方、町の中で生活するときの注意点など異種族との共存の仕方を教えてくれた。

白虎が獣人となったと聞いたスーキィは、「自分は獣人ではないが白虎に教えられることがある」。そう言ってダンジョン都市シティに戻ってきて、白虎につきっきりで教えてくれた。

人形ひとがたから獣化するときに部屋にあわせた大きさをイメージしないと部屋を壊してしまうそうです」

白虎にそう聞いた私は、獣化に失敗して部屋を壊した白虎が「あら?」と言って首を傾げてキョトンとしている姿を思い浮かべた。それを妖精たちに話すと声をあげて笑った。土台だけ残して家を横倒しにした過去があったからだ。


スーキィがダンジョン都市シティで白虎に教えてくれている間、グッセムはメッシュの手伝いをしつつ彼の周囲を調べていた。そしてシルキーの母親をはじめとした魅了の女神信仰の信者たちが接触していたことを知った。
理由は簡単だ、情報を得るため。
しかし、メッシュのガードは厳しかった。

信者たちはシルキーを情報部の記者として潜り込ませた。彼女は母親たちの思惑を知らず、ただ記者という仕事の上辺うわべだけを見て「カッコいい♪」と飛びついただけだ。そのため、本採用の前に仮採用みならい期間があることを知らず、騒動を起こしてしまった。

あのときにメッシュに魅了が効いていないことを知ってシルキーは慌てた。母親から、何度も接触したためメッシュは魅了にかかっている、と聞いていた。それはほかの信者たちのように自分をあがめるのと同じこと。

しかしその概念は間違っており、魅了遮断の魔導具で正常思考だったことを知らされた。さらに罪を暴露したことで、口封じのために母親に殺されかけた……いや、事前にいんを押されていなければ間違いなく死んでいた。
目覚めたシルキーは、盲信していた信仰からも目が覚めた。
魅了の女神信仰の信者が自分は信者だと証明するメダリオンをシルキーの母親は持っていた。それは加護という名の……魔導具でもあった。

「効果自体は小さいため、見落とされたようだな」

そう説明したのはグッセム。彼の調査によると、カメオに似たメダリオンは元々『特定の神を信心することを認めてください』というものでもある。そこから『私は特定の神を信心しています』という意味が含まれるようになった。とはいえ、鍛治師なら土や火の神に製品の完成と無事故を祈念きねんする。農作業をする人たちは土と水の神に豊穣を祈念する。そう、この世界は信心に対して深く考える必要はない。下手すれば全部の神様を信仰してもいい。

そんな中、一神だけを選んで信仰する彼らには選民思考が芽生える。自分たちは神に選ばれたと勘違いはじめるのだ。それだけでは飽き足らず、メダリオンを過信して奢侈きしゃ品を求める信者もいる。まるで免罪符のように。
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