640 / 789
第十二章
第653話
しおりを挟むスーキィたちの獣化を初めてみた頃は獣人だと思ったが、彼らの本来の姿は人形と獣化の両方。それでも私たちが住み着いた頃……当時は白虎が大きな姿にしかなれなかった。そのため白虎と同じ女性であるスーキィが子猫の大きさになる方法と戻り方、体重のかけ方に身のこなし方、町の中で生活するときの注意点など異種族との共存の仕方を教えてくれた。
白虎が獣人となったと聞いたスーキィは、「自分は獣人ではないが白虎に教えられることがある」。そう言ってダンジョン都市に戻ってきて、白虎につきっきりで教えてくれた。
「人形から獣化するときに部屋にあわせた大きさをイメージしないと部屋を壊してしまうそうです」
白虎にそう聞いた私は、獣化に失敗して部屋を壊した白虎が「あら?」と言って首を傾げてキョトンとしている姿を思い浮かべた。それを妖精たちに話すと声をあげて笑った。土台だけ残して家を横倒しにした過去があったからだ。
スーキィがダンジョン都市で白虎に教えてくれている間、グッセムはメッシュの手伝いをしつつ彼の周囲を調べていた。そしてシルキーの母親をはじめとした魅了の女神信仰の信者たちが接触していたことを知った。
理由は簡単だ、情報を得るため。
しかし、メッシュのガードは厳しかった。
信者たちはシルキーを情報部の記者として潜り込ませた。彼女は母親たちの思惑を知らず、ただ記者という仕事の上辺だけを見て「カッコいい♪」と飛びついただけだ。そのため、本採用の前に仮採用期間があることを知らず、騒動を起こしてしまった。
あのときにメッシュに魅了が効いていないことを知ってシルキーは慌てた。母親から、何度も接触したためメッシュは魅了にかかっている、と聞いていた。それはほかの信者たちのように自分を崇めるのと同じこと。
しかしその概念は間違っており、魅了遮断の魔導具で正常思考だったことを知らされた。さらに罪を暴露したことで、口封じのために母親に殺されかけた……いや、事前に印を押されていなければ間違いなく死んでいた。
目覚めたシルキーは、盲信していた信仰からも目が覚めた。
魅了の女神信仰の信者が自分は信者だと証明するメダリオンをシルキーの母親は持っていた。それは加護という名の……魔導具でもあった。
「効果自体は小さいため、見落とされたようだな」
そう説明したのはグッセム。彼の調査によると、カメオに似たメダリオンは元々『特定の神を信心することを認めてください』というものでもある。そこから『私は特定の神を信心しています』という意味が含まれるようになった。とはいえ、鍛治師なら土や火の神に製品の完成と無事故を祈念する。農作業をする人たちは土と水の神に豊穣を祈念する。そう、この世界は信心に対して深く考える必要はない。下手すれば全部の神様を信仰してもいい。
そんな中、一神だけを選んで信仰する彼らには選民思考が芽生える。自分たちは神に選ばれたと勘違いはじめるのだ。それだけでは飽き足らず、メダリオンを過信して奢侈品を求める信者もいる。まるで免罪符のように。
44
お気に入りに追加
8,048
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。
レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。
【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】
死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?
なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」
かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。
『お飾りの王妃』
彼に振り向いてもらうため、
政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。
アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。
そして二十五の歳。
病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。
苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。
しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。
何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。
だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。
もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。
自由に、好き勝手に……私は生きていきます。
戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。