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第十二章
第652話
しおりを挟むスーキィの言うとおり、メッシュが魔導具のチェックを怠ったがために、小さな綻びから極わずかにメッシュに侵食していった。最初に気付いたのはスーキィ。小さな違和感を感じるものの、それは魔導具に弾かれる程度のものだった。魔導具をチェックしてみると、今すぐ精神に影響を与えるまで大きくはないもの。
すぐ3人にメールで確認してみた。内容は全員同じ『シンクロニシティをしていたとき、何か感じなかった?』とだけ。
フィーメ『ああ、何かチリッとしたな』
フォッシュ『気のせいか静電気かと思った』
そんな2人からの返事と違い、メッシュは『精神に影響を齎す魔物でも近くにいるのか? グッセムにも注意を促して安全第一でいけよ』だった。気付いていないということは発生源ということだ。
「グッセム。違和感の原因はメッシュだったわ」
「ということはダンジョン都市に原因があるんだな」
メッシュの言うとおり、グッセムにメール内容を報告して注意を促す。
「そういえばフィーメたちは数日で合流できる範囲にいたな」
「こっちで合流してもらう?」
「ああ、ここは観光保養地。長期滞在も可能だ」
当時スーキィたちはプリクエン大陸の隣、ミドグリームス大陸にいた。「ここから数日」といっても乗合馬車では半月、徒歩ではふた月。しかし、ケット・シーの彼らは獣化して移動する。白虎のように大きな姿で、獣化の能力はひと蹴り数十メートル。それも獣化したフィーメのトラ、フォッシュの獅子という姿は肉食系の魔物ですら尻尾を丸めて逃げだす。
さすがに走り続けることはできないが、それでもかなり早く到着できる。
「ここまで行って昼にするか?」
「じゃあ、ここで泊まろう」
そんな風に決めて行くそうだ。もちろんその間は町や村に近付かない、目撃されないように認識阻害の魔導具を使っている。それは私が作った魔導具で、使用回数制限がかかっているものだ。
「これがあるとないとじゃ大違いだ」
それまでは街道から大きく離れて移動する。魔物の棲息地にも注意を払わないと、気配から魔物の集団暴走が起きてしまう。たまに冒険者たちに見つかって襲われることもある。
「俺たち妖精の存在は知られているからな、生け捕り対象だ。ヤバいのに見つかると向かった先にある町や村を隈なく探される。中には追跡用の魔導具を使ってきやがる」
そんな彼らは認識阻害の魔導具があることで魔物たちからも存在は認識されず、冒険者たちからも気付かれない。そして獣化状態で町や村に近付いても気付かれない。それは獣化から人形になっても気付かれることはない。
「今までは人形になって徒歩で1日はかかる道を歩いて行く必要があったんだからな。城門まで徒歩10分程度の距離で人形になれるようになって嬉しいぞ!」
「獣化の大きさに注意すればいいだけでしょ」
「それができれば苦労しない」
「俺たちはスーキィやグッセムみたいに器用じゃないからな」
大きさからいくと、まだ子どもの部類にはいる白虎の本当の大きさはフィーメたちとそう変わらない。それでも子猫になれるのは白虎が器用だから、だそうだ。
「子どもの白虎に負けてる~」
そう揶揄ったら、2人して「「面目ない」」と落ち込んだ。メッシュとグッセムが子猫とまでいかなくても体長1メートル以下にまで小さくなれるんだから……言い訳はできないよね。
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