636 / 789
第十二章
第649話
しおりを挟むメッシュとユーリカは朝な夕なに書類をかき回す。小さな違和感が見つかったのだ。
「セイマール地方の北の塔に一番近い火山島が噴火をとめていた時期がある」
火山島が沈黙していたのはわずかな時間。その前から鳥類の魔物が目撃されていたらしい。
「火山島に棲みつく魔物はいないはずです」
ユーリカはムルコルスタ大陸の周囲にある火山島の情報はかなり詳しく情報を追っていた。
「噴火による火山灰が風で流れてくるなら、雨で海に落として被害を食い止めます」
火山灰が太陽光を遮り寒冷化させるなど、植物に悪影響なのはどこの世界でも同じようだ。ただこの世界の火山に軽石が含まれていないのは、火山の噴火がマグマによるものではなく地熱によって発生するガスによるものだから。
「ガスの出口が火山島ってことだね」
そりゃあ、危険だと分かっていても必要なもの。できることは大陸から引き離して被害を最小限にすることだろう。それなのに何故溶岩が噴き出すのか。
《 火山の溶岩って地熱で溶けた岩や鉄なんだよ。ドワーフたちが工房で使ってる溶けた鉄を思い浮かべればいいよ 》
「あれがドッカーンッ」
《 そうそう、それも1日に何度もね。そして1日中ずっと島が揺れてるの。だから生物は生きていけないよ 》
「島にいたらドッカーンッ。た~まや~」
《 か~ぎや~ 》
《 巨大な鳥の丸焼きが出来上がりー 》
《 黒焦げじゃない? 》
「炭化してる?」
《 ふーって吹いたら千々に風にのって消えたりしてー 》
ありえる~っと私たちは笑い合う。私たちは脱線しているようで意見を出し合っているのだ。だからこそ、私の隣で会話を聞いていたダイバがユーリカに確認するように声をかける。
「ユーリカ、鳥が目撃されたという火山島の周辺に魔物だろうが何だろうが羽根を休められる場所はあるのか?」
「いいえ。過去に鳥の魔物がムルコルスタ大陸から飛んでいったけど途中で力尽きて海に落ちた記録があるわ」
「噴火すれば噴煙で翼が傷つくし、噴煙にはガスが含まれているんだから呼吸できないよね」
《 噴火で噴石も飛び出すから…… 》
「ノックアウト!」
《 だよねー 》
火山島に近付かなくても被害はある。ユーリカの言うとおりなら有害ガスなのか、噴煙に害があるのか。
「火山によっても大きく違うんだね~」
ピュリアス島の火山からはガスは出ず、モクモク出ているのは水蒸気。完全に地熱の恩恵を受けているのだ。
「人が住めない島からガスを噴き出しているんだな」
「なのに、なんで鳥の目撃があったんだろうね? っていうか、火山島って鳥がいるって見える距離なの? それとも鳥が大きかったの?」
私の疑問に全員が動きを止めた。
花火を専用宝箱から購入して、手持ち花火や打ち上げ花火をしてみんなで楽しんだのは去年のこと。
「日本の花火はね、亡くなった人を偲ぶためにお寺で始めたのが最初だよ」
「じゃあ、やろうか。……死んだ仲間たちのために」
業者が打ち上げる花火ではなく、個人が購入できる地面に置いて打ち上げる花火。そして手で持って遊ぶタイプ。オンラインショップのように購入できるのは助かるけど……
宝箱のフタに両手を置いて欲しいのを願うだけ。自分の家にあったものは無料だけど、花火や本などは所持金が減る。私の農園の奴隷はすでにエルフ族だけで給料として出費は減ったし、アクセサリーなど作っては売っている。薬師の方でも万能薬や回復薬など一生懸命調合してポンタくんに卸して稼いでいるから問題はないけど。
ポンタくんには花火の専門書と写真集を渡したら「これは魔導具でつくれそうです」と言ってくれたので、数年後には大きな打ち上げ花火大会が国営で開催できるかもしれない。
45
お気に入りに追加
8,048
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。
レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。
【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】
死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?
なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」
かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。
『お飾りの王妃』
彼に振り向いてもらうため、
政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。
アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。
そして二十五の歳。
病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。
苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。
しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。
何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。
だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。
もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。
自由に、好き勝手に……私は生きていきます。
戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。