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第十二章

第649話

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メッシュとユーリカは朝な夕なに書類をかき回す。小さな違和感が見つかったのだ。

「セイマール地方の北の塔に一番近い火山島が噴火をとめていた時期がある」

火山島が沈黙していたのはわずかな時間。その前から鳥類の魔物が目撃されていたらしい。

「火山島に棲みつく魔物はいないはずです」

ユーリカはムルコルスタ大陸の周囲にある火山島の情報はかなり詳しく情報を追っていた。

「噴火による火山灰が風で流れてくるなら、雨で海に落として被害を食い止めます」

火山灰が太陽光をさえぎり寒冷化させるなど、植物に悪影響なのはどこの世界でも同じようだ。ただこの世界の火山に軽石が含まれていないのは、火山の噴火がマグマによるものではなく地熱によって発生するガスによるものだから。

「ガスの出口が火山島ってことだね」

そりゃあ、危険だと分かっていても必要なもの。できることは大陸から引き離して被害を最小限にすることだろう。それなのに何故溶岩が噴き出すのか。

《 火山の溶岩って地熱で溶けた岩や鉄なんだよ。ドワーフたちが工房で使ってる溶けた鉄を思い浮かべればいいよ 》
「あれがドッカーンッ」
《 そうそう、それも1日に何度もね。そして1日中ずっと島が揺れてるの。だから生物は生きていけないよ 》
「島にいたらドッカーンッ。た~まや~」
《 か~ぎや~ 》
《 巨大な鳥の丸焼きが出来上がりー 》
《 黒焦げじゃない? 》
「炭化してる?」
《 ふーって吹いたら千々に風にのって消えたりしてー 》

ありえる~っと私たちは笑い合う。私たちは脱線しているようで意見を出し合っているのだ。だからこそ、私の隣で会話を聞いていたダイバがユーリカに確認するように声をかける。

「ユーリカ、鳥が目撃されたという火山島の周辺に魔物だろうが何だろうが羽根を休められる場所はあるのか?」
「いいえ。過去に鳥の魔物がムルコルスタ大陸から飛んでいったけど途中で力尽きて海に落ちた記録があるわ」
「噴火すれば噴煙で翼が傷つくし、噴煙にはガスが含まれているんだから呼吸できないよね」
《 噴火で噴石も飛び出すから…… 》
「ノックアウト!」
《 だよねー 》

火山島に近付かなくても被害はある。ユーリカの言うとおりなら有害ガスなのか、噴煙に害があるのか。

「火山によっても大きく違うんだね~」

ピュリアス島の火山からはガスは出ず、モクモク出ているのは水蒸気。完全に地熱の恩恵を受けているのだ。

「人が住めない島からガスを噴き出しているんだな」
「なのに、なんで鳥の目撃があったんだろうね? っていうか、火山島って鳥がいるって見える距離なの? それとも鳥が大きかったの?」

私の疑問に全員が動きを止めた。


花火を専用宝箱から購入して、手持ち花火や打ち上げ花火をしてみんなで楽しんだのは去年のこと。

「日本の花火はね、亡くなった人を偲ぶためにお寺で始めたのが最初だよ」
「じゃあ、やろうか。……死んだ仲間たちのために」

業者が打ち上げる花火ではなく、個人が購入できる地面に置いて打ち上げる花火。そして手で持って遊ぶタイプ。オンラインショップのように購入できるのは助かるけど……

宝箱のフタに両手を置いて欲しいのを願うだけ。自分の家にあったものは無料だけど、花火や本などは所持金が減る。私の農園の奴隷はすでにエルフ族だけで給料として出費は減ったし、アクセサリーなど作っては売っている。薬師やくしの方でも万能薬や回復薬など一生懸命調合してポンタくんにおろして稼いでいるから問題はないけど。

ポンタくんには花火の専門書と写真集を渡したら「これは魔導具でつくれそうです」と言ってくれたので、数年後には大きな打ち上げ花火大会が国営で開催できるかもしれない。
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