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第十二章
第632話
しおりを挟む「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん」
「俺たちに話ってなんだ?」
お祖父ちゃんたちから「大事な話がある」と言われた私は、店の2階の応接室で話をすることにした。ここにいるのはお祖父ちゃんとお祖母ちゃん、ダイバと私、そしてピピンたちだ。
「まずは、エミリアちゃん。我々に何か聞きたいことがあるのではないか?」
そう聞かれて、隣に座るダイバを見る。ダイバにはなんでも話している。夢の中で聞いたことも、なんでも……
「あっ!」
ダイバに言ってないことがあった。私があげた声の意味に気付いたのだろう、ダイバがコツンと私の頭を小突く。
「お祖父ちゃん、最後に夢であったとき……私の本当の名前を言ったよね⁉︎」
「そうだったな」
「なんで⁉︎ なんでダイバ以外に知らない名前を知ってるの!」
ダイバは夢で私が呼ばれた名前を知っている。あとは私と行動を共にしていた魅了の女神だけだ。
「そうだな、何から話そうかね」
「この世界の成り立ちからの方がいいわね」
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは小さく話し合うと頷いて私たちに顔を向ける。その真剣な表情で、私たちの背筋が伸びる。真面目な話だと気付いた妖精たち6人も、私の前のテーブルに正座して並ぶ。ピピンたちは私の後ろに椅子を並べて座った。もし私が聞き逃しても、ピピンが記憶してくれるだろう。
「この世界は……」
お祖父ちゃんが口を開く。その口から齎された情報は驚きの方が大きく、とても大事な内容だった。私とダイバも質問をしたが、一番多く質問していたのは暗の妖精と地の妖精だった。内容が内容だけにピピンは黙ってメモをとり、魔導具で話を記録した。
「あとで書面に起こします。その方が共有しやすいでしょう?」
「また話をしよう。そのときにまた質問をすればいい」
……途中で休憩を挟んだものの何時間も続いたお祖父ちゃんの話は、それほど大変な内容だった。
「エミリアさん、大丈夫?」
ダイバに運ばれてバラクルに用意された自分の部屋に戻された私。食事の時間になると妖精たちに部屋から引っ張り出されて1階のバラクルへ。そして今もピピンに連れ出されてこの場にいる。
「放っておくと食事もしないで脳内処理を続けるんだろ? バラクルにいれば食事だけは時間どおりに食わせられる」
そう言って運ばれたものの、食事中でも聞いた話に意識が向かって手を止めてしまう。それにアゴールが心配そうに声を掛けてくる。その横に座るフィムは妖精たちに助けられながら自分で食べている……つもりである。妖精たちはスプーンや口からこぼれ落ちるご飯をスプーンに戻したりフォローをしている。
「エイイア……」
《 フィム、お口に食べ物が入っているときは喋ってはいけません 》
私に声をかけようとして妖精に叱られたフィムは頷くと、両手で口を押さえて一生懸命モゴモゴさせる。ごっくんとして口を大きく開いたのは、なくなったから喋っていいかアピールしたつもりだったのだろう。しかし妖精にご飯を入れられてしまい、両手で口を押さえてモグモグとはじめる。
「エミリア、お前も手を止めたらフィムみたいに妖精たちに食べさせられるぞ」
隣で食事しているダイバの言葉に妖精たちが私の周りに集まってくる。
「……自分で食べる」
《 手と口が止まったら食べさせるからね 》
妖精たちの脅しにコクコクコクと頷いた私の右の耳に風の妖精が近付くと《 大丈夫だよ、考え事は部屋に戻ってから一緒にしようね 》と言って安心させてくれる。
「お祖父さんたちから何を言われたの?」
アゴールが心配そうに私を見てくる。
「大丈夫だよ、アゴール。心配してくれてありがとう。……まだ聞いた話が頭の中でまとまってないから言えないけど」
「言えなくてもいいの。ただエミリアさんに負担がかかっているのが心配で……」
「アゴール、こうなると分かっていたから連れてきたんだ。手が止まっていたら声をかけてやってくれ」
ダイバの言葉にアゴールが頷く。
一緒に聞いていたダイバ自身も驚きの内容だったはずだ。それを表に出さずに仕事を熟している。仕事をしているから考えなくてもいいのかもしれない。妖精の幼稚園ができて、アゴールも復職している。
少し前までダンジョンに入っていたけど、いまはローテーションで事務管理。ダイバも隊長として、朝出勤すると机の上に山になった書類を昼には片付けている。事務管理の間は、書類が片付けばその日の勤務は終了。一番早いときは出勤1時間で勤務が終了した。
そんなに仕事ができるダイバでも、提出する書類を作成するのが苦手だ。いつもならアゴールに任せていたけど、妊娠と出産で同行できず。それでも遠征に行ったダイバや仲間たちから聞いて報告書を作成しようとする。そのためダイバは自分で作成するようになった。作成後にアゴールに見せてチェックを受けてから提出しているけど……。それも最近では手直しを受けなくても提出できるまでになっている。
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