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第十一章
第621話
しおりを挟む「さあて……隠していることを吐いてもらおうか」
「……ふにゃあ?」
ムルコルスタ大陸へ支援に向かった冒険者たちの報告が終わって彼らが会議室から出て行くと、右肩にダイバの腕が乗せられた。……浮かべている笑顔が怖い。
「エミリアがよい子で大人しく話を聞いているときは、絶対何か隠しごとがあるからなあ」
「……隠してないよ」
「ああ、そうだな。隠しているんじゃなかったな。で? 俺に言ってないことがあ・る・ん・だ・よ・な」
だんだん、ダイバは私が隠しごとをしていると気付くようになってきた。
「超能力者?」
「……意味がわからん」
そういえばこの世界は魔法世界だから、私たちの世界でいうところの超能力者はわんさかいる。さらにダイバは特異能力も持っている。
「真冬のサイクロンが僕にくれたキセキ♫」
「さあ、現実逃避していないで……話してもらおうか」
歌い出したらダイバが爽やかな笑顔に冷気をまとってきた……。殺気や悪意や敵愾心が含まれていないため、防御系のアクセサリーが反応しない。
「結界のアクセサリーを使っても?」
「アゴールに引き渡そうか?」
「じゃあ、私も今日はバラクルに泊まろうかしら」
左隣に座るミリィさんがくすくす笑いながら私を抱きしめてきた。ミリィさんが参加しているのはムルコルスタ大陸出身だからだ。双子はいまバラクルの2階に預けられている。『妖精の幼稚園』が開園したからだ。
「タクシー屋さんに郵便屋さんに幼稚園。警ら隊もあったね。都市の運営を妖精たちに明け渡す気?」
「そうなったら俺たちの仕事は机に座っているだけだな」
「あとは書類にハンコをポンポン捺していくだけか。楽な仕事だ」
《 別にいいよー。ただし、みんな解雇ね。権限を委譲してくれれば私たちがハンコを捺せばいいだけだもん 》
《 いま以上に管理を厳しくするからね。違反者には肉体労働以外に罰金。それを環境美化に回して……。解雇になったみんなも違反者に加えるからね。罪名が『給料泥棒』だもん 》
「「「申し訳ございませぇぇぇぇん!!!」」」
全員がその場で頭を下げる。その様子を見て笑っているとダイバから「さあ、次はエミリアの問題だな」と脅された。
諦めてピピンから説明することに。
「仕方がありません。報告を受けたのは私です。エミリアには私が検閲したあとに影響の少ない本を渡しました」
「影響の少ない本とはなんだ?」
「ただの神話で、ほかの国にもあります。エミリアの世界でも似た神話があったようです」
ピピンの説明に頷く。実際に私の知っているような神が出てくる神話の本だったから、普通の読み物として暇な時間に読書をしていた。
「じゃあ、影響の大きい本はどうだ?」
「それは残酷な歴史書です。いつ・どこで・どこの誰を犠牲にしたかが絵と共に描かれていました」
……そんなものを見せられていたら、しばらくショックで落ち込むわ。
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