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第十一章
第605話
しおりを挟む「この場で話しておきたいことがある」
伝言を預けてフィムを目覚めるように促したダイバは、私たちの前に座って真剣な表情を見せた。その伝言も「エミリアたちはもう泣き止んだ。もう大丈夫だと伝えてくれ」というものだ。きっとダイバを倒したことも自慢げに話すだろう。
「アゴールに3人目ができた?」
「あら、それはめでたいわね」
「2人とも……それは違うから」
ダイバが苦笑する。
「さっきの話だ。火龍の話では、あのナナシはこの大陸から弾かれたらしい。目的はあの湿地帯の中に隠されたモノ」
「あのカカシの身体?」
「カカシじゃなくてナナシな。それに肉体そのものというより『名前を奪われたときに同じく奪われた肉体の封印』らしい」
「封印は解けてないよね」
「ミスリアが無事だからな」
封印の解除にはミスリアの存在がある。パルクスによるコルスターナの侵攻で国民にまで殺戮の手が伸びたのは、王族を全員手にかけても封印が解かれなかったからだ。
「ね、女神さん。……生きてる?」
私が言いたいことを気付いているのか笑顔になる。
「ええ、私は『神としての身体』を持っているわ」
「それを奪われた場合は精神体というのか?」
「そうねえ……。エリーが身体から出歩いていたでしょう? でも、それに誰か気づいたかしら?」
「いいや、妖精たちはどうかわからないが……出歩いていたのは気付いていない」
「本来、神は姿が見えないでしょう?」
ダイバは頷くが、私は詳しく知らないためなんとも言えない。そんな私に女神が説明をしてくれる。神の肉体と私たちの精神体はおんなじ意味とのこと。そのため見ることはできないらしい。
「じゃあ、何で見えるの?」
「化現状態だからよ」
もし姿を隠しても私とは長く繋がっていたため変わらず見えるし、話もできるそうだ。
「でもね、化現していなくても、魔法でも物理でも攻撃は効くのよ」
そういえば……夢の中で私を閉じ込めた名もなき女神を、
「叩いて殴った!」
「わかった、わかった」
「蹴った!」
「よくやったわ!」
そう、私は夢の中で普通に接触できた。だからこそわからないのだ、あのときの名もなき女神の状態が。
「夢だから触れた?」
「夢でも大人しく殴られているか?」
「反撃しなかったよ」
その疑問の答えに女神は仮説があると前置きして話してくれた。
「まさか閉じ込めた箱から飛び出してくると思わなかったのよ」
「だから反撃できなかった?」
「下手に手を出したら、アウミの肉体に影響があったかもしれないな。アウミの身体は死んでいる。それを活かすために力を使っていたかもしれない」
……あのとき、私の夢の中でありながら名もなき女神はアウミの中から接触してきた。それは両方に負担がかかってしまう状態だったらしい。
「どちらが先に壊れるかというなら、断然アウミの方だったわ。身体が生きているかどうか、で大きく変わるのだもの」
ただ、私が負担なく目覚められたのは妖精たちがついていたから。
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