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第十一章
第604話
しおりを挟むゆっくり2人で話をした。魅了の女神もまた古い記憶はない。その理由を聞いて、私は彼女の優しさに感謝した。
「私たちは似てるね、姉妹のように」
「フフフ。嬉しいわ」
「一緒にいてくれた。だから似たんだね」
私たちは本当に似ていると思う。そして私たちは…………名もなき女神と向かい合うことを覚悟した。
「話し合いの舞台に立ってくれると思ってる?」
「ムリでしょうね」
「っていうより、どこ行っちゃったんだ?」
「この大陸にはいないわね」
「いたらアウミを逝かせるジャマをしてきたよね」
「そうね。……どこに行っちゃったのかしら?」
「ここの大陸にはいないと思うんだよね」
「いたらアウミを逝かせないようにジャマをしてきたわよね」
「うん、……どこに行ったんだろうね」
私たちは似てるから、同じように考えて、同じように気になって……同じ答えに至ってしまう。堂々巡り状態を何周したんだろう。でも答えまでいきつかない。
「こんなこと、ダイバに知られたら全力で止められるよね」
「ああ、止めるな」
「「……えっ!!!」」
突然加わった声に一緒に振り向く。そこにいたのは……
「ダイバ……⁉︎」
「フィム、あなたまで……」
そこにはフィムを抱えたダイバが立っていた。
「なんでダイバがおるん……?」
「なんでって、お前……フィムが2人が夢の中で泣いてるって教えてくれたんだ。ったく、アゴールが『フィムと一緒に寝たけどエミリアたちが泣いてるのを見たのに夢に入れなかった』って起きてからずっと泣きじゃくってるぞ」
「……ダイバ、ホンモノ?」
きゅいーっと隣にしゃがんだダイバの左頬を引っ張る。
「イッテー! こらエミリア! つまむんだったら自分の頬をつまめ!」
「やだっ! 痛いもん!」
「だからって俺の頬をつまむな!」
「いーたーいー!」
頭をガシッと掴まれて力を入れられる。
「パパ、えあがないちゃう!」
女神のヒザにうつ伏せで抱きついて甘えていたフィムが駆け寄ってくるとダイバの腕にしがみつく。
「おっ⁉︎ やるか?」
「ううううー!」
ぽかぽかぽかとダイバの胸を叩くフィム。その腕はグルグルグルと回されていて、半分は届いていない。フィムもそれに気付いたのか、叩くのを止めて一歩前に近寄った。胸に飛びかかったフィムの一歩はダイバには大きな一歩だった。
「え~あ~を、はなしなしゃーい!」
「うっおおおお!」
「あらあら……」
「ありゃ踏んだな」
あぐらで空いていた場所に小さくても全体重が飛び乗ったのだ。ダイバが股間を押さえて、もんどりを打つ。同時に私から手が離れ、フィムは嬉しそうに振り返ると私に飛びついてきて頭を撫でてくれる。
「えあ、いたい? だいじょーぶ?」
「うん、大丈夫。ありがとう、フィム」
抱きしめたフィムが嬉しそうに笑う後ろで悶えるダイバが「そうきたか」と呻いた。
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