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第十一章
第583話
しおりを挟むその報はダンジョン都市だけでなく、タグリシア国だけでなく、プリクエン大陸だけでなく……海を越え、大陸を越え、種族を越えて全世界に知らされた。
『速報:全大陸、各国の主要な都市を残し……町や村が世界の半分が一夜にして滅んだ』
届いた凶報による混乱の中、続報が伝えられた。
『続報:無事が確認された主要都市は以下のとおり。
ムルコルスタ大陸。女神の加護があるエイドニア王国王都エドニア、聖魔師の加護に守られたシメオン国王都シメオニス。
ペジリアーノ大陸。バラクビル国交易領府ベストール、トリシオン公国フォースリート。
それ以外の各国大小の都市や村と連絡は取れていない。なお、生存者の証言によればタムスロン大陸は海に沈んだと思われる。
『神に見捨てられた大陸』と知られているプリクエン大陸に一切の被害がない事実から、この件に神が関与していると思われる』
『続報:タムスロン大陸は海に沈んだものの僅かに生き残った者もいる模様。彼らは港町にいたため客船や漁船に救助されたと証言している』
『続報:陽がのぼるにつれて、滅んだ町や村でも数人の生存者が見つかっている。しかし、それは全体の一割にも満たない』
明るくなるにしたがって被害は大きくなっていく。
この世界にも時差はある。悲劇が起きたとき、世界の端にあるここプリクエン大陸はすでに朝だった。しかし隣のミドグリームス大陸では夜明け前、タムスロン大陸は深夜。ペジリアーノ大陸とムルコルスタ大陸はそろそろ夕食時だった。
「天が光ると建物が何かに潰された」
そう証言したのは、被害を受けた町や村の生存者だった。
「光魔法のように天が明るくなって、遠くでドーンッドーンッって繰り返し音が響いた。怖くて誰もが頭を抱えて地面に伏せていた。気付いたら音が止んでいて、明るかった天も何事もなかったかのように暗くなっていた」
そう証言したのは、被害を受けなかった主要都市の住人たち。集まった証言のほとんどは彼らから提供されたものだ。証言から推測すると、村は2~3度の衝撃。町では1分近くの衝撃を受けたらしい。そのため、被害は村の半壊に対して町は壊滅という差が出ていた。
「お恥ずかしい話、私たちは初期行動ができませんでした。……何が起きたか分からず、ただ恐怖で縮こまっていました。そんな私たちに檄を飛ばして救助に動いたのは冒険者たちです」
彼らは真っ先に建物に向けて『状態回復』をかけていった。建物が元に戻ったことで、建物の下敷きになっていた人たちの救助は比較的早く、治療師たちも現場の駆けつけて人々を救ったらしい。
私の万能薬で失った身体の一部を蘇生した人たちも多いが……失った生命までは蘇生できなかった。
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