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第十一章
第562話
しおりを挟む「ねえ、何にする~?」
《 魔物牛のビーフシチュー! 》
《 サラダは青じそドレッシングでさっぱり系? 》
「玉ねぎドレッシングでもいいよ」
《 あ、私ニンジンのドレッシングー 》
ドレッシングは私たちで作っている自家製。元々マヨネーズやドレッシングはこの世界では自家製だった。それを日本で食べていた味に近付けたのが私のレシピ。ただしこれは家庭食に含まれるため、レシピの登録はない。私のレシピはバラクルとミリィさんの鉄板屋さんで使用されている。
《 ねえ、バゲットってまだあったー? 》
「食料庫を見てきます。ほかに足りないものはありますか?」
《 いまは必要ないけど、朝食用のクリームチーズが残っているか確認してくれる? 》
「そういえばレーズンバターも足りなくなっていましたね。いつでも作れるように材料を確認してきます」
「ピピン、戻ってくるときライム持ってきて。もうすぐ果実水がなくなるよ」
「エミリア。ライムとレモン、オレンジは隣の籠に入っています。ハーブとイチゴ、ブルーベリーを持ってきますね」
「うん、お願い。パンのガーリックバターは後から塗る? それともガーリックトーストにする?」
《 ガーリックトーストのガーリックバター追いのせー♪ 》
ダンジョンなどでテントの中で過ごす食事風景はいつもこう。食後は1時間の休憩をとる。私は基本白虎の背に乗っている。ただ、いまは魔法剣士として鍛錬中のため歩いて攻略中。サボっていると動きが鈍るんだよね、私も妖精たちも。
「お昼寝♪ お昼寝♪」
《 お昼寝♪ お昼寝♪ 》
今日は草原の庭にシーツを敷いて、本来の大きさに戻っている白虎にもたれてモフモフしていると、陽射しもポカポカ。白虎のもこもこ毛皮もポカポカ。ちょうど良い温かさは優しく夢の中へ誘ってくれる。
「あれ? ピピンとリリンは? 地の妖精もいないよ」
私が風邪をひかないようにシーツをかけてくれる暗の妖精。いつもならピピンとリリンはシーツの上に飛び乗るのに、気付いたらいなかった。周囲を見回すと地の妖精もいない。
《 リリンは地の妖精と一緒に、採取した薬草の分類。ピピンは倉庫の確認だって 》
「手伝わなくてもいいの?」
《 さっき見てきたけどエミリアには休んでいてほしいって 》
《 毒草が混じってるんだって 》
「…………何が混じってた?」
《 ヒガンバナ、ジギタリス、スズラン、ドクゼリ 》
「あっ! そういえば……」
あとでヒガンバナの茎を折って花提灯にしようと思っていたのを忘れてた。迷宮になっている通路に先で見つけて休憩のときにって思っていたら、冒険者たちの騒動が起きて、それどころではなくなったんだった。
《 大丈夫。全部、毒の成分を取り出して薬瓶に入れるって言ってたよ 》
《 毒を抜いた花は時間を止めておくから枯れないよ 》
「うぅぅ……ごめ~ん」
《 まあまあ。大変なことに巻き込まれたんだから 》
《 疲れてたんだよ。もう寝よう 》
《 リリンが起こしてくれるって言ってたよ 》
《 じゃあ 》
「《 おっやすみ~ 》」
私は知らなかった。リリンと地の妖精は昼食が終わるとテントから出ていっていたことを。そして目が覚めたら……トラブル第二弾が待っていた。
「んー」
「起きた?」
「リリ~ン?」
目を開けるとリリンの顔が下を向いて私に微笑む。私はリリンの膝を枕にして眠っていたようだ。
「みんなは?」
「遊んでるよ。ほら、エミリアも起きて」
そう言って引っ張るリリンは、私をテントの外へと連れ出した……
《 あ、エミリア 》
《 見てみてー 》
妖精たちが遊んでいるという、その相手は精霊たちだった。震えて俯いて……植わっていた。
「…………どうしたの? この人たち」
《 悪の元凶よ 》
暗の妖精が腕を組んで目を吊り上げている。
それにしても『悪の元凶』って…………悪?
「ねえ、悪って?」
《 ちょっとまってて。ダイバとシーズルがこっちに向かっているから 》
説明は一度で終わらせようというのだろう。
穴に入っている精霊は8人。全員が男性……
「ねえ、風の妖精。みんなも、ちょっと」
《 どうしたの? 》
おいでおいでと手招きするとみんなが寄ってきた。
「あのね? 下から覗かれてるよ、スカートの中」
私の爆弾でスカートを履いている子たちが一瞬の間を置いて、顔を真っ赤にしたと思うと各々の妖力を精霊にぶっ放した。
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