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第十章

第487話

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「では追加で情報提供はございますか?」

これを言って混乱するのではないか。そう心配したが、それを隠す方がダメだと思い小さく手をあげる。

「エミリア? 何か伝えたいことがあるのか?」
「…………怒らない?」
「内容によっては驚くだろうが、今さら何を聞かされても怒りはしない」

シーズルの言葉に周りは頷く。……そうだ、ここの人たちはどんな私でも受け入れてくれる。だったら、信じてもいいかもしれない。

「問題になった『操り水』ね。……私も作れるよ」
「……だろうと思った」

しばしの沈黙後にシーズルが諦めににた声をもらした。治療師を管理する医局部からきた職員が軽く手をあげて「それに関しては理解できます」と答えた。

「毒を解毒するにはその毒を知ることから始まります。その毒を鑑定することで、何が使われているのかわかることもあります。その配合がわかれば、解毒に有効な薬草もわかります。エミリアさんはその毒に有効な水を偶然作られていたそうですね。それで操り水による被害を最小限に抑えられたと記録が残っています」
「そんなこと可能なのか?」
「ええ。エミリアさん、まだエアさん名義の頃ですね。有名な『神に認められた薬師やくし』として薬師やくし界で名が知られました。通常の操り水は解毒方法がなく、その効果は無期限とまで言われてきました。それを解毒できたのはエミリアさんのレシピのおかげです」
「それで狙われたということか」

ダイバの言葉にその職員は頷く。各国の治療院では操り水による混乱者を地下に閉じ込めるしか方法はなかった。それがコップ一杯の水で解毒された。それが各国の治療院から支払われるレシピ使用料の理由だった。

「それでは、そのいやしの水に関して私から追加報告させていただきます」

そう言ったのはピピン(人型)だった。すでに三人とも元の姿でも人型でも好きに変化へんげできるが、こういう場所では人型でいる。そのピピンから齎されたのはダンジョン都市シティが進化しているという内容だった。

「水の妖精たちの努力により、いやしの水を作り出せる回数と量を増やせることができました。数ヶ月後、遅くても半年で完全に近い供給が可能です」

このダンジョン都市シティの飲み水が、いやしの水になる日は近い。ちなみに『清らかな水』は一部の飲食店で使われている。ピピンや妖精たちに使は発生しない。そのため作り放題に使い放題。その代わりに、水道使用量がダンジョン都市シティから私に支払われている。

「妖精たちが練習で作ったいやしの水は街路樹に使っています。自然浄化で溜まるおりに関する問題も、自浄作用が働いているのか魔物化する様子はありません。それによって今後は魔物の家畜化も望めるでしょうし、家畜の魔物化も防ぐことができると思われます」

ピピンの現状報告に感嘆の声があがる。妖精たちも努力して住み良い場所にしようとしている。
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