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第十章
第479話
しおりを挟む定期報告会……それが最近の内容は奴隷のことではなくコルスターナ国とパルクス国間の戦争に関することがほとんどだ。嫌な内容で手に入る情報も少ない。それでも『知らなくてはならない問題』だった。
「情報管理部。コルスターナに調査に入っているという情報部員たちとは、その後連絡はあったか?」
「…………いえ。彼らは聖魔士ギルドの崩壊についての調査に行ったのですが、その中間報告もなく」
やはり、あのタイミングよく送ってきたアウミたちの動向以外に連絡はないらしい。じゃあ、外周部から出て行った屋台の一家たちはどこへ行ったのか。
「屋台ごと船に乗れたっけ?」
「ああ、馬車と同じ扱いだ」
馬車は荷台でテントを張ったりして泊まれるため、馬車代だけで乗れる。それと同じく、移動できる屋台馬車も馬車と同じ扱いのようだ。
「あー……、商人ギルドで調べてもらうか」
「たとえモグリの屋台でギルドに登録していなくても、船に乗るときは記録が残るから」
私たちが気になったのは『竜人のエサになった可能性』だ。ダイバたちとは違う竜人、たしかセウルたちは「龍になって戻れなくなった竜人がいる」と話していた。そしてコルデさんは「龍のエサは人間だ」とも教えてくれた。
「ねえ、みんな。嫌なこと言ってもいい?」
私の言葉に、分かれて話し合っていた全員が静まる。ここの人たちはノーマンたちが心残りを解消したことは知っている。だから言っても問題ないだろう。
「あのとき、死霊になったのはダンジョン都市から出て行った人たち。でもね、半数もいなかったんだよ」
「ああ、エミリアの言うとおりだ。現時点で、当時出て行った中で以後連絡が途絶えたのが四十八名。そしてその前から連絡が途切れたのが十三名。さらに……どこから仕入れたか不明にも関わらず、あまりにも詳しすぎる情報を流している不審者が百十三名。合計で百七十四名。外周部は含めていない」
あまりにも多い行方不明者数に、会議室が一瞬で静まる。
「ちょっと待て。それはどういうことだ」
「まったまった! うちのレインズがファウシスに住んでいるんだ。しかし嫁さんが産気づいて……」
「連絡はどうなってる!」
「いや、息子だからめったに連絡はよこさないが……。それよりカミさんが行ったきり連絡をよこさん」
「そういえば、ファウシスに問い合わせた回答が来ねえな」
「ファウシスって、アウミが聴取を受けたところじゃなかった?」
私の言葉にシーズルが顔を上げる。シーズルもまた、新都長の挨拶の手紙を送ったが返信を受け取っていないらしい。
「あっ!」
「どうした、エミリア?」
「キッカさんたち、えっと鉄壁の防衛の人たちなんだけど……。王都の調査で引っかかることがあるから第二都市にいくって」
いま、ファウシスに一番近くにいて信用できる人たち。
「迷ってる余裕はない。ダイバ、オヤジさんに連絡を。その人たちに事情を話して外で待機してもらっていてくれ」
「調査に入らなくていいのか」
「外で行き来を確認してからだ。人の流れに何らしかの変化があるかもしれない。何か聞かれたら『別働隊が向かってるから合流待ち』と言ってもらえばいい」
「わかった」
ダイバはそう言うと、四階の窓から飛び降りた。
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