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第九章
第454話
しおりを挟む「そうだわ。火龍、フルーツガーリックありがとう」
〈役に立ったか?〉
「ええ。こうして、アゴールに負荷をかけずに赤ちゃんの出産まで二人を守れるわ」
〈そいつはよかった〉
《 はー 》
《 火龍は事情を知っていたわけだ 》
〈ギクゥ!〉
《 へー 》
《 私たちまで巻き込んで 》
〈ギクギクゥ‼︎〉
《 ほー 》
《 エミリアまで巻き込んだんだ 》
〈ギクギクギクゥ!!!〉
《 天誅!!! 》
〈ンギャアアアア!!!〉
バチッ!
しゅぱぱぱぱっ!!
水の妖精が火龍の全身に水をぶっかける。それは普通の水ではなく塩分の濃い海水。その程度で火龍に影響はない。しかし、光の妖精が静電気を起こす。……そして青白い光が全身を駆け回り感電させた。
こちらでは、火の妖精が作った火球。それに風の妖精が鎌鼬を向ける。火を纏った鎌鼬が、火龍の表面に細かな傷をつけていく。火で焼かれたキズに、地の妖精が鋭くなった木の枝の先端を突き刺した。暗の妖精が木の枝の重量を重くしたことで傷口に深く刺さっていく。それは巨体の火龍にしてみれば、全身に荊のトゲが深く刺さった状態。
のたうち回る火龍に静静と近寄る人影が。その動きはアニメで見かける侍女の動きの様に上品でお淑やかだ。……しかし、その正体はリリン。となれば、火を見るよりも明らかだ。
バッチーンッ
〈ギャアアアアアアアアアアアアア!!!〉
「あ、巨星墜つ」
私の言葉に隠れて、アゴールが「次は私が倒したい」と闘志をむき出しにしていた。
「エミリア。あれはエミリアの案?」
女神の言葉に首を左右に振る。あの子たちは自分でできる得意なことを誰かと協力し合うことで強くなれることを知った。
「でもね、怖いこともやるんだよ」
「怖いこと?」
「そう。水球を火の熱でグラグラ煮え沸る熱湯にするの」
私の言葉に悲鳴があがる。思い浮かべるだけで恐怖しかないだろう。でも、女神は楽しそうに笑った。
「外部でそれをやったら、一瞬でスケートリンクができるわね」
「そうなの。妖精たちも何度も練習して……。そうしたら、綺麗な氷にするには高温にしたほうがいいってなって」
「湖を作ったら?」
「それがね、夏になったら泳ぎにきちゃうでしょ。そうしたら溺れちゃう人がいるかもしれないから」
自分たちの楽しみだけで行動をする妖精たちだが、人と関わることで守るものと考えた。それが妖精たちの『結界最大強化』を生み出した。
「隣国からたどりついた子たちも、人を怖がりつつも理解し始めた」
「そう。この大陸は神々にとって『罪深き地』だから……。神が直接的に接触できないため、周囲の島と違う進化をしたけど。それでよかったのかもね」
女神の言葉にみんなが驚く。ただ、私とダイバはある仮説を立てていた。それは……
「この大陸が、神々が魅了の女神を奪い争ったという大陸、なんだね?」
「あら……しらなかった?」
「神に見捨てられた地、とだけ」
「あらら……」
その理由を教えて、神々が争った地がここじゃないかと思ったけど、当の本人から認められました。
「そりゃあ、自分たちが暴れてめちゃくちゃにした大陸から目を背けたいわな」
「だから、犯罪が横行する犯罪者の温床する地になったっと」
「……ごめんなさい」
「いやいや、女神さんも被害者だ」
「……なんか、女神も『一人の仲間』になってる」
そう言いながら笑うと、みんなもそれに気付いて笑い出した。
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