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第九章
第437話
しおりを挟む「ってことは、これらは旧国が滅んで以降の出来事ということか」
「……その神、今はどうなってるの?」
「ん? なにがだ?」
「だから、その旧国で侵攻されていた女神。死んで精霊や妖精になったの?」
「……そういえばそうだな」
「でも、エミリアちゃんの夢の中に現れたのは、妖精ではなかったのよね?」
「うん、魅了の女神像と似てた」
そうなると話が変わってくる。アウミの中にいたのが精霊の可能性もでてくるのだ。
「神が死んだとき、神の記憶をもった大きな魂が精霊になるんだったな。ということは、エミリアが見たのは神本人か精霊がみせた神の姿だってことだ」
「そして、妖精は城門の出入りが自由だもん。慌てて記憶を消して逃げ出す理由はないよね」
「だいたい、普通に出ていけばよかっただろう? 墓参りに行くとか、親戚に会いにいくなど。外部からきたんだ、理由はいくらでも作ればあるんだから」
「その点は子供だよ。記憶を消した範囲が自分の周りだけ。どれだけの人が関わっているか、とかは分かっていない」
そして、覚えている人いない人。それを調べたら、自分が関わった人、直接会った人にだけ記憶の消去をしていた。
「接触しづらい私はともかく、ダイバの記憶も残してた。たぶん、竜人に関しては未知数だったか、龍になる竜人では相手にできないのを知っていた可能性があるね。関わったことあるんかなあ。そしてエルフ族の場合、精霊の存在が見つかる可能性があったから。それでバラクルに行かなくなった」
「でも、エリーは一度関わってるわ」
「それなんだけど、エルフ族の感覚が研ぎ澄まされるのは複数人集まった場合だよね」
「……ああ、農園に奴隷契約が三人いる。そして今は十二人追加された。つまり十六人もいれば、アウミの中に精霊が隠れていてもわかる」
「ただし、エリーは鈍いから言われてもわからないが……それをアウミが知っているとは思えない」
「とりあえず……逃げだしたんだよね。逃げないといけないなにかがあったってことだよね」
「一体なにがあったんだ?」
あれ? ダイバも一緒に聞いたのに忘れてる?
「フルーツガーリックは植えた状態でも効果があるんだったよね」
「ああ、火龍がそういっていたな」
「それが逃げた理由ってこと?」
「妖精たちが隠れてコッソリ育ててた」
そうなると疑問がひとつ。農園に魅了の女神がいた痕跡があった。それは魅了の女神にフルーツガーリックの効果がないということ。
「魅了の女神は排除対象ではないんだな」
「私たちの味方というなら……もうひとつ、見方を変えないといけないことがある」
「……なんだ?」
すーはーと深呼吸をしてからみんなを見回す。
「アゴールの中に、アウミの精霊か女神かが入ろうと、赤ちゃんに取り憑こうとしてたんじゃないかな。それを妨害する形で魅了の女神がアゴールの中にはいって内側から守った。そうなると、栄養と眠りが必要なのは魅了の女神と赤ちゃん。まだ使ってないけどさ、黒焼きフルーツガーリックは魅了の女神が離れやすくするためだけど、いま私が作ってる料理は魅了の女神と赤ちゃんのためなのかも」
それだと、異常な食欲も納得いくよね?
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