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第九章
第435話
しおりを挟むソマリアやソアラたち少女冒険者たちでパーティを組んでダンジョンに入っていたアウミ。彼女は農園にセウルたちがやってきてから、一度もバラクルにきていない。少女たちで共同生活を送っているのも理由だ。
「私たちが国境へいく前後にいなくなったんだよ。ソマリアたちやバラクルのみんなの記憶を消して」
「ちょうどあちこちの魔導具を強化し始めた頃だ」
「ダンジョンに入る関所を強化させた直後から、なぜかダンジョンに入っていないのは確認できてる」
そう、まるで『閉じ込められるのを嫌う』ように。フィムがアゴールを怯えるようになったのも国境から帰って来たときから。記憶を消すアウミの様子を見て怯えたのだとしたら、『アゴールの中にはいった女神に怯えた』ことにも納得できる。
「幼な子はそういう気配に鋭い。だったら、アウミの中に潜んだ気配がアゴールの中にある存在に似ていることに気付いて怯えていたということだ」
「でも、なぜだ? アウミの存在は『犯罪ギルドの崩壊』のキッカケになったではないか」
「目的が『魅了の女神探し』だからでしょ」
私がそういうとダイバ以外の表情が固まる。
「女神と崩壊し始めた犯罪ギルドとを天秤にかけたら、重きを置くのは女神の方。それで信頼が得られるならやすいもんだよ」
「しかし、両親と弟が死んだと。それは本当のことでしょう?」
「……アウミは冒険者の孤児。それは本当。でもその前は?」
「え? どういうこと?」
ミリィさんが不思議そうに私とダイバの顔を交互に見る。
「親はいつから冒険者か、アウミたちの親はなぜ死んだのか」
「え? 冒険者なら……」
「アウミと弟も連れて?」
そう聞いてミリィさんたちが固まる。子供を連れてダンジョンを攻略などしない。近くの町や村の宿に置いていく。それができないのは身分証を持たない子供だから。しかし、冒険者なら子供にも身分証は作られる。条件は『冒険者ギルドに入っていれば』。
入れない冒険者、それはどの国にも所属していない……犯罪者。先祖が罪を犯して追放処分となった一族。
「ムルコルスタ大陸旧シメオン国。それがアウミの出身国」
「旧シメオン国? シメオン国なら私やエリーの出身国よ。でもそれがどうしたの?」
驚いたことに遠くの国の話が身近で繋がった。そのことにダイバも目を丸くしてミリィさんをみる。
「ミリィ、『旧シメオン国』のこと、何か知ってるか?」
「旧国? たしか『失われた女神信仰』の国で神の怒りを買って完全に滅んだそうよ。すでに伝説になってるけど……旧国の国民は国を追われて流民になったから今の国民は当時とは違うわ」
「ああ、神の怒りに触れた旧国の連中は、『新シメオン国』には入れなくなっている」
「アウミはその流民の一族の一人だよ。冒険者となることで各国を渡り歩く理由にしてきた。でも流民だからどこの国にも属せず。だから『旧シメオン国』と表示されているみたいなんだ」
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