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第九章

第425話

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壊滅した港が簡易且つ火急的な事情により修復され、なんとか船が着岸できるようになるまで二年。港の修復に時間がかかったのが原因だ。

「魔法でちゃちゃーっと回復……?」
「エミリアちゃん、それができなかったんだよ」
「どうして?」

コルデさんとアルマンさんが顔を見合わせる。言葉を選んでいるようだ。

「瘴気……『毒素を含んだ空間』になっていたんだよ」

毒素……。その言いまわしを私は知っている。

「ムルコルスタ大陸の北部、『失われし王国』があった場所」

私の言葉にハッと気付いたのはダイバだけだ。

「この大陸ではコルスターナ国の湿地帯。……どこかで聞いた言い回しだと思ったら」
「うん、全集の説明にあった」
「じゃあ、オヤジ。『エルスカントの尾根』って知ってるか?」

ダイバの言葉に、コルデさんが目を大きく見開いて言葉を失う。それにエリーさんが反応した。

「コルデ? 何か知ってるの?」
「コルデたちの出身はペリジアーノ大陸、だったわよね」

ミリィさんの言葉にダイバが「ああ」と頷く。

「たしかペリジアーノにあるウランベシカ立国りっこく、当時ね。今はウランベシカは大国を名乗ってるはずよ。その立国だった頃の都が、岩盤でできた巨大な山のふもとだったわ」
「ウランベシカ大国なら、セウルたち兄妹の出身地だよ」
「…………繋がった、な」
「火龍が教えてくれた裏付けが取れたね」
「ああ、嫌な形でな」

ダイバは心底嫌そうに顔をゆがめる。信じたくなかったし、違っていてほしかったのだろう。

「エミリアちゃん? ダイバも、どういうことか説明してもらってもいいかしら?」

ダイバの表情を確認して、私から説明することにした。


「それは一体どういう意味なの?」

エリーさんは戸惑うように言葉を吐き出す。私に対しての問いではなく自分の中で聞いたことを整理しているようだ。

「火龍がいうには、コルデたちと生き別れた仲間たちが『エルスカントの尾根』にいるということよね? でも、ミリィがいうには『ふもとに都がある』だけ。そこには鉱山があるためドワーフ族は見かけたが竜人らしき種族はいなかった。可能性があるとしたら尾根だが、登っていくには過酷すぎる山のためみたことはない」
「そこには、俺たちと違う過程で生きてきた竜人の一族が住み着いている、って……どんな一族だ? どういうことだ?」
「あ、そこから説明が必要な人がいた」
「オボロ、その説明はあとだ」

オボロさんは『劣化版竜人一族』を知らないようだ。しかし、コルデさんは知っているようで、話を先に進めることになった。オボロさんも『自分たちとは違う竜人族がいる』という形で納得した。ただし、あとで説明が必要だ。

「説明は俺とオヤジがする」

ダイバがそういうのは私が『劣化版』と言わないように牽制しているようだ。
……言わないと思うけどなあ、
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