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第九章

第380話

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「重ねがけじゃなかったの?」
《 その予定だったんだ 》
「一段目が店を覆う箱を作って、次の段の子たちがその結界を重ねて強化する、んだったよね」
《 ……ごめんなさい 》

地の妖精は責任を感じているのか、必死に泣くのを我慢している。そんなちぃちゃんをみんなが慰めるが、それに甘える子ではない。

「失敗の理由、わかる?」
《 ボクが悪いの。ちゃんと導いてあげられなかったから 》
「練習では出来ていたんだよね。だから、メッシュがくるからお披露目しようと思ったんだよね。『自分たちがみんなを守るよ』って。安心してほしくて。ここで住まわせてもらえることに感謝して」

私の言葉に地の妖精は頷く。ほかの地の妖精たちは妖力チカラの使いすぎで目を回していた。

《 ごめんなさい。ごめんなさい。失敗してごめんなさい。みんなを導いてあげられなくてごめんなさい。ボクが悪いの。だから、みんなを怒らないで 》
「なんだ? この程度のことが失敗なのか? ダンジョンを崩壊させる冒険者たちの方が大問題だろ?」
「上手に結界が張られたと思いますよ」
《 でも……失敗したらダメなの 》

ダイバとメッシュは結界の出来を誉めるものの、地の妖精は『店を覆う結界を失敗した』と後悔している。

「ちぃちゃん。失敗した理由は簡単だよ」

私の言葉に、俯いていた顔を上げた。その目は縋るように答えを求めている。

「ちぃちゃん、いつもはこの店で練習を繰り返していたよね?」

私の言葉にコクンと頷く。それにダイバが気付いた。

「そのとき、結界はどうしてるんだ?」
《 ちゃんと張ってるよ。魔導具も効いてるし 》
「だったらさっきはどうだ?」
《 カギ、かけた 》
《 あー! 壊れてるよ! 》
《 え……? 》
「練習の負荷で壊れたんだね」
《 エミリア、直して! 直して! 》
《 早く直さないとが入ってきちゃう! 》
「ああ、俺が直してやるよ」

妖精たちが慌てて私を引っ張ると、ダイバが『状態回復』をかけに席を立つ。

「ちぃちゃん。失敗した原因はわかった?」

私の質問に、袖で顔をグイッと拭いて真っ直ぐ私を見た。

《 魔導具が壊れていて結界が張られていなかった 》
「そうだね。それで失敗した理由は?」
《 結界が張られていなかった。みんな、結界を感じたらその結界を強化していた。だから結界が見つからなくて無限に解放した 》
「そうだね。それでちぃちゃんの失敗は、一段目の子たちに基本の箱型結界を張るんだって念を押さなかったこと。きっと結界が張ってあるから大丈夫だって思っていたんだよ」
《 ボクもそう思ってた 》
「そうだね。ここは室内だから気にしないけど、外で練習していたときはちゃんと一段目になる子たちは『箱型結界を張る』って基本をしていたよ」
《 ボクが悪いんだ。全部ボクが…… 》

地の妖精がふたたび責任を感じて自分を責めだす。すると《 違うよー! 》と言いながら、二階でピピンとリリンに回復してもらったらしい地の妖精たちが降りてきた。

《 エミリア! 僕たちが悪いんだ! 》
《 私たちがはしゃいでいたから! 》
《 私が一段目だったの! だから、ちぃちゃんじゃなくて私が叱られなきゃダメなのー 》

妖精たちは口々に地の妖精ちぃちゃんをかばう。私にしがみついて謝罪する子たちは、一段目にいた子たちだろう。手を大きく開いて、私だけでなくダイバやメッシュの間に浮かんで地の妖精ちぃちゃんを守ろうとする子。そして、地の妖精ちぃちゃんを抱きしめて慰めている子たちとわかれている。

《 みんな…… 》

地の妖精ちぃちゃんは自分を守ろうとする仲間たちに驚き、涙が引っ込んだようだ。そんな地の妖精たちの様子にダイバは苦笑する。そしてメッシュは……

「取材させてもらってもいいですか?」

記者魂を発揮していた。

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